倉敷のおもな観察適地

倉敷のおもな観察適地地図

@弥高山
A酒津八幡山と川原
B福山南麓・浅原地域
C鶴形山
D玉島勇崎 新池
E円通寺のある山
F溜川
G玉島乙島E地区
H種松山
I藤戸寺周辺
J大室海岸
K由加山

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@弥高山

 海抜307.6mの三角点をもつ丘陵地。四方に谷筋,尾根筋が発達し,南東の尾根筋を歩いてたどれば視界が開 け,高梁川河口と瀬戸内海を眼下に見渡すことができます。
 谷筋には樹木も多く,年平均気温13℃以上14℃未満という市内最低気温の地がここにあり,植物ではチトセカズラ・タ カノツメ・アカシデなど,昆虫ではムカシヤンマ・ミヤマチャバネセセリといった,ふつうでは吉備高原以北に出現する動植物が混生しています。
 丘陵上には養鶏場や牧場が営まれているため,アレチウリ・アメリカキンゴジカ・ムラサキウマゴヤシなどの帰化植物が生 え,1989年10月にはここから本邦初のアメリカスズメウリも見つかっています。
 昭和57年倉敷市発行の「倉敷の自然−弥高山山系−」には約700種の植物,約800種の昆虫,26種の野鳥が記録さ れ,この丘陵地に豊かな動植物が見られることが紹介されています。

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A酒津八幡山と川原

 高梁川河川敷内に取り込まれた中島状の地域。八幡山(海抜 138.6m)を頂点とする起伏に富んだ丘陵と高梁川河川敷からなり,市内唯一の山と川が一体となった雄大な景観と豊かな生態系が保たれた地域です。
 八幡山にはカコウ岩地域のアカマツ林と古生層地域の夏緑広葉樹林とい う2つの異なる地質に立地した森林が見られ,そこにすむ昆虫の種類にも微妙な違いが見られます。
 しかし,この地域の一番の特徴は何といっても広い河川敷内に砂地,れ き地,草地,水たまりなどの変化に富んだ原野的自然が残されていることです。川原ならではの植物としてはオギ・ヨシ・ウシノシッペイ・ネコヤナギ・カワラ ハンノキ・ヤナギタデ・ミゾソバ・タコノアシ・ミゾコウジュなどが見られ,さらに高梁川の川原から八幡山の山頂にかけての連続した植生の移り変わりが観察 できます。昆虫では清流にすむキベリマメゲンゴロウなどの水生昆虫をはじめ,水辺にはウスモンミズギワゴミムシやキアシヌレチゴミムシなどが,砂地やれき 地にはコニワハンミョウやキアシハナダカバチモドキなどが,そして草地,川岸林から丘陵地に樹林にかけて川原特有種はいうにおよばず,高梁川の流水の運搬 作用でたどりついたと考えられる種を含め,多様な種類の生息が見られます。
 鳥類では水辺と山野の鳥を一度に見ることができます。アオサギ・カワ セミ・セグロセキレイ・カケス・アオゲラなどが通年見られ,夏にはオオヨシキリ・ホトトギスなどが加わり,春の渡りのころにはカッコウも見られます。
 平成2年倉敷市発行の「倉敷の自然−酒津八幡山周辺地域−」には 834種の植物と,哺乳類13種,鳥類39種,爬虫類11種,両生類11種,魚類44種合計118種の脊椎動物,そして昆虫を主とした930余種の無脊椎 動物が記録,紹介されています。 

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B福山南麓・浅原地域

 浅原は,倉敷市街地北郊に雄姿をきわだたせている福山(海抜 302m)の南麓丘陵地の一角を占めています。ここの集落を北につめると木造毘沙門天群などの重要文化財所蔵の安養寺が現れます。
 この安養寺西の谷を境に東はアカマツ林,西はアベマキ・コナラの夏緑 広葉樹林が見られます。アカマツ林はカコウ岩地帯,夏緑広葉樹林は古生層に成立していて,地質と植生の対応を観察するのに最適の地域です。古生層には多く の貴重植物が生育しており,ウバユリ・ヤマホトトギス・ナルコユリ・ヒメタチクラマゴケ・ウチワゴケ・イワガネソウ・マメヅタ・ナラガシワ・ツブラジイな どの倉敷ではまれな植物のほか,県下でもまれなナツアサドリ・ホソバイヌビワ・コクランなどを見ることができます。
 昆虫類ではアカマツ林,夏緑広葉樹林,農耕地周辺などがそれぞれの環 境に一般的な種類が一通り見られます。珍しいものでは南方系のチョウ,ムラサキツバメの発見例があり,福山登山道周辺では“満鮮要素”の草原性昆虫である ホソハンミョウの生息が確認されており,アジア大陸と本州が陸続きとなっていた時代の生き証人をここに見いだすことができます。
 安養寺前の天王池には淡水海綿が生息し,この池を中心とした水系では 水生昆虫を含むいろいろの淡水生物を見ることができます。
 ここには野鳥観察用の探鳥コースが設けられています。 

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C鶴形山

 倉敷市街地の中に陸の孤島ともいえる形で残された緑地。海抜 40mほどの小山は阿智神社や観龍寺等の社寺林を主とした森林に覆われ,一角には岡山県指定天然記念物の「阿知の藤」が生え,常緑高木ではアラカシ・ウバ メガシ・ナナミノキ・クスノキなど,夏緑高木ではムクノキ・エノキ・アキニレ・アベマキなどが見られます。かつては瀬戸内海に浮かぶ小島であっただけに当 時からの生き残りと考えられるクスドイゲ・ツワブキ・マサキ・オニヤブソテツなどの海岸植物も生えています。
 野鳥では,これまでに約30種が記録されています。冬がもっともにぎ わいを見せ,ジョウビタキ・シロハラ・イカル・シジュウカラ・コゲラなど多くの野鳥が観察できます。また春と秋の渡りのころはメボソムシクイ・センダイム シクイ・コサメビタキなどが訪れ,ムギマキが観察されたこともあります。
 昆虫類ではクマゼミ・アブラゼミなどのセミ類の多さが目立ち,チョウ 類はこの山だけで50余種が観察されています。珍しいものではクロツバメシジミの生息が知られ,よく見られるのはアオスジアゲハやナミアゲハなどのアゲハ チョウ類です。甲虫類やハチ類も多く,マイマイカブリ・コクワガタ・ヤマトタマムシ・ヒラアシキバチなど多くの種が見られます。島しょ時代の名残りをとど めるものではヨツスジトラカミキリやオオツヤホソゴミムシダマシの姿も見られます。 

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D玉島勇崎 新池

 平野部に造られたため池で,オニバスをはじめアサザ・ヒシ・マ ツモ・ウキシバなどの水生植物が豊富です。ため池の水深と生育する水草の種類の関係が学べるかっこうの場所で,カワセミやヌートリアなども生息していま す。
 ここではまた,南方系のタイワンウチワヤンマの生息も知られ,水生昆 虫類も豊かであることをうかがわせています。

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E円通寺のある山(白華山)

 玉島市街地に接する丘陵地。良寛和尚ゆかりの円通寺があり,円 通寺公園の南面に立つと展望のきく日には瀬戸大橋が見えます。円通寺の背後の樹林の中には海岸付近に多いウバメガシの林を見ることができます。
 夏になるとアキニレの樹液にはカブトムシやコクワガタが見られます。 セミも多く,アカマツでは8月下旬から10月上旬にかけてチッチゼミが鳴いています。トンボでは止水性の種が多く,クロスジギンヤンマ・マルタンヤンマ・ ヤブヤンマなどヤンマのなかまが豊富です。また,Eriotremex yamasakiiというキバチの一種やオキナワシリアゲコバチ・クロハナムグリなど記録の少ない種が見つかっており,なお未知の発見が期待される興味深 い地域でもあります。
 野鳥観察用の探鳥コースが設けられています。 

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F溜川

 玉島地区の溜川は,かつての高梁川の河道の一部と思われ,その 遊水地は江戸時代の玉島新田開発の際に造成されたものです。周辺には開発が進みつつあるものの,杭打ち護岸や野面積みの石組護岸が残っているところも多 く,東岸から北岸にかけてはヨシ原が広がり,昔ながらの景観をとどめています。
 ここには多くの野鳥が生息し,特に10種を超すカモが渡来する秋冬季 はにぎわいを見せます。ヒドリガモがもっとも多く,ヨシの根元近くにはコガモが群れています。このほかカルガモ・オカヨシガモ,やや少ないもののマガモ・ オナガガモ,まれにホシハジロ・ヨシガモ・ハシビロガモなどが見られます。トモエガモ・アメリカヒドリ・ヒドリガモとアメリカヒドリの雑種と思われる個体 も観察されています。カモ以外ではユリカモメが多く,アオサギ・コサギ・ゴイサギ・カイツブリ・ハクセキレイ・セグロセキレイなど,時々カワセミも見られ ます。ヨシの根元にはバンも姿を現わします。まれにセグロカモメ・ウミネコもやってきます。上空には猛きんのミサゴが舞うこともあり,水面近くの魚をね らっています。
 ヨシ原ではスズメの群れが見られ,オオジュリン・シベリアジュリンな ども冬を過ごしています。時にはニュウナイスズメが群れで訪れます。ツリスガラも記録されています。近くのたんぼでは周年ケリが見られ,繁殖もしていま す。
 ここ溜川は玉島の街なかにありながら,多くの野鳥が生息し,間近に観察できる貴重な場所といえるでしょう。
 

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G玉島乙島E地区

 玉島乙島の戸島神社から南に広がる広大な埋め立て地です。水島 臨海工業地帯の一角を占め,戦後開発が進められました。現在でも沖合いでは埋め立てが進行中で,倉敷でもっとも新しい陸地が造られつつあります。戦後まも なく陸化された場所は,すでに工場や倉庫群が立ち並んでいますが,新しく造成された場所はまだ広々とした空き地のままのところが少なくありません。
 この地区の見どころのひとつは帰化植物です。穀類や飼料が陸揚げされ る地点付近には,ウラジロアカザ・クジラグサ・イヌカミツレ・ノボロギクなどが生え,岸壁近くではセイヨウアブラナ・セイヨウノダイコン・オキジムシロ・ ベニバナセンブリ・ボウムギなどが見られます。道路沿いの緑地帯には倉敷ではまだ珍しいハルジオン・ヘラバヒメジョオンのほか,マンテマ・カラクサナズ ナ・ツボミオオバコ・ヒゲナガスズメノチャヒキがたくさん生えています。ウシオハナツメクサ・アレチノギク・オヒゲシバ・ヒメコバンソウなども,この地区 では大きな群落を見ることができます。
 玉島の森近くの湿地には汽水に生育するイトクズモという水草が見られます。昆虫でも汽水に生息するチャイロチビゲンゴロウが生息しており,この湿地が多 少とも潮の影響を受けていることをうかがわせます。

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H種松山

 倉敷市街地南部にある丘陵地。海抜258.4mの頂上からの眺 望はすばらしく,付近はハイキングコースの憩いの場ともなっています。この地域に分布する地質は北西部の浦田付近と南西部の中腹に見られるリュウモン岩を 除けば大部分がカコウ岩で,植生面ではアカマツ主体の林が見られ,部分的に常緑,夏緑の広葉樹林も見られます。
 四方に流れだす河流の水量は貧弱ですが,谷筋には多くのため池が造ら れており,これらの池や細流,湿地にはさまざまな水生植物や湿生植物が生育し,トンボ類をはじめとする水生昆虫,淡水動物の生息が見られます。
 注目すべきトンボ類では,トンボでは日本一小さいハッチョウトンボ, 北方系のヨツボシトンボ,ヤンマでは原始的なアオヤンマ,県南では少ないミヤマアカネ,日本特産のキイロサナエ・ネキトンボなどが見られ,そのほかにも珍 しい種の生息が知られています。
 渓畔に自生するハンノキには緑色のはねを輝かせて舞うミドリシジミの 姿も見られます。
 ここに設けられた湿生植物園にはサギソウをはじめとした山野草が植え られていて,これも注目点の一つです。
 アカマツ林帯には,カミキリムシでは岡山県南で初めて発見されたケブ カマルクビカミキリが見られ,夏緑広葉樹林帯では“満鮮要素”のモンクロベニカミキリが発見されているほか,数多くの昆虫類の生息が知られています。
 昭和56年倉敷市発行の「倉敷の自然−種松山山系−」には植物717 種,昆虫627種,鳥類27種が記録され,紹介されています。 野鳥観察用の探鳥コースが設けられています。

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I藤戸寺周辺

 源平合戦ゆかりの地,藤戸町藤戸寺を起点として南に広がる丘陵 地を一周する周遊コース。
 谷筋には大小のため池が造られ,大きなため池の周辺では広くゆったりとした里山の景観が楽しめます。な だらかな丘陵にはアベマキ・コナラを主とした夏緑広葉樹林が見られ,オサムシ・タマムシ・コメツキ・ハムシ・オトシブミなどの甲虫類やカメムシ類,ハチ 類,あるいは路傍に舞うチョウ類等多種多様な昆虫類が観察できます。
 ため池にはガガブタ・サンショウモ・ヒシなどの水生植物が見られ,トンボ類をはじめとする水生昆虫も豊かです。

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J大室海岸

 本土側に残された数少ない自然海岸の一つ。下津井西の三百山山 麓に位置し,小規模ながら砂浜と磯で成り立っています。
 ここにハマヒルガオ・ハマエンドウ・ハマナデシコ・ハマゴウなどの海 岸植物が生育しています。
 また,ここの小規模な砂浜にも10種を超える海浜性甲虫類が見いださ れており,波打際に打ち上げられた海ソウや魚介類にはヒョウタンゴミムシ・コケシガムシ・ハマベエンマムシ・ウミベアカバハネカクシなどが,やや内陸寄り の海岸植物が生育しているあたりにはハマベオオヒメサビキコリ・ハマヒョウタンゴミムシダマシ・オオスナゴミムシダマシ・ヒメホソハマベゴミムシダマシな どが活動しています。そして,打ち上げられた流木からはハマベキクイサビゾウムシも見いだされています。
 砂の中にはハマダンゴムシが,打ち上げられた海ソウの下などにはヒメ ハマトビムシが見られます。

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K由加山

 児島由加にある台地状の丘陵性山地で,四季の風物に富む史跡の 地。中央部には国立公園の指定区域があり,由加権現と蓮台寺を囲む一帯には県下で珍しいツブラジイを主とした常緑広葉樹林が見られます。10月から11月 にかけて,ここでシイの実を拾うことも可能です。
 台地上には大小さまざまな池や湿地,小水流が山間に散在し,水生植物 や水生昆虫などが豊富です。水生植物ではヒシ・ジュンサイ・フトヒルムシロ・イヌタヌキモ・スブタなどが見られ,山間の水田雑草には平野部では姿を消して しまったような昔ながらのものが生き残っています。
 水生昆虫ではトンボ類が多く,日本一小さいトンボとして知られるハッ チョウトンボ,倉敷地方では特に少ないキイロサナエ・ハネビロエゾトンボ,南方系で北限的分布のハネビロトンボなど約40種のトンボが知られています。
 由加山を含む児島半島の山塊は小豆島をしのぐ面積をもつだけに島しょ 時代があったとはいえ,森林性昆虫の保存性がよく,陸生昆虫の中には吉備高原以北の良好な森林をほうふつとさせる種類がかなり見られます。例えば,ここの 森には県南では珍しいヒグラシが群生し,後ばねが退化して最近に移動してきたとはとても思えないヒメボタルやホソクビキマワリモドキなどが見られます。
 一方ではヒメウスバカゲロウ・ナガフトヒゲナガゾウムシ・クロシオキ シタバ・ムラサキツバメといった南方系の珍しい種類が見られるのも由加山ならではの特徴の一つです。
 野鳥観察用の探鳥コースが設けられています。山野の鳥を中心に,倉敷 市内でもっとも鳥類相の豊かな地域です。特に猛きんのノスリの生息は,この地に広がりのある山野があることを物語っています。

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