脆銀鉱 stephanite Ag5SbS4 斜方晶系  [戻る]

褐色を帯びた灰色。しばしば濃紅銀鉱(青灰色の反射色)と共生し,それとの色のコントラストで見出される。反射多色性は弱い。異方性は明瞭で,モザイク状組織が認められることもある。内部反射はない。やや錆びにくいが,時に光腐食が認められる。
Ag⇔Cu・Sb⇔Asなどの置換はあまりなく,硫塩基を構成していないS原子はSeで置換され,アグイラ鉱〜ナウマン鉱と共生するものは時にSe含有率が3〜4wt%達する。しかし,光学的性質にはあまり変化はない。
ほぼ浅熱水成金銀鉱脈に限って産し,濃紅銀鉱のほか,黄鉄鉱,方鉛鉱,閃亜鉛鉱,輝安銀鉱,輝銀鉱,自然金などにも伴う。ミアルジル鉱・輝安鉱・石黄・鶏冠石とは共生しない。銅に乏しい環境下でできるため,多量の黄銅鉱・四面銅鉱を伴うことはあまりなく,黒鉱鉱床にも産しない。
約200℃以上では脆銀鉱のかわりに輝銀鉱+濃紅銀鉱の組み合わせが安定といわれる。

反射色/帯褐灰色
反射多色性/弱い(あまり認められない)
異方性/明瞭
反射率(λ=590nm)/約30%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/50〜124
内部反射/なし



脆銀鉱(St) 秋田県院内鉱山/平行ニコル
帯褐灰色。反射多色性は弱く,あまり認められない。黄銅鉱のような銅鉱物はあまり伴わない。
St:脆銀鉱,Pyr:濃紅銀鉱,Py:黄鉄鉱,Qz:石英
----------------------------------
検鏡試料:0.数mm程度の濃紅銀鉱などの銀鉱物や方鉛鉱・黄鉄鉱が散在している石英質鉱石。



左の脆銀鉱(St)の異方性(明瞭)/クロスニコル
異方性は明瞭。
濃紅銀鉱には赤い内部反射が少し認められる。
St:脆銀鉱,Pyr:濃紅銀鉱,Py:黄鉄鉱,Qz:石英