黄錫鉱 stannite Cu2FeSnS4 正方晶系  [戻る]
ホカルタイトのAg→Cu置換体

帯オリーブ灰色(黄緑色を帯びた褐灰色)で,一見,Znに富む四面銅鉱と似ているが,普通程度の反射多色性(黄緑を帯びた褐灰色〜黄灰色)と明瞭な異方性がある。平滑な研磨面が得られ,時に虹色などに錆びる。不定形粒状で自形は希。しばしば異方性の観察で集片状双晶が見られる(下の右写真)。Feのかわりに少量のZnが含まれることがあるが,一般に組成変化に乏しい。
気成鉱脈に鉄マンガン重石,錫石,黄銅鉱,硫砒鉄鉱などとともに粗粒をなすことがある。また,錫を伴う熱水鉱脈中に,黄銅鉱,閃亜鉛鉱,硫砒鉄鉱,褐錫鉱,モースン鉱,錫石,石英などとともに微粒や縞状(累被状)などをなして見出される。
なお,この黄錫鉱や褐錫鉱などの銅錫硫化物は,酸素欠乏条件で生成し,酸素が多い条件ではその代わりに黄銅鉱(斑銅鉱)+錫石の組み合わせが生成する。

反射色/帯オリーブ灰色(黄緑色を帯びた褐灰色)
反射多色性/普通(黄緑を帯びた褐灰色〜黄灰色)
異方性/明瞭
反射率(λ=590nm)/28〜30%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/140〜326
内部反射/なし



黄錫鉱(St) ボリビア ポトシ
平行ニコル
中温の熱水鉱脈鉱床中。オリーブ色。反射多色性は普通で,注意しないと認められない。
St:黄錫鉱,Py:黄鉄鉱


左の黄錫鉱(St)の異方性/クロスニコル
異方性は明瞭で,異なる粒子が集合している場合や,このように双晶(集片双晶)をなしている場合はコントラストでよくわかる。
St:黄錫鉱,Py:黄鉄鉱



黄錫鉱(St) 
北海道豊羽鉱山/平行ニコル
中温の熱水鉱脈鉱床中。明るさは閃亜鉛鉱よりもやや明るい程度で,明らかにオリーブ色を帯びる。熱水鉱床中では黄錫鉱はこのように不定形の微粒子で閃亜鉛鉱・黄鉄鉱などと組み合って見られることが多い。
なお,このように錫鉱物を伴う熱水鉱脈中の閃亜鉛鉱は時に0.数%以下のインジウムを含むことがある。豊羽鉱山は国内最大のインジウムの産出があった。
St:黄錫鉱,Sp:閃亜鉛鉱,Py:黄鉄鉱,Qz:石英

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検鏡試料:左側が主に黄鉄鉱・右側が主に閃亜鉛鉱の両者の境部分