褐錫鉱 stannoidite Cu8Fe3Sn2S12 斜方晶系  [戻る]

特徴的な褐色で,褐〜褐灰色に変化する明瞭な反射多色性がある。磁硫鉄鉱に似るが,それよりもわずかに暗く,褐味が濃く,研磨硬度は低い。斑銅鉱とは,それより少し橙味が弱く,反射多色性・異方性がはっきりしている。平滑な研磨面が得られる。やや錆びにくい。Feの一部はZnで置換されることがあるが,組成変化に乏しく,光学的にも変化は少ない。
錫を伴う熱水鉱脈中に,不定形粒状,縞状などをなし,黄銅鉱,黄錫鉱,モースン鉱,四面銅鉱,閃亜鉛鉱,硫砒鉄鉱,錫石,石英などとともにしばしば見出される。褐錫鉱などの銅錫硫化物は,酸素欠乏条件で生成し,酸素が多い条件ではその代わりに黄銅鉱(斑銅鉱)+錫石の組み合わせが生成する。

反射色/褐〜褐灰色
反射多色性/明瞭(褐〜褐灰色)
異方性/強い
反射率(λ=590nm)/25〜28%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/232−271
内部反射/なし



褐錫鉱(Std)の反射多色性 兵庫県生野鉱山金香瀬鉱床
平行ニコル
中温の熱水鉱脈鉱床中。反射多色性は明瞭で褐〜褐灰色に変化する(左写真の「Std」の文字付近の異なる粒子の粒界で色が異なっている)。
Std:褐錫鉱,Kes:亜鉛黄錫鉱,Cp:黄銅鉱,Qz:石英

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検鏡試料:石英質の鉱石に伴う,黄銅鉱・褐錫鉱が密集した層状部分(上部)。



左の褐錫鉱(Std)の異方性(強い)/
クロスニコル
異方性は強く,写真のように異なる粒子の集合体ではそのコントラストでよく分かる。
Std:褐錫鉱,Kes:亜鉛黄錫鉱,Cp:黄銅鉱,Qz:石英



斑銅鉱(Bn)と共生する褐錫鉱(Std) 広島県瀬戸田鉱山平行ニコル
中温の熱水鉱脈鉱床中。褐錫鉱は斑銅鉱としばしば共生して色が似ているが橙色味がやや弱い。また反射多色性・異方性でも区別可能。
Std:褐錫鉱,Bn:斑銅鉱,Cp:黄銅鉱
斑銅鉱中の青い部分はコベリン(風化物)。