倉敷市立自然史博物館友の会の行事

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第274回自然観察会「夏の夜のアカテガニ観察会」
 2007年7月28日報告

◆日 時:2007年7月28日
◆場 所:笠岡市西大島


今回は夜の観察会です。
アカテガニは,ふだんは海沿いの丘陵地で暮らしていますが,この時期丘陵地を降り,メスはおなかに抱えた幼生を海に放ちます。
この夜,笠岡市西大島にて開かれた神秘的な世界へのいざないに多くの方々が参加されました。


夜の集合,う〜ん?花火見物? 
いえいえ,ちょっと出で立ちが違いますね。そうそう,今夜はアカテガニの観察会です。
まずは講師の三枝誠行先生(岡山大学大学院)からアカテガニの話を聞きました。

観察場所の大島川の河口にはすでにたくさんのアカテガニが水辺めざし てゾロゾロと。
さあ,教えていただいたサインは見えるかな?


「サイン」?
ほらほらよく見て! 
アカテガニがブクブクブクと泡を吹き始めましたよ。


間もなく水中に入りおなかのふたをぱたぱたぱた!と開いたり閉じた り。幼生放出の瞬間です! その時間,約4〜5秒です。
「やってるやってる!」「こっちも!」「見えた!見えた!」弾んだ声が飛び交います。
ブクブクの泡吹きは幼生放出開始のサインだったのですね。
三枝先生からまとめのお話を聞くころにはもうすっかり夜もふけていま したが,それでも先ほどの感動が覚めやらぬようす。子どもたちの目も輝いていました。


真っ暗な海へと旅立った幼生たち。
この先には多くの苦難が待ち受けていることでしょう。
ゾエアからメガロパ,そして大人のカニにまで育っていけるのはこの内どれだけの数でしょうか。
成長し海から山へ,そしてまた幼生放出のために山から海辺へと向かうカニたちにはまたひとつ難所が待ち受けています。
山と海とを分断する道路上には車にひかれてしまったいくつものアカテガニが無残な姿をさらしていました。
 夏の夜のひととき,感動に満ちた幼生放出の瞬間を見るだけでなく,動物たちと人間との関わり合いについても学ぶ有意義な観察会となりました。


(写真:坂本明弘・山ア法子/コメント:山ア法子)




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