鉄マンガン重石 wolframite (Fe,Mn)WO4 単斜晶系 [戻る]

灰色で,明暗の普通程度の反射多色性があり,異方性は明瞭。劈開面はさほど硬度は高くないが,それに直交する方向はやや硬度が高く,平滑な研磨面を得るには時間がかかる。Fe⇔Mn以外の組成変化はほとんど無い。原子比でFe>Mnのものは鉄重石(ferberite),Mn>Feのものはマンガン重石(huebnerite)という。Mnの多いマンガン重石は深紅の内部反射を示す。自形〜半自形の板状のことが多く,その断面が短冊状に見える。
チタン鉄鉱系花こう岩の活動に伴い形成された高温の熱水鉱脈〜気成鉱床に産し,錫石,黄銅鉱,硫砒鉄鉱,自然ビスマス,灰重石,石英,白雲母などと共に,粗い短冊状で見られる(石英中に埋没した,鏡下で視野に収まらない粗粒なものが多い)。黄鉄鉱と共生するものはやや硫黄分の多い条件でできたもので,Feが鉄硫化物に吸収されることで相対的にMnに富み,マンガン重石になりやすい傾向がある。

反射色/灰色
反射多色性/普通(明灰〜暗灰)
異方性/明瞭
反射率(λ=590nm)/15〜19%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/258〜657
内部反射/Mnに富むマンガン重石は深紅。それ以外は無



鉄重石(Wf) 兵庫県生野鉱山
平行ニコル
熱水鉱脈鉱床。反射多色性は普通で観察には注意がいる。
これは比較的細かいもので板状結晶の断面が短冊状で現れている。視野に収まりきらない粗大なものも多い。
Wf:鉄重石,Cp:黄銅鉱,Std:褐錫鉱,Qz:石英


左の鉄重石(Wf)の異方性(明瞭)/
クロスニコル
異方性は明瞭。これはMnをほとんど含まない鉄重石の端成分に近いもので,内部反射は認められない。なお,Mnに富むマンガン重石は深紅の内部反射を示す。
Wf:鉄重石,Cp:黄銅鉱,Std:褐錫鉱,Qz:石英