バレリー鉱 valleriite 4(Cu,Fe)S・3Mg(OH)2 六方晶系  [戻る]

反射多色性が著しく,橙褐〜灰色で,異方性も非常に強い。マッキナワイトと似るがバレリー鉱は橙味が強く,かつ,研磨硬度が低く平滑な研磨面が得にくく荒れた研磨面になりやすい。基本的に,マッキナワイトと同様な構造の(Cu,Fe)S層と,ブルーサイトと同様な構造のMg(OH)2層のつみ重なりによる層状鉱物で,形態は葉片状で,その断面が柳葉状の集合体で観察されることが多い。Cu⇔Fe,Cu⇔Niの置換のほか,Mgの代わりにAlを若干含むこともある。なお,(Cu,Fe)S層とMg(OH)2層の比率変化もあり,4:3からずれているものが多い。Fe,Niの多いものは橙味が乏しく,トチリナイト(tochilinite 4FeS・3Mg(OH)2)では反射色が褐色〜灰色である。そのほかの組成変化による光学的変化は認めがたい。 層状構造に沿い薄くはげるような1方向に完全な劈開があり,それが研磨面でしばしば観察される。また,その劈開に沿い,輝銅鉱類似のCu2S鉱物に変質していることもある。
黄銅鉱などの銅鉱物を含む蛇紋岩中にしばしば見られる。また高温でできた銅に富むスカルン鉱床中の後退変成鉱物としてスカルン鉱物中に少量見られることがある。

反射色/橙褐〜灰色(反射多色性が非常に強い)
反射多色性/非常に強い(橙褐〜灰色)
異方性/非常に強い
反射率(λ=590nm)/14−22%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/約30
内部反射/なし




バレリー鉱(Vl)の反射多色性(非常に強い) 岡山県三原鉱山平行ニコル
斑銅鉱に富む高温形成のスカルン中の後退変成鉱物。非常に硬度が低く,荒れた研磨面になりやすい。反射多色性は非常に強く,灰色〜橙褐。
しばしば磁鉄鉱を伴う。
Vl:バレリー鉱,Hgrs:加水ざくろ石



左のバレリー鉱(Vl)の異方性(非常に強い)/クロスニコル
異方性による橙〜クリーム〜暗灰の色変化が顕著。しばしば葉片状組織がはっきりわかる。
このようにステージを45°回転させる毎に色が大きく変化することが多い(ステージを1回転させると4回色調が変化)。

バレリー鉱(Vl)の反射多色性(非常に強い) 兵庫県夏梅鉱山
平行ニコル
黄銅鉱の鉱化作用を受けた蛇紋岩中のもの。反射多色性は非常に強く,橙褐〜灰色。
Vl:バレリー鉱,Cp:黄銅鉱,Mt:磁鉄鉱
左のバレリー鉱(Vl)の異方性(非常に強い)/クロスニコル
Vl:バレリー鉱,Cp:黄銅鉱,Mt:磁鉄鉱

 

 



トチリナイト(To)の反射多色性(非常に強い) 広島県久代/
平行ニコル
高温形成のスカルン中。反射多色性は非常に強く,褐〜灰色。バレリー鉱に比べ,橙味に乏しい。
Tc:トチリナイト,Spu:スパー石,And:灰鉄ざくろ石


左のトチリナイト(To)の異方性(非常に強い)/
クロスニコル

このようにステージを45°回転させる毎に色が大きく変化することが多い(ステージを1回転させると4回色調が変化)。