ウルツ鉱(繊維亜鉛鉱) wurtzite ZnS 六方晶系  [戻る]

ウルツ鉱は反射光下では光学的性質が閃亜鉛鉱と同じで区別できない(下左写真。いずれもやや暗く,灰色で,等方体)。研磨薄片の透過光下でのクロスニコル下での観察では閃亜鉛鉱とは異なり,複屈折が観察され,針状結晶やその亜平行集合体〜放射状の集合組織が見られる(下右写真)。※しかし,閃亜鉛鉱の(111)の層とウルツ鉱の(0001)層は互いに不規則に積層して変調構造をなす場合があり,透過光でのクロスニコル観察での干渉色の有無で,両者が厳密に区別できるとは限らない。
ZnSに近い組成のものは淡黄〜黄色の内部反射を示す。なお,Znの代わりに若干のFeを含み,その量が多くなると褐色の内部反射を示すようになる。
熱水鉱脈や現在の海底熱水鉱床などから産する。ウルツ鉱は閃亜鉛鉱の高温相とされるが,両者の生成の違いはもっぱら熱水の性質や沈殿機構にある。閃亜鉛鉱よりもややまれな鉱物。

反射色/灰色
反射多色性/なし
異方性/なし
反射率(λ=590nm)/17〜20%(鉄に富むものはやや高い)
ビッカース硬度(kgf/mm2)/146〜264
内部反射/淡黄〜褐色(鉄に富むものは濃色)



ウルツ鉱(Wz)と閃亜鉛鉱(Sp) 北海道豊羽鉱山/研磨薄片
反射光下(左)では,ともにやや暗く灰色で等方体で,両者は区別できない。
透過光でのクロスニコル下(右)ではウルツ鉱のある部分は1次〜2次の干渉色を示し,針状結晶やその亜平行集合体〜放射状の集合組織が見られる。それに対し,閃亜鉛鉱の部分は全く暗黒である。透過光での平行ニコル下(中)では両者が熱水からの沈殿による累被組織をなしているのがよくわかる。そして,鉄の含有率が高い部分は暗赤褐色〜褐黒色で,低い部分は黄色で,ウルツ鉱の部分が鉄の含有率が低いのが分かる。
Wz:ウルツ鉱,Sp:閃亜鉛鉱,Py:黄鉄鉱

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検鏡試料:研磨薄片。褐色〜黒褐色の累被組織があるZnS鉱物を主とする熱水性亜鉛鉱石