火成岩に見られる組織   [戻る

火成岩にはマグマの冷却過程でできた組織と,その後の後成的な組織が見られる。

マグマの冷却過程でできた組織

主に火山岩に見られる斑状組織・深成岩に見られる等粒状組織:
斑状組織は
マグマが地表近くで急に冷えて固ってでき,岩石を構成する鉱物粒子が平均して1mmより細かく,石基と呼ばれる緻密な生地に,斑晶と呼ばれる1〜数mm程の自形〜半自形の鉱物粒子が散らばっている組織である。
等粒状組織はマグマが地下深部でゆっくり冷えて固ってでき,岩石を構成する鉱物粒子が平均して1mmより粗く,同じくらいの大きさの他形の鉱物粒子が集合している組織である。石基は見られない。


左:斑状組織を示す安山岩,右:等粒状組織を示すせん緑岩(いずれもクロスニコル)
灰色〜白色に見える斜長石に注目すると,斑状組織では自形〜半自形をなし,その周りがきめ細かな石基(最後にマグマが固まった部分)となっており,等粒状組織では大部分が他形で,密に集合しており,石基は見られない。



流理構造:火山岩によく見られる組織。マグマが流動しつつ冷えて固まった火山岩によく見られる。石基中の細かい斜長石や輝石類などの結晶が方向性をもって並んでいる。


流理組織(クロスニコル)
石基の頑火輝石の微細な結晶が方向性を持って並んでいる(安山岩)



ポイキリティック組織:マグマ中で大きな鉱物が成長する際,別種の細かい鉱物が多数取りこまれた組織。


ポイキリティック組織
大きな普通輝石に取り込まれている細かい斜長石(閃長岩中)。


ミルメカイト組織(微文象組織):石英と斜長石が複雑に入り組んだように共生している組織。2種以上の鉱物がマグマから一緒にできる共融組織の一種。



花こう岩中のミルメカイト組織(クロスニコル)
虫喰いのように見え,分化の進んだ花こう岩中によく見られる。
※2種類以上の鉱物がマグマから同時に成長した際にできる共融組織の一種。
反応縁:ある鉱物の周りを別の鉱物が取りまいている組織。ある鉱物がマグマの中でできた後で,マグマの成分が変わり,その鉱物とマグマの成分とが反応して新たに別の鉱物がその鉱物の周りを取り巻くようにできているもの。この反応が進むと大部分が新たにできた鉱物に置き換わることもある(交代組織と呼ばれるものになる)。
下の例のほかに,頑火輝石の周りに生じた普通輝石の反応縁,かんらん石の周りに生じた頑火輝石の反応縁などの例がある。
※火成岩の反応縁は鉱物とマグマとの反応ででき,変成岩の反応縁とはでき方が異なる。



安山岩中の普通角閃石のまわりにできた磁鉄鉱の反応縁(平行ニコル)
安山岩マグマが地表付近に噴出し,圧力の減少でマグマ中の水分が抜け普通角閃石の水分が失われると共に,空気中の酸素がマグマにとけ込み,その中の酸素濃度が高まり,普通角閃石中の2価の鉄が一部酸化され磁鉄鉱がその周りにできたもの。このような現象は火山岩中の普通角閃石・黒雲母などの含水鉱物によく見られ,オパサイト化と呼ばれる。



閃長岩中の磁鉄鉱の周りにできた黒雲母の反応縁(平行ニコル)
マグマ中で先にできた磁鉄鉱が,マグマ中のカリウム・アルミニウム・ケイ素などと反応し,その周りに褐色の黒雲母の反応縁が生じたもの。下写真はこの反応縁が厚くなり磁鉄鉱が黒雲母に置き換わっていく交代組織を示す。




マグマの冷却過程以外でできた後成的な組織
     

熱水変質:火成岩では火山ガラス,有色鉱物(黒雲母,輝石類,普通角閃石,かんらん石),カルシウムに富む斜長石が変質しやすい。火山ガラス・有色鉱物はスメクタイト・緑泥石に変質し,暗緑〜褐緑になる。カルシウムに富む斜長石は斜灰れん石・モンモリロナイト・方解石などに変質し,濁ったように透明度が下がる(ソーシューライト化)。
熱水変質でできた鉱物はきめ細かいものが多く,偏光顕微鏡でも同定できない場合が少なくない。


熱水変質作用を受けたはんれい岩
部分的に斜長石が微細な
灰れん石・モンモリロナイト・方解石に変質し,その部分が濁ってもやもやとしたように見えている。



熱水変質作用を受けた玄武岩
火山ガラスの部分が暗緑色のスメクタイト
に変質している。

圧砕組織:岩石が圧力を受けたため,造岩鉱物が細かく砕けたようになっている組織。普通の火成岩の造岩鉱物の中では特に石英がよく砕けている。これが著しくなるとミロナイトという変成岩の一種になる。


かんらん岩の圧砕組織
かんらん石が砕けて細かくなっている。部分的に砕かれずに残ったものも見られる(やや大粒のもの)。上下に黒く見える太い線はかんらん岩の割れ目に沿って蛇紋石化が進んだ部分。