萬葉集の植物
 
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出展箇所(例歌・例文・例巻など) 植物名 標準和名 科名 備考
6-916 あかねさす日並べなくにわが戀は吉野の川の霧に立ちつつ  アカネ(茜・茜草・安可禰) アカネ アカネ科
10-2213 このころの暁(あかとき)露にわが屋戸の秋の萩原色づきにけり  アキノカ(秋香) マツタケ 担子菌類のきのこ.
10-2104 朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲きまさりけれ アサガホ(朝貌・朝杲・安佐我保) キキョウ キキョウ科
1-64 葦邊行く鴨の羽がひに霜降りて寒き夕べは大和し思ほゆ 志貴皇子 6-919 アシ(葭・葦・安之・安志) ヨシ イネ科
17-4021 雄神川紅にほふ少女(おとめ)らし葦附採ると瀬に立たすらし アシツキ(葦附) アシツキノリ
3-405 春日野に粟蒔けりせば鹿(しし)待ちに継ぎて行かましを社し留むる 佐伯宿禰赤麿 アハ(粟・安波) アワ イネ科
8-1490 霍公鳥待てど來鳴かず菖蒲草玉に貫く日をいまだ遠みか 大伴家持 アヤメグサ(菖蒲・菖蒲草・安夜女具佐・安夜売具佐) ショウブ サトイモ科
11-2480 路の邊の壹師の花のいちしろく人皆知りぬわが戀妻を イチシ(壹師) ヒガンバナ ヒガンバナ科
10-2230 戀ひつつも稲葉かき分け家居れば乏しくもあらず秋の夕風 イネ(稲・伊禰) イネ イネ科
14-3378 入間道(いりまぢ)の大家が原のいはる蔓引かばぬるぬる吾(わ)にな絶えそね イハヰヅラ(伊波為都良・伊波為蔓) スベリヒユ スベリヒユ科
14-3379 わが背子を何(あ)どかも言はむ武蔵野のうけらが花の時無きものを ウケラ(宇家良) オケラ キク科
2-221 妻もあらば採みてたげまし佐美の山野の上のうはぎ過ぎにけらずや 柿本朝臣人麿 ウハギ(宇波疑・菟芽子) ヨメナ キク科
5-802 瓜食めば 子ども 思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ 何處より 來りしものそ 眼交に もとな懸りて 安眠し寢さぬ 山上憶良 ウリ(宇利) マクワウリ ウリ科 渡来植物・アジア南部及熱帯アフリカ産,万葉以前既出
14-3417 上毛野の伊奈良の沼の大藺草よそに見しよは今こそ勝れ 柿本朝臣人麿の歌集に出づ オホヰグサ(於保為具佐) フトイ カヤツリグサ科
10-2270 道の邊の尾花がしたの思ひ草今さらになど物か思はむ オモヒグサ(思草) ナンバンギセル ハマウツボ科
10-1986 われのみや斯く戀すらむ杜若丹(に)つらふ妹は如何にかあるらむ カキツバタ(垣津幡・垣津旗・垣幡・加吉都幡多) カキツバタ アヤメ科
19-4143 物部(もののふ)の八十少女(やそをとめ)らが汲みまがふ寺井の上の堅香子の花 カタカゴ(堅香子) カタクリ ユリ科
8-1630 高圓の野邊の容花面影に見えつつ妹は忘れかねつも 大伴宿禰家持 カホバナ(容花・貌花・可保波奈) ヒルガオ ヒルガオ科
16-3834 梨棗黍に粟嗣ぎ延ふ田葛(くず)の後も逢はむと葵花咲く キミ(寸三・黍) キビ イネ科
10-2096 眞葛原なびく秋風吹くごとに阿太の大野の萩の花散る クズ(田葛・久受・葛) クズ マメ科
16-3855 かはら莢(ふじ)に延ふおぼとれる尿葛絶ゆることなく宮任せむ クソカヅラ(尿葛) ヘクソカズラ アカネ科
7-1120 み吉野の青根が峯の蘿蓆誰か織りけむ経緯無しに コケ(蘿・薜・苔) 蘚苔類の総称
14-3576 苗代の子水葱が花を衣に摺り馴るるまにまに何(あぜ)か愛(かな)しけ 譬喩歌 コナギ(子水葱・子奈宜・子奈伎) コナギ ミズアオイ科
3-256 飼飯(けひ)の海の庭好くあらし刈薦の乱れ出づ見ゆ海人の釣船 柿本朝臣人麿 コモ(薦・許毛・許母) マコモ イネ科
19-4268の歌の題詞 天皇と太后と共に大納言藤原の家に幸(いでま)す日に、黄葉せる澤蘭一株(ひともと)を抜き取りて、・・・ サハアララギ(沢蘭) サワヒヨドリ キク科
11-2475 わが屋戸の軒のしだ草生ひたれど戀忘草見れど生ひなく シダクサ(子太草) ノキシノブ ウラボシ科
6-1048 立ちかはり古き都となりぬれば道の芝草長く生ひにけり シバ(志婆・之婆・柴) シバ類の総称 イネ科 山野に生える小さい雑木.
11-2468 湖(みなと)葦に交れる草の知草の人みな知りぬわが下思 シリクサ(知草) サンカクイ カヤツリグサ科
3-299 奥山の菅の葉しのぎ降る雪の消(け)なば惜しけむ雨な降りそね 大伴安麿 スゲ(菅・須毛・須加・須我) スゲ類の総称 カヤツリグサ科
10-2110 人皆は萩を秋と云ふ縦(よ)しわれは尾花が末(うれ)を秋とは言はむ ススキ(須々伎・須々吉・為酢寸) ススキ イネ科
8-1424 春の野にすみれ採みにと來しわれそ野をなつかしみ一夜寝にける 山部宿禰赤人 スミレ(須美礼) スミレ スミレ科
20-4455 あかねさす晝は田賜(た)びてぬばたまの夜の暇に摘める芹子これ 葛城王 セリ(芹子・世理) セリ セリ科
11-2759 わが屋戸の穂蓼古幹(から)採み生(おほ)し實になるまでに君をし待たむ タデ(蓼) ヤナギタデ タデ科
14-3501 安波峯(あはを)ろの峯る田に生はる多波美蔓引かなばぬるぬる吾(あ)を言な絶え 相聞 タハミヅラ(多波美豆良) ヒルムシロ ヒルムシロ科
3-333 浅茅原つばらつばらにもの思へば故(ふ)りにし郷(さと)し思ほゆるかも 大伴旅人 チガヤ・チ・チバナ・ツバナ(茅) チガヤ イネ科
7-1255 月草に衣そ染むる君がため綵色の衣を摺らむと思ひて ツキクサ(月草・鴨頭草) ツユクサ ツユクサ科
7-1338 わが屋前に生ふる土針心ゆも想はぬ人の衣に摺らゆな ツチハリ(土針) メハジキ シソ科
14-3434 上毛野(かみつけの)阿蘇山葛野を廣み延ひにしものを何(あぜ)か絶えせむ 譬喩歌 ツヅラ(都豆良・黒蔦) ツヅラフジ(アオツヅラフジ) ツヅラフジ科
7-1133 皇祖神の神の宮人冬薯蕷葛いや常しくにわれかへり見む トコロヅラ(冬薯蕷葛・冬菽蕷都良) トコロ(オニドコロ?) ヤマノイモ科
16-3829 醤酢(ひしほす)に蒜搗(つ)き合(か)てて鯛願ふわれにな見せそ水葱の羮 ナギ(水葱・奈宜・奈伎) ミズアオイ ミズアオイ科
10-1972 野邊見れば撫子の花咲きにけりわが待つ秋は近づくらしも ナデシコ(瞿麦・牛麦・石竹・奈泥之故・奈弖之故・那泥之古) カワラナデシコ ナデシコ科
3-362 みさごゐる磯廻(み)に生ふる名乗藻のよし名は告らせ親は知るとも 山辺宿禰赤人 ナノリソ(名乗藻・莫告藻・名告藻・勿謂藻・名乗曽) ホンダワラ
11-2779 海原の沖つ繩苔うち靡き心もしのに思ほゆるかも ナハノリ(縄乗・縄法・奈波能里) 未詳
11-2762 葦垣の中の似兒草にこよかにわれと笑(ゑ)まして人に知らゆな ニコグサ(似兒草・爾古具佐・和草・爾故具佐) アマドコロ説・ハコネシダ説 両説あるが、荒草に対する言葉で、葉や茎の柔らかい草のことらしい.
7-1352 わが情ゆたにたゆたに浮蓴邊にも奥にも寄りかつましじ ヌナハ(蓴) ジュンサイ スイレン科
4-525 佐保河の小石ふみ渡りぬばたまの黒馬(くろま)の來る夜は年にもあらぬか 大伴郎女 ヌバタマ(奴波多末・奴波多麻・奴波玉・黒玉) ヒオウギ アヤメ科
14-3508 芝付の御宇良崎(みうらさき)なる根都古草逢ひ見ずあらば吾(あれ)戀ひめやも 相聞 ネツコグサ(根都古具佐・根都古草) オキナグサ キンポウゲ科
4-675 をみなえし咲く澤に生ふる花かつみかつても知らぬ戀もするかも 中臣女郎 ハナガツミ マコモ イネ科
4-496 み熊野の浦の濱木綿百重(ももへ)なす心は思(も)へど直(ただ)に逢はぬかも 柿本朝臣人麿 ハマユフ(浜木綿) ハマユウ ヒガンバナ科
11-2476 打つ田には稗は數多(あまた)にありといへど擇(え)らえしわれそ夜をひとり寝(ぬ)る ヒエ(稗・比要) イヌビエ イネ科
14-3573 あしひきの山葛山葛蘿ましばにも蘿を置きや枯らさむ 譬喩歌 ヒカゲ(日影)・ヤマカツラカゲ(山葛蘿) ヒカゲノカズラ ヒカゲノカズラ科
7-1249 君がため浮沼の池の菱採るとわが染めし袖濡れにけるかも ヒシ(菱) ヒシ ヒシ科
8-1500 夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ戀は苦しきものそ 大伴坂上郎女 ヒメユリ(姫由理・姫百合) ヒメユリ ユリ科
16-3829 醤酢(ひしほす)に蒜搗(つ)き合(か)てて鯛願ふわれにな見せそ水葱の羮 ヒル(蒜) ノビル ユリ科
8-1538 萩の花尾花葛花瞿麥の花女郎花また藤袴朝貌の花 山上臣憶良 フヂバカマ(藤袴) フジバカマ キク科
20-4352 道の邊の荊(うまら)の末(うれ)に這ほ豆のからまる君を別(はか)れか行かむ 丈部鳥 マメ(麻米) ツルマメ マメ科
14-3444 伎波都久(きはつく)の岡の莖韮(くくみら)われ摘めど籠(こ)にも満たなふ背なと摘まさね 雜歌 ミラ(韮) ニラ ユリ科
5-892 風雜へ 雨降る夜の 雨雜へ 雪降る夜は 術もなく 寒くしあれば・・・棉も無き 布肩衣の 海松の如・・・ 山上憶良 ミル(美留・海松・見流) ミル ミル科
14-3537 柵越(くへご)しに麥食む小馬のはつはつに相見し子らしあやに愛(かな)しも 相聞 ムギ(麥・武芸・牟伎) オオムギ イネ科
4-759 いかならむ時にか妹を葎生(ふ)のきたなき屋戸に入りいませなむ 大伴宿祢家持 ムグラ(牟具良・六倉) カナムグラ クワ科

 
出展箇所(例歌・例文・例巻など) 植物名 標準和名 科名 備考
1-20 あかねさす紫野行き標野行き野守りは見ずや君が袖振る 額田王 ムラサキ(紫草・紫・牟良佐伎) ムラサキ ムラサキ科
3-278 志可の海人は藻刈り塩焼き暇(いとま)なみ髪梳(けづり)の小(を)櫛取りも見なくに 石川少郎 メ(軍布・海藻) 食用海藻の総称
6-936 玉藻刈る海少女ども見に行かむ船楫もがも波高くとも 笠朝臣金村 モ(藻・母・毛) 藻類の総称
20-4326 父母が殿の後方(しりへ)の百代草百代いでませわが來るまで 生玉部足國 モモヨグサ(母々余具佐) 未詳
9-1742 級照る 片足羽川の さ丹塗の 大橋の上ゆ 紅の 赤裳裾引き 山藍もち 摺れる衣着て・・・ ヤマアヰ(山藍) ヤマアイ トウダイグサ科
11-2456 ぬばたまの黒髪山の山草に小雨降りしきしくしく思ほゆ ヤマスゲ(山菅・山草・夜麻須毛) 山中に生えるスゲ類の総称 カヤツリグサ科
7-1257 道の邊の草深百合の花咲に咲みしがからに妻といふべしや ユリ(由理・百合) ヤマユリ ユリ科
18-4116 大君の 任のまにまに 執り持ちて・・・霍公鳥 來鳴く五月の 菖蒲草 蓬蘰き 酒宴・・・ 大伴宿禰家持 ヨモギ(余母疑・蓬) ヨモギ キク科
14-3563 比多潟の磯の若布の立ち亂え吾(わ)をか待つなも昨夜(きそ)も今夜(こよひ)も 相聞 ワカメ(和可米・稚海藻) ワカメ
3-334 わすれ草わが紐に付く香具山の故(ふ)りにし里を忘れむがため 大伴旅人 ワスレグサ(萱草) ヤブカンゾウ ユリ科
8-1418 石ばしる垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になりにけるかも 志貴皇子 ワラビ(和良比・蕨) ワラビ コバノイシカグマ科
10-1839 君がため山田の澤に惠具採むと雪消の水に裳の裾濡れぬ エグ(惠具・徊具) クログワイ カヤツリグサ科
10-2134 葦邊なる荻の葉さやぎ秋風の咲き來るなへに雁鳴き渡る ヲギ(荻・乎疑) オギ イネ科
10-2115 手に取れば袖さへにほふ女郎花この白露に散らまく惜しも ヲミナヘシ(女郎花・娘子部四・娘部思・姫部思・姫押・佳人部為・乎美奈敞之) オミナエシ オミナエシ科
10-1903 わが背子にわが戀ふらくは奥山の馬酔木の花の今盛りなり アシビ(馬酔木・馬酔・安之碑・安志妣) アセビ ツツジ科
20-4448 紫陽花の八重咲く如く彌つ代にをいませわが背子見つつ偲はむ 橘諸兄 アヂサヰ(紫陽花・味狭藍・安治佐為) アジサイ ユキノシタ科
2-98 梓弓引かばまにまに依らめども後の心を知りかてぬかも 石川郎女 アヅサ(梓・安都佐) ミズメ カバノキ科
5-798 妹が見し棟の花は散りぬべしわが泣く涙いまだ干なくに アフチ(相市・阿布知・安布知・安不知) センダン センダン科
16-3885 愛子(いとこ) 吾背(なせ)の君・・・あしひきの この片山に 二つ立つ 櫟が本に 梓弓・・・ イチヒ(伊智比) イチイガシ ブナ科
18-4066 卯の花の咲く月立ちぬ霍公鳥來鳴き響めよ含みたりとも 山上憶良? ウノハナ(卯の花・于花・宇花・宇能花・宇能波奈) ウツギ ユキノシタ科
20-4352 道の邊の荊(うまら)の末(うれ)に這ほ豆のからまる君を別(はか)れか行かむ 丈部鳥 ウマラ(宇万良) ノイバラ バラ科
16-3872 わが門の榎の實もり喫(は)む百千鳥千鳥は来れど君そ來まさぬ エ(榎) エノキ ニレ科
3-322 皇神祖(すめろき)の 神の命(みこと)の 敷きいます・・・み湯の上(へ)の 樹群(こむら)を見れば 臣の木も 生ひ継ぎにけり・・・ 山辺宿禰赤人 オミノキ(臣木) モミ マツ科
1-9 莫囂圓隣之大相七兄爪湯氣わが背子がい立たせりけむ嚴橿が本 額田王 カシ(橿) カシ類の総称 ブナ科
11-2478 秋柏潤和(うるわ)川邊の小竹(しの)の芽の人には逢はね君にあへなく カシハ(柏・我之波) カシワ ブナ科
7-1359 向つ岡の若楓の木下枝取り花待つい間に嘆きつるかも  カツラ(楓) カツラ カツラ科
14-3432 足柄(あしがり)の吾(わ)を可鶏(かけ)山の穀(かづ)の木の吾をかづねも穀割かずとも 譬喩歌 カヅノキ(可頭乃木) ヌルデ ウルシ科
6-942 味さはふ 妹が目離れて 敷栲の 枕も纏かず 櫻皮纏き 作れる舟に・・・ 山部宿禰赤人 カニハ(桜皮) サクラ(ヤマザクラ・チョウジザクラ) バラ科
10-1848 山の際(ま)に雪は降りつつしかすがにこの河楊は萌えにけるかも カハヤナギ(川楊・河楊・川柳) ネコヤナギ ヤナギ科
16-3855 かはら莢(ふじ)に延ふおぼとれる尿葛絶ゆることなく宮任せむ カハラフヂ(?莢) ジャケツイバラ マメ科
19-4169 霍公鳥 來鳴く五月に 咲きにほふ・・・眞珠の 見が欲し御面(みおもわ) 直向ひ 見む時までは 松柏の 榮えいまさね 尊き吾が君 カヘ(柏) コノテガシワの類 ヒノキ科
8-1623 わが屋戸に黄變つ鶏冠木見るごとに妹を懸けつつ戀ひぬ日は無し 大伴田村大嬢の妹 カヘルデ(蝦手・加敞流?・鶏冠木) カエデ属の総称 カエデ科
14-3350 筑波嶺の新桑繭(にひぐはまよ)の衣はあれど君が御衣(みけし)あやに着欲しも 東歌 クハ(桑・具波) クワ クワ科
5-802 瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ 何處より 來りしものそ 眼交に もとな懸りて 安眠し寢さぬ 山上憶良 クリ(栗・久利) クリ ブナ科
14-3424 上毛野(しもつけの)美可母(みかも)の山の小楢のすま麗(ぐは)し兒ろは誰が笥(け)か持たむ 相聞 コナラ(小楢・許奈良) コナラ ブナ科
3-379 ひさかたの 天の原より 生(あ)れ來たる 神の命(みこと) 奥山の 賢木の枝に 白香つけ・・・ 大伴坂上郎女 サカキ(賢木) サカキ ツバキ科
10-1854 鶯の木傳(こつた)ふ梅のうつろへば櫻の花の時片設(かたま)けぬ サクラ(桜・佐久良・作楽) サクラ類(ヤマザクラ) バラ科
2-94 玉くしげみむろの山のさなかづらさ寝ずはつひにありかつましじ 藤原鎌足 サネカヅラ(狭名葛・佐奈葛・佐名葛・狭根葛・木妨巳・核葛) サネカズラ マツブサ科
20-4476 奥山の樒が花の名のごとやしくしく君に戀ひわたりなむ 大原眞人 シキミ(樒・之伎美) シキミ シキミ科
2-142 家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る 有馬皇子 シヒ(椎・四比・思比) シイ(スダジイ) ブナ科
10-2315 あしひきの山道(やまぢ)も知らず白橿の枝もとををに雲の降れれば シラカシ(白橿) シラカシ ブナ科
2-156 三諸の神の神杉夢にだに見むとすれども寝ねぬ夜ぞ多き 高市皇子 スギ(杉・椙・須疑) スギ スギ科
20-4493 始春(はつはる)の初子の教の玉箒手に執るからにゆらく玉の緒 大伴宿禰家持 タマバハキ(玉掃・多麻婆波伎) コウヤボウキ キク科
11-2469 山萵苣の白露しげみうらぶるる心も深くわが戀止まず チサ・ヤマチサ(知佐・萵苣・山治左・山萵苣) エゴノキ エゴノキ科
19-4164 ちちの實の 父の命(みこと) 柞葉(ははそば)の 母の命 おぼろかに 情(こころ)盡して 思ふらむ・・・ チチ(知智・知々) イヌビワ クワ科
1-29 玉襷 畝傍の山の 橿原の・・・生れましし 神のことごと 樛の木の いやつぎつぎに・・・ 柿本朝臣人麿 ツガノキ(樛木・都賀乃樹・都我能奇・栂木) ツガ マツ科
3-277 とく來ても見てましものを山城の高の槻群(むら)散りにけるかも 高市連黒人 ツキ(槻) ケヤキ ニレ科
9-1777 君なくは何そ身装餝はむ匣なる黄楊の小梳も取らむとも思はず ツゲ(黄楊) ツゲ ツゲ科
2-135 つのさそふ 石見の海の・・・さ寝し夜は いくだもあらず 這ふ蔓の・・・ ツタ(蔦・都多・津田) テイカカズラ キョウチクトウ科
7-1188 山越えて遠津の濱の石つつじわが來るまでに含みてあり待て ツツジ(茵・都追慈・菅士・菅自) ツツジ(ヤマツツジ) ツツジ科
1-54 巨瀬山のつらつら椿つらつらに見つつ思はな巨瀬の春野を 太上天皇 ツバキ(椿・海石榴・都婆伎) ヤブツバキ ツバキ科
19-4159 磯の上の都萬麻を見れば根を延へて年深からし神さびにけり ツママ(都万麻) タブノキ クスノキ科
3-387 古に梁(やな)打つ人の無かりせば此處もあらまし柘の枝はも 伝未詳 ツミ(柘) ヤマグワ クワ科
7-1311 橡の解濯衣のあやしくも殊に着欲しきこの夕かも ツルバミ(橡・都流波美) クヌギ ブナ科
12-3048 御獵(みかり)する雁羽の小野の櫟柴の馴れは益(まさ)らず戀こそ益れ ナラ(櫟) コナラ? ブナ科
16-3886 おし照るや 難波に小江(をえ)に 廬(いほ)作り・・・あしひきの この片山の もむ楡を 五百枝(いほえ)剥ぎ垂り・・・ ニレ(爾礼) アキニレ? ニレ科
8-1461 晝は咲き夜は戀ひ寝る合歓木の花君のみ見めや戯奴さへに見よ 紀女郎 ネブ(合歓木・合歓) ネムノキ マメ科
20-4465 ひさかたの 天の戸開き・・・神の御代より 梔弓を・・・ 大伴宿人家持 ハジ(梔・芽・芽子・波義・波疑) ヤマハギ マメ科
9-1730 山科の石田の小野の柞原見つつか君が山道越ゆらむ 宇合卿 ハハソ(母蘇・波播蘇・波波蘇) コナラ ブナ科
7-1156 住吉の遠里小野の眞榛もち摺れる衣の盛り過ぎ行く ハリ(榛・針・波里) ハンノキ カバノキ科

 
出展箇所(例歌・例文・例巻など) 植物名 標準和名 科名 備考
10-2314 巻向の檜原もいまだ雲居ねば小松が末(うれ)ゆ沫雪(あはゆき)流る ヒ(檜) ヒノキ ヒノキ科
6-925 ぬばたまの夜の更けゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しば鳴く 山部宿禰赤人 ヒサギ(久木・歴木) アカメガシワ トウダイグサ科
3-330 藤波の花は盛りになりにけり平城(なら)の京(みやこ)を思ほすや君 大伴四綱 フヂ(藤・布治・敷治) フジ マメ科
19-4204 わが背子が捧げて持てる厚朴あたかも似るか青き蓋(きぬがさ) ホホガシハ(厚朴・保宝我之婆・保宝我之波) ホオノキ モクレン科
8-1461 晝は咲き夜は戀ひ寝る合歓木の花君のみ見めや戯奴さへに見よ 紀女郎 ホヨ(保与) ヤドリギ ヤドリギ科
14-3467 奥山の眞木の板戸をとどとしてわが開かむに入り來て寝(な)さね 相聞 マキ(真木) スギ・ヒノキの類
2-141 磐代の濱松が枝結び眞幸くあらばまた還り見む 有馬皇子 マツ(松・待・麻都) マツ類 マツ科
2-97 み薦刈る信濃の眞弓引かずして弦はくる行事を知ると言はなくに 久米禅師 マユミ(檀・真弓) マユミ ニシキギ科
2-90 後書「・・・皇后紀伊國に遊行して熊野の岬に到りて其處の御綱葉を取りて還る・・・」 ミツナガシハ(御綱葉) カクレミノ ウコギ科
3-446 吾妹子が見し鞆の浦のむろの木は常世(とこよ)にあれど見し人そなき 大伴旅人 ムロノキ(室木・牟漏能木・室乃樹・天木香樹) ネズミサシ ヒノキ科
19-4226 この雪の消(け)残る時にいざ行かな山橘の實の照るも見む 大伴宿禰家持 ヤマタチバナ(山橘・夜麻多知波奈) ヤブコウジ ヤブコウジ科
2-90 君が行き日長くなりぬ山たづの迎へを往かむ待ちには待たじ 衣通王  ヤマタヅ(山多豆・山多頭) ニワトコ スイカズラ科
19-4186 山吹を屋戸に植ゑては見るごとに思ひは止まず戀こそ益れ ヤマブキ(山吹・山振・夜麻夫伎・夜麻夫枳・夜末夫吉・也麻夫支) ヤマブキ バラ科
2-111 古に戀ふる鳥かも弓絃葉の御井の上より鳴き渡り行く 弓削皇子 ユズルハ(弓絃葉・由豆流波) ユズリハ ユズリハ科
19-4291 わが屋戸のいささ群竹吹く風の音のかそけきこの夕(ゆうべ)かも タケ(竹・多気) タケの総称 イネ科
10-2336 はなはだも夜更けてな行き道の邊の齋小竹(ゆささ)の上に霜の降る夜を ササ(小竹・佐佐) ササの総称 イネ科
7-1121 妹等がりわがゆく道の細竹すすきわれし通はば靡け細竹原 シノ(細竹・小竹) ネザサ類 イネ科
2-96 み薦刈る信濃の眞弓わが引かば貴人(うまひと)さびていなと言はむかも 久米禅師 コモ(薦) スズタケ イネ科
13-3295 うち日さつ 三宅の原ゆ・・・か黒き髪に 眞木綿以ち あざさ結ひ垂れ 大和の 黄楊の小櫛を・・・ アザサ(阿邪佐) アサザ ミツガシワ科
14-3406 上毛野(かみつけの)佐野の莖立(くくたち)折りはやし吾(あれ)は待たむゑ今年來ずとも 相聞 ククタチ(九久多知) カブラナの若苗 アブラナ科 かぶ・あぶらなの若苗
5-793後文 蓋し聞く、四生の起滅は夢の皆空しきが方く、三界の漂流は環の息まぬが喩し。・・・釋迦能仁も雙林に坐して、泥をんの苦を免れたまひぬといふこと無し。・・・ 大伴旅人 サウジュ(雙樹・雙林) ナツツバキ・ヒメシャラの類 ツバキ科
4-524 むしぶすま柔(なご)やが下に臥せれども妹とし寝ねば肌し寒しも 藤原麿 ムシ(蒸) カラムシ イラクサ科
16-3834 梨棗黍に粟嗣ぎ延ふ田葛(くず)の後も逢はむと葵花咲く アフヒ(葵)・キクワク(葵?) フユアオイ アオイ科 渡来植物・中国産
16-3825 食薦(すこも)敷き蔓菁煮持ち來(こ)梁(うつはり)に行縢(むかばき)懸けて息(やす)むこの公 アヲナ(蔓菁) カブ アブラナ科 渡来植物・古来に渡来,万葉以前既出
11-2750 吾妹子に逢はなく久しうまし物阿倍橘の蘿生(こけむ)すまでに アベタチバナ(阿倍橘) クネンボ(ダイダイ) ミカン科 渡来植物・印度支那辺の産
4-521 庭に立つ麻手刈り干し布さらす東女を忘れたまふな 藤原馬養 アサ(麻・安佐・朝) アサ クワ科 渡来植物・東印度,中央アジア辺の産,万葉以前既出
5-818 春さればまづ咲く宿の梅の花獨り見つつや春日暮さむ 筑前守山上大夫 ウメ(梅・烏梅・汗米・宇米・有米・于梅) ウメ バラ科 渡来植物・中国産
16-3826 蓮葉(はちすは)はかくこそあるもの意吉麿(おきまろ)が家にあるものは芋の葉にあらし ウモ(宇毛) サトイモ サトイモ科 渡来植物・東印度産,万葉以前既出
3-384 わが屋戸に韓藍植ゑ生(おほ)し枯れぬれど懲りずてまたも蒔かむとそ思ふ 山辺宿禰赤人 カラアヰ(韓藍・辛藍・鶏冠草) ケイトウ ヒユ科 原産地未詳
16-3832 枳の棘原(うばら)刈り除(そ)け倉たてむ尿(くそ)遠くまれ櫛造る刀自 忌部首黒麿? カラタチ(枳) カラタチ ミカン科 渡来植物・中国産,万葉以前既出
7-1297 紅に衣染めまく欲しけども着てにほはばか人の知るべき クレナヰ(紅・呉藍・久礼奈為) ベニバナ キク科 原産地未詳
20-4387 千葉の野(ぬ)の兒手柏の含(ほほ)まれどあやにかなしみ置きてたか來ぬ 大田部足人 コノテガシハ(兒手柏・古乃弖加之波) 未詳 渡来植物・中国産
5-810の序 大伴淡等謹みて壮す 梧桐の日本琴一面・・・  ゴドウ(梧桐) アオギリ アオギリ科 渡来植物・中国産
10-1895 春さればまづ三枝の幸(さき)くあらば後にも逢はむ莫(な)戀ひそ吾妹 サキクサ(三枝) ミツマタ ジンチョウゲ科 渡来植物・原産地未詳
19-4140 わが園の李の花か庭に降るはだれのいまだ残りたるかも スモモ(李) スモモ バラ科 渡来植物・中国産,万葉以前既出
1-28 春過ぎて夏來るらし白栲の衣乾したり天の香具山 持統天皇 タク・タヘ・ユフ(栲・多久・妙・細布・木綿・結経・結) コウゾ クワ科 渡来植物・大陸産,万葉以前既出
17-3916 橘のにほへる香かも霍公鳥鳴く夜の雨に移ろひぬらむ 山辺宿禰赤人 タチバナ(橘・橘花・多知波奈・多知花) ミカン(コウジミカンの類) ミカン科 渡来植物・亜熱帯地方産,万葉以前既出
10-2188 黄葉のにほひ繁し然れども妻梨の木を手折り插頭(かざ)さむ ナシ(梨・成) ナシ バラ科 渡来植物・中国産,万葉以前既出
16-3834 梨棗黍に粟嗣ぎ延ふ田葛(くず)の後も逢はむと葵花咲く ナツメ(棗) ナツメ クロウメモドキ科 渡来植物・地中海東部地方より印度ベンガルに至る地方及び中国辺
16-3837 ひさかたの雨も降らぬか蓮葉に渟(たま)れる水の玉に似たる見む ハス・ハチス(蓮) ハス スイレン科 渡来植物・印度辺,万葉以前既出
8-1485 夏まけて咲きたる唐棣ひさかたの雨うち降らばうつろひなむか 大伴家持 ハネズ(朱華・翼酢・波禰受・唐棣・唐棣花) ニワウメ バラ科 渡来植物・中国産,万葉以前既出
19-4139 春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ少女(をとめ) モモ(桃) モモ バラ科 渡来植物・中国産,万葉以前既出
10-1819 うちなびく春立ちぬらしわが門(やど)の柳の末(うれ)に鶯鳴きつ ヤナギ(柳・楊・也奈宜・楊奈疑) シダレヤナギ ヤナギ科 渡来植物・中国産
20-4465 ひさかたの 天の戸開き  高千穂の 嶽に天降りし 皇祖の 神の御代より 梔弓を 手握り持たし・・・ 大伴宿禰家持 ハジ(波自) ヤマハゼ ウルシ科
8-1623 わが屋戸に黄變つ鶏冠木見るごとに妹を懸けつつ戀ひぬ日は無し 大伴田村大嬢の妹 モミジ(毛美知・母美知・紅葉・黄葉・赤葉) 紅葉植物の総称 カエデ科
 
アヲミヅラ(青角髪) 未詳
ランケイ(蘭?) 東洋ランの総称


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