変成岩に見られる組織 [戻る]
変成岩には接触変成岩と広域変成岩の両方に見られる組織と,広域変成岩だけに見られる組織とがある。
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接触変成岩と広域変成岩の両方に見られる組織
斑状変晶組織(ポーフィロブラスティック組織):変成岩に見られる組織で比較的細粒な鉱物集合体の中に大粒の結晶が存在している組織。この大粒の結晶を斑状変晶(ポーフィロブラスト)という。変成度が高い変成岩に特徴的な組織である。 斑状変晶になっている鉱物は原子配列が密で,比重が高く,硬い傾向がある(ざくろ石類,紅柱石,ケイ線石,藍晶石,コランダム,十字石,磁鉄鉱,黄鉄鉱など)。 ![]() 白雲母片岩のポーフィロブラスティック組織 石英・長石類・雲母類などからなる緻密な生地に2mmに達する大きなざくろ石の斑状変晶が成長している。 |
ポイキロブラスティック組織:変成岩中で多数の細かい鉱物が大きな別の鉱物(斑状変晶)に取りこまれている組織。変成度が高い変成岩に特徴的な組織である。![]() 白雲母片岩中の十字石のポイキロブラスティック組織 十字石の斑状組織の中に細かい石英・長石類・雲母類などが多く取り込まれている。 |
反応縁:異種鉱物の境に別の鉱物が生成している組織。変成作用の温度・圧力条件が変わり,鉱物の組み合わせが不安定になり,それらの鉱物同士の成分が反応し,その境に新たな鉱物が生成したもの。しかし,鉱物と変成流体の反応でできたものが多く,鉱物同士の化学反応式で表せないものが多い。下の左の場合は鉱物同士の化学反応式で表せるが,右の場合は鉱物同士の化学反応式で表せない。 ※火成岩に見られる反応縁は鉱物とマグマとの反応でできる。 |
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![]() 片麻岩中のコランダムがその周りのアルカリ長石と温度低下(約700℃以下)で加水反応し(後退変成作用),その境に反応縁として白雲母が生じているもの(クロスニコル)。 反応式) Al2O3(コランダム) + KAlSi3O8(アルカリ長石) + H2O(変成流体の水分) → KAl2(AlSi3O10)(OH)2(白雲母) |
![]() 片麻岩中のコランダム(Al2O3)の周りに反応縁としてスピネル(MgAl2O4)が生じているもの(平行ニコル)。 |
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広域変成岩だけに見られる組織
片状組織:変成作用でできた鉱物が1方向に並んでいる組織。特に雲母類,緑泥石,角閃石類が並んでいることが多い。結晶片岩に特徴的に見られる組織。![]() 各種の結晶片岩の片状組織(すべて平行ニコル) |
圧砕組織:圧力を受けたため,造岩鉱物が細かく砕けたようになっている組織。変成作用を受ける前の岩石中の鉱物種があまり変化することなく,ただ砕けたようになっている変成岩はミロナイト(圧砕岩)という。特に圧砕作用が進み全体が緻密になった岩石をシュードタキュライトという。 なお,元の岩石(原岩)中の鉱物が圧力に耐えて点々と残留している(残斑晶)が見られることも多い。特に長石類が残斑晶として残ることが多い。 ![]() ミロナイト(圧砕岩) これは花こう岩が圧力を受けてできたミロナイト。砕けて細かくなった部分と砕かれずに残った部分(粗粒の部分)が混ざっている。 |
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※変成岩はすでにあった岩石(火成岩,たい積岩,及び他の変成岩)が熱や強い圧力によって変化してできた岩石のグループだが,変成作用が弱かったり,もとの岩石の種類によっては肉眼で変成作用の痕跡がわかりにくい場合がある。その場合,薄片にして偏光顕微鏡で観察すると変成作用の痕跡が分かりやすい。
接触変成岩(ホルンフェルス)に見られる変成作用の痕跡 |
![]() 泥岩が接触変成作用を受けたもの(泥質ホルンフェルス) 泥質ホルンフェルスは黒色塊状で,肉眼では元の泥岩と区別しにくい場合がある。偏光顕微鏡下では変成作用を受ける前の泥岩中の泥粒(石英)の隙間に,変成作用で黒雲母が無数に生じているのがわかる(平行ニコルで褐色に見えるのが黒雲母)。 |
![]() 流紋岩が接触変成作用を受けたもの(ホルンフェルスの一種) 流紋岩のような火成岩は接触変成作用を受けても肉眼ではその変化はわかりにくい。しかし,偏光顕微鏡で観察すると,変成作用を受ける前の流紋岩中の輝石類が元の形を残したまま黒雲母や角閃石類の微粒集合体に変化し,石基の火山ガラスは結晶化して微細な長石類や石英の集合体に変化している。 |