鉱物には見る方向(結晶方位の違い)により,あるいは光源の種類(光源の波長分布の違い)により,著しく色が違って見える特殊なものがある。
このようなものは,大抵,他色の鉱物である。特殊な宝石として用いられることが多い。日本産のものではあまり見られない。
    

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見る方向(結晶方位の違い)により,著しく色が違って見えるもの
これは結晶方位により,光の吸収帯(または光の反射スペクトル)が著しく異なる鉱物である。下の例以外には,透明な紅柱石,斜灰れん石,頑火輝石などがこのような見え方をする。
きん青石の色の変化

きん青石

この鉱物は通常,くすんだ色で半透明だが,まれに透明なものがある。このようなものは見る方向により,深青色〜淡褐色に色が違って見える。写真のものはカナダ産のもので,宝石として用いられる(宝石名:アイオライト)。同様なものはマダガスカルからも産出する。
クンツァイトの色の変化

リチア輝石

この鉱物は通常,白や灰色で不透明だが,まれに透明なものがある。その中で桃色のものは見る方向により,淡桃色〜濃桃色に色が違って見える。写真のものはアフガニスタン産のもので,宝石として用いられる(宝石名:クンツァイト)。同様なものはブラジルからも産出する。


光源の種類(光源の波長分布の違い)により著しく色が違って見えるもの
これは可視光領域において,複数の狭い光の反射スペクトルを有するため,光源の波長分布のわずかな違いで色が著しく異なって見える鉱物である。例はきわめて少なく,宝石名でアレキサンドライトと呼ばれる少量のクロムを含む金緑石(下写真)が代表的なものである。他には極く希にダイヤモンドに包有されて産出する,数%のクロムを含む苦ばんざくろ石(ノリンジャイト−苦ばんざくろ石の中間組成のざくろ石)が同様な見え方をする。

しかし,光源の種類(光源の波長分布の違い)により,わずかながら色が違って見えるのは,多くの鉱物についてあてはまる。たとえば青色のコランダム(サファイア)は蛍光灯下の方が白熱灯下よりも鮮やかな青色に見える。

アレキサンドライトの色の変化


金緑石

この鉱物は通常,黄色・灰黄色・灰緑色だが,1%程度のクロムを含むものは,日光や蛍光灯の下ではエメラルドのような深い緑色である。一方,白熱灯やロウソクの下では深い赤紫色に見える。
写真のものはブラジル産のもので,宝石として用いられる(宝石名:アレキサンドライト)。同様なものはロシア,ジンバブエからも産出する。