ステイツ鉱  stutzite Ag7Te4 六方晶系  [戻る]

平滑な研磨面が得られる。わずかに緑色を帯びた灰色(これに対しヘッス鉱(hessite)は明らかに褐色を帯びた灰白色)。明瞭な反射多色性と強い異方性がある。浅熱水成金銀鉱脈中に自然テルル,シルバニア鉱,テルル鉛鉱,コロラド鉱,ゴールドフィールド鉱,黄鉄鉱,黄銅鉱などとともに細粒で見出される。
光学的性質と,自然テルル・シルバニア鉱と密接に共生することで同定は比較的容易。

自然金,自然銀,カラベラス鉱,クレンネル鉱,ペッツ鉱とは共生しない(右図)。

反射色/わずかに緑がかった灰色
反射多色性/明瞭(わずかに緑がかった明灰〜わずかに緑がかった暗灰)
異方性/強い
反射率(λ=590nm)/約35−38%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/75−90
内部反射/なし

Au-Ag-Te系鉱物の共生関係



ステイツ鉱(Stz)/北海道手稲鉱山
 平行ニコル
浅熱水成金銀鉱脈中。自然テルルやシルバニア鉱などの他のテルル鉱物と密に共生する。平行ニコル下で,明瞭な反射多色性を示すが,特徴のない灰色系で見落としやすい。クロスニコル下では右のように強い異方性を示すのでわかりやすい。
Stz:ステイツ鉱,Sy:シルバニア鉱,Te:自然テルル,Cp:黄銅鉱,Gf:ゴールドフィールド鉱,Qz:石英
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検鏡試料:石英質のテルル性金銀鉱石中の灰黒色部





左のステイツ鉱(Stz)の異方性(強い)クロスニコル
クロスニコルではこのように強い異方性を示すのでわかりやすい。ヘッス鉱(hessite)のような温度低下でできた相転移双晶によるモザイク状組織はない。また,ステイツ鉱はこのように自然テルルを密接に伴うことが多い。
Stz:ステイツ鉱,Sy:シルバニア鉱,Te:自然テルル,Cp:黄銅鉱,Gf:ゴールドフィールド鉱,Qz:石英


北海道手稲鉱山におけるAu-Ag-Te系鉱物の共生関係の例
上の北海道手稲鉱山の鉱石には,シルバニア鉱・自然テルル・ステイツ鉱が共生し,その共生関係は上図の赤い領域で表される。このシルバニア鉱−自然テルル−ステイツ鉱の共生体は日本のテルル金銀鉱石の中では最も普通のものである。