玄武岩(げんぶがん)  basalt 
玄武岩は,はんれい岩と同じく,ケイ 酸分 (SiO2)が少ない(50%程 度)マグマからできるが,はんれい岩はそれが地 下深部でゆっくり冷えて固まってできるのに対し,玄武岩は火山活動により,それが地表付近で急に冷えて固まってできる。
玄武岩には以下のような見かけのものなどがある。

玄武岩
@全体が黒く,きめ細かく,その中に暗褐〜暗黄緑色のかんらん石,暗褐〜緑黒の輝石類の粒(斑晶)が点々と入っている。しかし,これらの斑晶は1mm程度で小さく,はっきり認め られない ことも多い。
A〜Bマグマに含まれていた 水分などの揮発成分が,噴出時の圧力の減少で発泡し,抜けた孔がたくさんあるもの(多孔質組織)。この孔は方解石や 沸石類などの白っぽい鉱物で満たされていることがあ る(B ※杏仁状組織と呼ぶことがある)。


岡山県内の玄武岩について

玄武岩は県内の所々に分布し,河原にもよく見られる。起源により,(1)海洋底の玄 武岩と(2)アルカリ玄武岩とがある。

岡山県の玄武岩の起源


(1)海洋底の玄武岩
 古生代(約3億年前)に,海洋底の海嶺やホットスポットからマグマが噴出して固まってでき,1年に数cmの海洋プレートの動きにより,現在の岡 山県の場所まで移動してきたもの。高梁市川上町上大竹,井原市芳井町日南などで,古生代の石灰岩を伴っ て分布していることもある。
 変質して暗緑色や暗赤色になっていることが多い。また,脆くなっているものも多い。

岡山県の玄武岩
海 洋底の玄武岩が海洋プレートの動きで岡山県の場所まで移動してき たもの/高梁市川上町上大竹産


(2)アルカリ玄武岩
 現在の場所で,新生代(数100万年前)に地下深部(上部マントル)からマグマが噴出して固まってできたもので,直径数100m〜1km程度の狭い 分布 を示し,県中部〜北部に 点々と見られるものである。この玄武岩はアルカリ金属元素(カリウム(K)やナトリウム(Na))に富むため,アルカリ玄武岩とよばれる(普通の玄武岩には Na2O+K2Oが1〜2%程度しか含まれないが,アルカリ玄武岩にはそれが5%程度含まれる)。
 このア ルカリ玄武岩は変質しておらず,黒色緻密で非常に堅い。しばしば 上部マントルの黄緑色のかんらん岩や, 黒〜 緑黒色の頑火輝石や普通輝石の1cm 大の破片を含んでいる。
 このアルカリ玄武岩の溶岩流の地形は侵食作用で失われ,マグマが地表へ上がってきた通路の部分(火道)のみが残丘として残っている。鏡野町男山・女山, 新 庄村宮座山,新見市哲多町荒戸山などは,その残丘で,頂上が丸い小高い山であ る。
岡山県の玄武岩
荒戸山
アルカリ玄武岩/新見市哲多町荒戸山産。上部マントルの黄緑色のかんら ん岩や緑黒色の輝石類の 1cm大の破片を含むことがある。
新見市哲多町荒戸山/アルカリ玄武岩からなる残丘。

荒戸山のでき方
荒戸山のでき方/数100万年前に地下深部のマントルからマグマが噴出して, 玄武岩の台地でき,それが侵食され,マグマの噴出したときの通り道(火道)のみが侵食に耐えて残丘(荒戸山)になった。