シルバニア鉱 sylvanite AuAgTe4 単斜晶系  [戻る]

平滑な研磨面が得られる。時にやや錆びやすい。かなり明るく,反射多色性は明瞭(クリーム白〜帯褐白色)で,異方性は強い
自然テルルと似るが,シルバニア鉱はややクリーム色(またはわずかに褐味)がかり,反射多色性は明瞭。異方性は自然テルル同様強い(なお,微粒子ではシルバニア鉱と自然テルルは区別困難)。
カラベラス鉱はシルバニア鉱よりも黄色味があり,反射多色性・異方性がやや弱い。
クレンネル鉱とは,シルバニア鉱がやや明瞭な反射多色性を示し,かつ,やや異方性が強いが,やや識別困難。
※シルバニア鉱は見かけが斜長石のアルバイト式双晶に似た特徴的な反復双晶をなすことがあり,これは異方性で簡単に確認できる(下写真)。類似の反射色の鉱物でこのシルバニア鉱のような反復双晶をなすものはない。しかしシルバニア鉱にも双晶をなさない単晶の場合がある(特に数μm程度の微粒子は単晶のことが多い)。

浅熱水成金銀石英脈中に,自然テルル,ステイツ鉱,テルル鉛鉱,コロラド鉱,ゴールドフィールド鉱,リッカード鉱,黄鉄鉱,黄銅鉱などとともに見出される。金のテルル鉱物ではカラベラス鉱とともに普通で,重要な金資源となる。

すべての金銀のテルル化鉱物と共生しうる(右図)。なお,自然テルルと密接に共生することが多い。自然金・自然銀とは共生しない。


反射色/クリーム白〜帯褐白色
反射多色性/明瞭(クリーム白〜帯褐白色)
異方性/強い
反射率(λ=590nm)/49−60%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/102−221
内部反射/なし

      Au-Ag-Te系鉱物の共生関係



シルバニア鉱(Sy)の反射多色性(明瞭) アメリカ コロラド州 ボールダ―
平行ニコル
自然テルルよりもややクリーム色がかり,明瞭な反射多色性(クリーム白〜帯褐白色)がある。写真では反復双晶が明瞭(Syの文字の右部分)。浅熱水成金銀鉱脈中。
Sy:シルバニア鉱,Col:コロラド鉱,Qz:石英



左のシルバニア鉱(Sy)の異方性(強い)クロスニコル
自然テルル同様,異方性は強いが,シルバニア鉱は時にこのような直線的な反復双晶をなし,それが異方性ではっきりわかる(写真ではSyの文字の右部分)。しかし双晶をなさない単晶のこともあり(Syの文字の左側部分),その場合,自然テルルと区別しにくい。
Sy:シルバニア鉱,Col:コロラド鉱,Qz:石英



シルバニア鉱(Sy) 北海道手稲鉱山
平行ニコル
浅熱水成金銀鉱脈中。ゴールドフィールド鉱(Gf)やステイツ鉱(Stz)などのテルル鉱物と密に共生する。反復双晶をなす。
なお,一般に浅熱水成金銀鉱脈の熱水はやや酸化的で一部のTeは4価となり,それは共生する四面銅鉱(Tet)に顕著に含まれる(ゴールドフィールド鉱)。
Sy:シルバニア鉱,Stz:ステイツ鉱,Gf:ゴールドフィールド鉱,Cp:黄銅鉱,Qz:石英
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検鏡試料:石英質のテルル性金銀鉱石中の灰黒色部




シルバニア鉱と自然テルル(Sy・Te) 鹿児島県入来鉱山
平行ニコル
明るい白色〜クリーム色の微粒子。シルバニア鉱はこのような細かい粒子では単晶のことが多く,自然テルルと区別しにくい。ゴールドフィールド鉱(Gf)などのテルル鉱物,黄鉄鉱(Py)などと密に共生する。浅熱水成金銀鉱脈中。
Sy・Te:シルバニア鉱・自然テルル,Gf:ゴールドフィールド鉱,Py:黄鉄鉱,Qz:石英
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検鏡試料:微粒の黄鉄鉱を含む灰色緻密な石英質鉱石中の,灰色の金属光沢がある薄い縞状部分。



北海道手稲鉱山・鹿児島県入来鉱山におけるAu-Ag-Te系鉱物の共生関係の例
上の北海道手稲鉱山と鹿児島県入来鉱山の鉱石には,シルバニア鉱のほかに,写真には写っていないが,自然テルル・ステイツ鉱が含まれ,その鉱石中のAu-Ag-Te系鉱物の共生関係は上図の赤い領域で表される。このシルバニア鉱−自然テルル−ステイツ鉱の共生体は日本のテルル金銀鉱石の中では最も普通のものである。