芭蕉句集の植物
 
芭蕉句集に登場する植物を一覧表にしました。
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出展箇所(例歌・例文・例巻など) 植物名 標準和名 科名 備考
青柳の泥にしだるゝ塩干かな (炭俵) 青柳・柳 シダレヤナギ ヤナギ科
種芋や花のさかりに賣ありく(をのが光) サトイモ サトイモ科
むめがゝにのつと日の出る山路かな (炭俵) ウメ バラ科
ばせを植てまづにくむ荻の二ば哉 (續深川集) オギ イネ科
樫の木の花にかまはぬ姿かな (孤松) カシ ブナ科
かれ芝やまだかげろふの一二寸 (曠野) 枯芝 シバ類の総称 イネ科
菎蒻にけふは賣かつ若菜かな (芭蕉一周忌) 菎蒻 コンニャク サトイモ科
観音のいらかみやりつ花の雲 (末若葉) サクラ類 バラ科
畑打音やあらしのさくら麻 (花摘) 桜麻 アサ(雄麻)の別名 クワ科
かげろふや柴胡の糸の薄曇 (猿蓑) 柴胡 ミシマサイコ セリ科
誰ガ婿ぞ歯朶に餅おふ牛の年 (一樓賦) 歯朶 シダ   春.シダ植物.
当皈よりあはれは塚の菫草 (泊船集) スミレ スミレ科
我ためかつるはみのこす芹の飯 (續深川集) セリ セリ科
うぐいすの笠おとしたる椿哉 (猿蓑) 椿 ツバキ ツバキ科
つゝじいけて其陰に干鱈さく女 (泊船集) 躑躅 ツツジ類 ツツジ科
山寺のかなしさつげよところほり (笈日記) 野老(ところ) オニドコロ ヤマノイモ科
菜畑に花見顔なる雀かな (其便) 菜の花 アブラナ アブラナ科
よくみれば薺花さく垣ねかな (続虚栗) ナズナ アブラナ科
草臥れて宿かる此や藤の花 (猿蓑) フジ マメ科
清滝や波に散込ム青松葉 (翁艸) マツ類 マツ科
山吹や宇治の焙炉の匂ふ時 (猿蓑) 山吹 ヤマブキ バラ科
春雨や蓬をのばす艸の道 (艸の道) ヨモギ キク科
菎蒻にけふは賣かつ若菜かな (芭蕉一周忌) 若菜 春の初めに生えた食用の菜の総称  
前髪もまだ若艸の匂かな (翁艸) 若草 ワカクサ  
両の手に桃とさくらや草の餅 (桃の實) モモ バラ科
麦めしにやつるゝ戀か猫の妻 (猿蓑) ムギ類 イネ科
さびしさや華のあたりのあすならふ (笈日記) 翌檜 アスナロ ヒノキ科
どむみりとあふちや雨の花曇 (芭蕉翁行状記) 樗(あふち) センダン センダン科
あやめ生り軒の鰯のされかうべ (江戸廣小路) 菖蒲(あやめ) アヤメ アヤメ科
やどりせむあかざの杖になる日まで (笈日記) アカザ アカザ科
朝露によごれて涼し瓜の土 (続猿蓑) ウリ ウリ科
卯の花やくらき柳の及ごし (炭俵) 卯の花 ウツギ ユキノシタ科
杜若われに発句のおもひあり (續山の井) 杜若 カキツバタ アヤメ科
かくれ家や目だゝぬ花を軒の栗 (伊達衣) クリ ブナ科
椹(くはのみ)や花なき蝶の世すて酒 (虚栗) 桑・椹 クワ クワ科
西か東か先早苗にも風の音 (葱摺) 早苗 サナエ イネ科
旅人のこゝろにも似よ椎の花 (續猿蓑) シイ ブナ科
稲づまやかほのところが薄の穂 ススキ イネ科
川かぜや薄がききたる夕すゞみ スギ スギ科
うぐひすや竹の子籔に老を鳴 (をのが光) タケ類 イネ科
橘やいつの野中の郭公 (卯辰集) タチバナ ミカン科
ちさはまだ青ばながらになすび汁 (芭蕉翁眞跡集) 苣(ちさ) チシャ キク科
するが地や花橘も茶の匂ひ (炭俵) チャノキ ツバキ科
なでし子にかゝるなみだや楠の露 (小文庫) 撫子 カワラナデシコ ナデシコ科
ちさはまだ青ばながらになすび汁 (芭蕉翁眞跡集) 茄子 ナス ナス科
合歓の木の葉ごしもいとへ星のかげ (猿蓑) 合歓 ネムノキ マメ科
蓮のかを目にかよはすや面の鼻 (觀魚荘圓録) ハス スイレン科
するが地や花橘も茶の匂ひ (炭俵) 花橘 タチバナ ミカン科
昼顔に米つき涼むあはれ也 (續の原) 昼顔 ヒルガオ ヒルガオ科
夏来てもたゞひとつ葉の一葉哉 (笈日記) 一つ葉 ヒトツバ ウラボシ科
夕がほや秋は色色のふくべ哉 (眞蹟寫) 瓠(ふくべ) ヒョウタン ウリ科
寒からぬ露や牡丹の花の蜜 (別座鋪) 牡丹 ボタン ボタン科
松杉をほめてや風の薫る音 (蕉翁句集) マツ類 マツ科
麦めしにやつるゝ恋か猫の妻 (猿蓑) ムギ類 イネ科
夕顔や酔てかほ出す窓の穴 (續猿蓑) 夕顔 ユウガオ ウリ科
紫陽草や帷子時の薄浅黄 (陸奥鵆) 紫陽花 アジサイ ユキノシタ科
日の道や葵傾くさ月あめ (猿蓑) タチアオイ アオイ科
小鯛さす柳涼しや海士がつま (曾良書留) ヤナギ類 ヤナギ科
秣負ふ人を枝折の夏野哉 (陸奥鵆)    
ほとゝぎす正月は梅の花咲り (虚栗) ウメ バラ科

 
出展箇所(例歌・例文・例巻など) 植物名 標準和名 科名 備考
篠の露袴にかけししげり哉 (後の旅) ササ類 イネ科
白芥子や時雨の花の咲つらん (鵲尾冠) 芥子 白芥子 ケシ科
我に似な二ツにわれし眞桑瓜 (初蝉) 真桑瓜 マクワウリ ウリ科
山賤のおとがい閉るむぐらかな (續虚栗) ヤエムグラ アカネ科
よき家や雀よろこぶ背戸の粟 (續虚栗) アワ イネ科
あさがほに我は食くふおとこ哉 (虚栗) 朝顔 アサガオ ヒルガオ科
月見せよ玉江の蘆を刈ぬ先 (ひるねの種) ヨシ イネ科
手向けり芋ははちすに似たるとて (續深川集) サトイモ サトイモ科
榎の実ちるむくの羽音や朝あらし (笈日記) エノキ ニレ科
ひょろひょろと猶露けしや女郎花 (曠野) 女郎花 オミナエシ オミナエシ科
川かぜや薄がききたる夕すゞみ (をのが光) カキノキ カキノキ科
桐の木にうづら鳴くなる塀の内 (猿蓑) キリ ゴマノハグサ科
行秋や手をひろげたる栗のいが (笈日記) クリ ブナ科
菊の香や奈良には古き仏達 (芭蕉翁行状記) キク キク科
鶏頭や雁の来る時尚あかし (初蝉) 鶏頭 ケイトウ ヒユ科
稲づまやかほのところが薄の穂 (續猿蓑) ススキ イネ科
秋海棠西瓜の花に咲にけり (正風彦根躰) 秋海棠 シュウカイドウ シュウカイドウ科
道ほそし相撲とり草の花の露(笈日記) 相撲取花 スミレ スミレ科
秋海棠西瓜の花に咲にけり (正風彦根躰) 西瓜 スイカ ウリ科
三日月に地はおぼろ也蕎麦の花 (うき世の北) 蕎麦の花 ソバ タデ科
稲雀茶の木畠や迯どころ (西の雲) チャノキ ツバキ科
苔埋む蔦のうつゝの念佛哉 (花市) ツタ ブドウ科
冬瓜やたがいにかはる顔の形 (西華集) 冬瓜 カモウリ ウリ科
かくさぬぞ宿は菜汁に唐がらし (猫の耳) 唐辛子 トウガラシ ナス科
なでしこの暑さわするゝ野菊かな (旅舘日記) 野菊 ノギク キク科
白露もこぼさぬ萩のうねり哉 (芭蕉図録) ハギ類 マメ科
芭蕉野分して盥に雨を聞夜哉 (武蔵曲) 芭蕉 バショウ バショウ科
初茸やまだ日數へぬ秋の露 (小文庫) 初茸 キノコ類  
ものひとつ瓢はかろき我よかな (隋齋諧話) 瓢(ひさご) ヒョウタン ウリ科
粟稗にとぼしくもあらず草の庵 (秋の日) ヒエ イネ科
霧雨の空を芙蓉の天気哉 (韻塞) 芙蓉 フヨウ アオイ科
鬼灯は實も葉もからも紅葉哉 (小文庫) 鬼灯 ホオズキ ナス科
草の戸をしれや穂蓼に唐がらし (笈日記) 穂蓼 タデ類 タデ科
藤の実は俳諧にせん花の跡 (藤の實) フジ マメ科
まつ茸やしらぬ木の葉のへばりつく (續猿蓑) 松茸 マツタケ   秋.担子菌類のきのこ.
行穐のなをたのもしや青蜜柑 (うき世の北) 蜜柑 ミカン ミカン科
花むくげはだか童のかざし哉 (東日記) 木槿 ムクゲ アオイ科
文ならぬいろはもかきて火中哉 (千宜理記) 紅葉 モミジ類 カエデ科
なに喰て小家は秋の柳陰 (茶のさうし) シダレヤナギ ヤナギ科
門に入ればそてつに蘭のにほひ哉 (笈日記) スルガラン ラン科
名月の花かと見へて棉畠 (續猿蓑) ワタ アオイ科
門に入ればそてつに蘭のにほひ哉 (笈日記) 蘇鉄 ソテツ ソテツ科
秋風に折て悲しき桑の杖 (笈日記) クワ クワ科
松なれや霧ゑいさらゑいと引ほどに (翁艸) マツ類 マツ科
合歓の木の葉ごしもいとへ星のかげ (猿蓑) 合歓 ネムノキ マメ科
菊の後大根の外更になし (陸奥鵆) 大根 ダイコン アブラナ科
寒菊や粉糠のかゝる臼の端 (炭俵) 寒菊 カンギク(冬咲き菊・黄色の小輪) キク科
梅つばき早咲ほめむ保美の里 (眞蹟) 寒梅・梅 冬梅 バラ科
凩に匂ひやつけし歸花 (後の旅) 帰り花 新暦11月、小春日和に、季節はずれに咲く花(桜・梨・山吹・躑躅など)  
葛の葉の面見せけり今朝の霜 (きさらぎ) クズ マメ科
水仙や白き障子のとも移り (笈日記) 水仙 スイセン ヒガンバナ科
芹焼やすそ輪の田井の初氷 (泊船集) セリ セリ科
鞍壺に小坊主乗るや大根引 (炭俵) 大根 ダイコン アブラナ科
葱白く洗ひたてたるさむさ哉 (韻塞) ネギ ユリ科
さし籠る葎の友か冬菜賣(寛政版鹿島紀行) 冬菜 コマツナなど アブラナ科
ともかくもならでは雪のかれお花 (雪の尾花) 枯尾花・薄 ススキ イネ科
たはみては雪まつ竹のけしきかな (笈日記) タケ類 イネ科
あられきくやこの身はもとのふる柏 (續深川集) カシワ ブナ科
麦はえてよき隠家や畠村 (笈日記) ムギ類 イネ科
梅つばき早咲ほめむ保美の里 (眞蹟) 椿 早咲きの椿 ツバキ科

 
出展箇所(例歌・例文・例巻など) 植物名 標準和名 科名 備考
木枯に岩吹とがる杉間かな (笈日記) スギ スギ科


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