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堆積性銅鉱床    〔戻る〕

中世〜近代のヨーロッパでは銅・銀などの資源として重要だった。ポーランドからドイツにかけての地域に広がる約2億6000万年前(古生代ペルム紀末期)の,有機物や微粒の黄鉄鉱に富む灰黒〜黒色の海成泥岩層中の厚さ数m未満の層準に,1%程度の銅や数10g/t程度の銀を含み,それが採掘対象になっているもの。この堆積層はその時代の海生動物(魚類,ヒトデなど)の化石を多く伴い,有機物や黄鉄鉱に富む酸素欠乏条件でできた海成層である。鉱石は黒い泥岩中に,顕微鏡的な微粒のダイジェナイト・斑銅鉱・黄銅鉱・黄鉄鉱・自然銀などが散在するもので,それらの鉱石鉱物は細かく,肉眼で見えないことが多い。しかし,まれにダイジェナイト・斑銅鉱・黄銅鉱・黄鉄鉱などが,層理に沿った厚さ1〜数mm程度の層をなしたり,泥岩を切る細い方解石脈中に不定形をなし,肉眼で見られることがある。また,ごくまれに層理に沿って小板状をなす自然銀が認められることもある。これらの泥岩中の硫化物などは地表付近で空気に触れると酸化分解しやすく,それに伴い染み出した銅分が泥岩自身の割れ目や方解石脈に沿って緑色粉状・皮膜状の炭酸銅(孔雀石)となり,その泥岩自体は小片状に割れていく。
堆積性銅鉱床とはいうものの,この金属分は,この泥岩の堆積時とほぼ同時代の海底火山活動による低温の熱水に由来するとされ,鉱石層と同じ層準の地層があっても火山活動の痕跡が認められない地域では金属分は認められない。また,この鉱床には鉱石1tあたり0.1g程度の白金族元素(Pt,Pd)が含まれていることがあり,成因的に注目されている。また,部分的に紅砒ニッケル鉱−マウヘライトといったニッケル砒化物が重晶石と共出していることもある。



堆積性銅鉱床の鉱石   ドイツ マンスフェルト 
層理に直角に切断したもの。黒色泥岩中に顕微鏡的なダイジェナイト・斑銅鉱・黄鉄鉱,微量の自然銀の微粒子が散在している。これはダイジェナイト・斑銅鉱・黄鉄鉱からなる幅1o程度の銅硫化物の層状集合体が肉眼的に見られ高品位な鉱石であるが,通常はこのような肉眼的な銅鉱物は見られない。
この黒色泥岩中の硫化物は空気に触れると酸化分解しやすく,染み出した銅分が泥岩の割れ目に緑色粉状の炭酸銅(孔雀石)となっており(試料の下部),泥岩自体は全体にひび割れていく。



上のドイツ マンスフェルトの堆積性銅鉱床の鉱石の偏光反射顕微鏡写真
上左側の顕微鏡写真では,泥岩中には0.01〜0.05mm程度のダイジェナイト(Cc)や斑銅鉱(Bn)が鉱染し,それらの存在量から泥岩(鉱石)自体には1%程度の銅が含まれると考えられる(Malは風化でできた孔雀石)。なお,写真中や右のように,肉眼でまれに見られるダイジェナイト・斑銅鉱・黄鉄鉱からなる層状集合体部分と,銅硫化物が鉱染する泥岩との境は,漸移的である。
なお,下写真のように,この堆積性銅鉱床中のダイジェナイト(Cc)は時に自然銀(Ag)に取り巻かれ,この鉱石は銀資源ともなる(Agは平均数10g/t)。なお,この写真には見られないが,ストロメイヤ鉱(CuAgS)や黄銅鉱も含まれることがある。