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鉱物の種類について  [戻る

鉱物にはよく知られているものとして,石英(二酸化ケイ素/SiO2),方解石(炭酸カルシウム/CaCO3),ダイヤモンド(炭素/C)などがあります。鉱物は現在までに世界で約4700種,日本では 約1000種の産出が知られています。
その鉱物の種類は,以下のように,構成原子の種類(主成分)と,その原子の結びつき方(原子配列(結晶構造))で決まっています。

※宝石でよく知られているルビーやサファイアは鉱物ですが,それらの呼び方は鉱物名ではありません。ルビーとサファイアは含まれているわずかな微量成分が異なるた めに色が違うだけで,いずれも酸化アルミニウム(Al2O3)が主成分で,原子配列も同じでコランダムという鉱物です。また,別の宝石であるアクアマリンやエメラルドの場合も同じ理由で,いずれも緑柱石(ベリリウム,アルミニウムの珪酸塩/Be3Al2Si6O18) という鉱物です。
※ガラスは特定の原子配列がなく(非晶質),一定した化学成分をもたないので鉱物ではありません。


構 成原 子の種類(主成分)による鉱物種の違いの例
 
−原子配列が同じで原子の種類が異なる場合 (岩塩とカリ岩塩 同形(類質同像))−
塩化ナトリウム(NaCl)である岩塩(食塩)は,ナトリウム原子(Na) と 塩素原子(Cl)が,個数の割合(原子比)で1:1で,下図のように配列してい る 鉱物です。
岩塩の構造

岩塩の原子配列
塩化カリウム(KCl)であるカリ岩塩は,カリウム原子(K)と塩素原子 (Cl)が,個数の割合(原子比)で1:1で,下図のように配列している鉱物で す。
カリ岩塩の構造

カリ岩塩の原子配列
上図のように,岩塩とカリ岩塩は原子配列が全く同じですが,その構成原子の種類が異なるので別 の種類の鉱物です。このように,原子配列が全く同じで,その原子の種類が 異なるものを同形(類質同像)といいます。
 
なお,岩塩のナトリウム原子の代わりにカリウム原子が,逆にカリ岩塩のカリウム原子の代わりにナトリウム原子が入ることがあります(下 図)。このように原子配列が同じで原子の種類が入れ換わる現象を同形置換と いい,その同形置換がある結晶などを固溶体といいます
(※ 固溶体には同形置換によるもの以外に,原子配列の隙間に別の原子が入り込む形式や構成原子の一部が欠損する形式などもあります。また,異種原子による置換 が進むと,原子配列が違ってくる固溶体もあります)。

岩塩とカリ岩塩の固溶体
岩 塩とカリ岩塩との間で,ナトリウム原子とカリウム原子が同形置換で入れ替わってできる固溶体
岩塩のナトリウム原子の代わりにカリウム原子が入っていき,その数がナトリウム原子より多くなるとカリ岩塩になる。
一般に,このような同形 置換は高温条件で あるほどよく起こる。また,大きさが似たもの同士,化学的性質 が似たもの(周期表の縦列の同じ族)同士の原子が同形置換を起こしやすい

互いに同形の関係に ある鉱物はきわめて多く,
長石類(曹長石・カリ長石・灰長石など数種。下図),
ざ くろ石類(苦ばんざくろ石・鉄ばんざくろ石・満ばんざくろ石・灰ばんざくろ石・灰鉄ざくろ石・灰クロムざくろ石など10数種),
かんらん石類(苦土かんらん石・テフロ石(マンガンかんらん石)・鉄かんらん石など数種),
電気石類(リチア電気石・苦土電気石・鉄電気石など10数種),
単斜輝石類(透輝石,灰鉄輝石・普通輝石・ひすい輝石・リチア輝石など約10種),
単斜角せん石類(透せん石,アクチノせん石,普通角せん石,らんせん石など数10種)
などがよく知られ,その多くは固溶体をしなています。

 長石の構造
例1)同形置換が起こる長石類の原子配列
桃色の部分にナトリウム原子が多く入ると曹長石(アルバイト),カリウム原子が多く入るとカリ長石,カルシウム原子 が多く入ると灰長石(アノーサイト)になる。(※なお,カルシウム原子が多 く入ると+の電荷が増えるため,結晶全体の電荷が中性になるように,赤色の部分にケイ素原子より+の電荷が少ないアルミニウム原子が入りやすくなる)



例2)同形置換が起こる金銀銅の原子配列
金属結晶である金銀銅は互いに同形の関係にあり(原子配列が同じ),金と銀は原子の大きさが似ているのであらゆる割合で入れ替わる(固溶しやすい)が,銅は金や銀と原子の大きさがかなり異なるのでそれらと入れ替わりにくい(固溶しにくい)。
なお,自然界から産出する金(自然金)の多くは金銀合金で,金と銀の幅広い組成の固溶体である。



原子の結びつき方(原子配列 (結晶構造))による鉱物種の違いの例
 
−構成原子が同じで原子配列が異なる場合 (石墨(黒 鉛)とダイヤモンド 多形(同質異像,同素体)
)−
 石墨とダイヤモンドの原子配列

炭素原子が左図のように配列するとダイヤモンドになり,右図のよう に配列すると石墨(黒鉛)になります。
ダイヤモンドと黒鉛は,構成原子の種類(主成分)は全く同じですが,その原子配列が異なるので別の種類の鉱物です。このように,構成原子の種類が同じで, その原子配列が異なるものを多形(同質異像,同素体)といいます。

互いに多形の関係にある鉱物は多くの例があり,ほかには,斜方硫黄・ 単斜硫黄(いずれも主成分はS8),閃亜鉛鉱・繊維亜鉛鉱(いずれも主成分はZnS), 石英(下図)・トリディマイト・クリストバライト(下図)・コーサイト・スチショバイト(いずれも主成分はSiO2), ルチル・ブルッカイト・アナターゼ(いずれも主成分はTiO2),方解石・あられ石(いずれも主成 分はCaCO3), 紅柱石・ケイ線石・ らん晶石(いずれも主成分はAl2SiO5), 単斜頑火 輝石・プロト頑火輝石・頑火輝石(いずれも主成分はMgSiO3),灰れん石・斜灰れん石(いずれ も主成分はCa2Al3O(Si2O7)(SiO4)(OH)) などがあります。

クリストバライトと石英の構造
  
             二酸化ケイ素(SiO2) の多形の例
※石英の方がクリストバライトよりも 低温ででき,原子配列が密で,密度(比重)が高い(石英の密度は2.65g/cm3,クリストバラ イトの密度は2.3g/cm3)。
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生成するときの温度や圧力が異なると,同じ構成原子 でも 違った配列になり,多形になる傾向があります(炭素の場合,低圧条件では石墨,高圧条件ではダイ ヤモンドになる。下図↓)。


 炭素のP−T平面の状態図

圧力(縦軸)−温度(横軸)条件に おけるダイヤモンドと石墨(黒鉛)の 生成条件

一般に,多形 の関係にある鉱物では,低温高圧でできた ものの方が原子配列が密であるため,密度(比重)が高い。 
→ この例ではダイヤモンドは黒鉛よりも 低温高圧でできるので原子配列が密で,密度(比重)が高い(ダイヤモンドの密度は3.5g/cm3, 石墨の密度は2.3g/cm3)。

※約4700種ある鉱物のうち,同形がなく,多形もない鉱物はあまり多くない。この例としては,脆銀鉱(Ag5SbS4),赤銅鉱(Cu2O), 藍銅鉱(Cu3(CO3)2(OH)2), トパーズ(Al2(SiO4)(F,OH)2) などがある。