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堆積性ウラン鉱床    〔戻る〕


花こう岩を基盤とするその直上の堆積物層(礫岩・砂岩・泥岩)に見られることが多い。地下水や低温の熱水が基盤の花こう岩からウランを抽出し,その上部の堆積層中の植物遺体のような有機物の作用で,そのウランが種々のウラン鉱物として沈殿してできた鉱床である。



例)岡山県人形峠の堆積性ウラン鉱床の賦存状態
堆積層の基盤付近(基盤の花こう岩の直上)付近はかなり還元的で+4価のウラン鉱物である人形石が主で,その上部はやや酸化的で+6価のウラン鉱物(ウラニルイオンUO22+を含む)であるリン灰ウラン石が主である。


岡山県人形峠の堆積性ウラン鉱床のウラン鉱物の産状
大小さまざまなれきのすき間に,ウランを含む褐鉄鉱・黄色のリン灰ウラン石が沈着している。


この鉱床のウラン鉱物は6価のウラン(ウラニルイオン UO22+)や水分を主成分とする硫酸塩・リン酸塩・バナジン酸塩・ケイ酸塩などが多く,黄色っぽい粉状(土状)の見かけの鉱石が多い(閃ウラン鉱などの4価のウラン鉱物はややまれである)。特にシュレッキンゲル石,リン灰ウラン石,カルノー石,チューヤムン石,ウラノフェンはこのタイプの鉱床の主要鉱物である。なお,非晶質の褐鉄鉱が随伴することが多く,それにウランが吸着されていることもある。なお,カルノー石やチューヤムン石が多産する場合は,それに含まれるバナジウムも回収される。アメリカのコロラド州などに大規模な鉱床がある。

堆積性ウラン鉱床である人形峠のウラン鉱物
これらに伴う鉄鉱物に注目すると,4価ウラン鉱物の人形石には黒色粉状の黄鉄鉱(2価の鉄が成分の硫化鉄)が伴われ,6価ウラン鉱物のリン灰ウラン石には茶色の褐鉄鉱(3価の鉄が成分の水酸化鉄)が伴われている。これらの鉱石中に含まれる鉄とウランの価数が共に鉱床生成時の還元条件・酸化条件の違いを表している。


人形石  CaU(PO4)2・1〜2H2O
人形峠付近の地質は約6000万年前の花こう岩を基盤とし,その上に約700万年前の河川堆積物層(礫岩・砂岩・泥岩)が広く分布している。人形峠のウラン鉱床はこの河川堆積物層の基底付近にあり,そのうち基盤の花こう岩直上の礫岩層には人形石が濃集したウラン鉱石が分布していた。人形石の見かけはその礫の間を埋めた黒い粉状だが,その色は数μm程度の暗緑色の人形石の微細な結晶が黒い微粒の黄鉄鉱などと混ざった色である。人形石はリン酸塩鉱物としては4価のウランを主成分する点で特異であり,人形峠地域以外では産出は少なく,かなり還元的な環境で低温の水溶液から沈殿してでき,それはかなり有機物に富む条件だった考えられる。


リン灰ウラン石  Ca(UO2)2(PO4)2・ 12H2O
人形峠地域において,人形石が多産する層準よりやや上の堆積層には黄色のリン灰ウラン石が多産し,これは空気に触れた酸素に富む地下水が人形石を酸化分解し,ウランがウラニルイオンになり,それが二次的に沈殿してできたものである。写真上は自然光,写真下は暗所で紫外線を照射したもので,リン灰ウラン石は黄緑色の蛍光を発する。
なお,このリン灰ウラン石に随伴する褐鉄鉱(結晶度の低い水酸化鉄)にはウランが吸着され,放射能が強い。



国内の堆積性ウラン鉱床
人形峠鉱床などの国内の堆積性ウラン鉱床のウランの起源は一帯の基盤の花こう岩に含まれていたウランであり,それが地下水(あるいは低温の熱水)に溶け出し,それがその直上の礫岩層や砂岩層中で植物遺体などの有機物が介在する条件で沈殿・濃集し,ウラン鉱床が形成されたものと考えられている。国内の堆積性ウラン鉱床としては,ほかに岐阜県東濃地域,京都府等楽寺周辺などが知られ,いずれも人形峠鉱床同様,その基盤にはウランの供給源となった花こう岩が広く分布している。

岡山−鳥取県境の人形峠鉱山遠景(1965年)

人形峠ウラン鉱床の露頭(花こう岩上のれき岩−砂岩層と思われる)

人形峠鉱山(1965年)

岐阜県土岐市のウラン鉱床付近のれき岩層(露頭の下半分(白)はれき岩層下の花こう岩と思われる)(1966年)

岐阜県土岐市のウラン鉱床付近のれき岩層(1965年)

京都府当楽寺のウラン鉱床のれき岩層(1966年)