自然銀  silver Ag 等軸晶系  [戻る]
自然銅・自然金と同構造

非常に明るく,可視光領域の光の反射率はすべての物質で最高。本来,純白色だが光源の色でクリーム色に見えることが多い。硬度が低く,研磨時の擦痕がよく見られることは自然金同様。錆びやすく,青色や褐色などになる。。
金をほとんど含まない自然銀はメキシコ,ボリビア,ペルー,カナダ,ノルウェー,ドイツ,チェコ,モロッコなどの大規模な銀鉱床で初生鉱物として多産し,自然金とは異なり,方解石などの炭酸塩鉱物と密接に共生することが多い。なお,他の銀鉱物が分解してできた二次鉱物としても生成することがあり,その場合,箔〜小板状(断面では細長い紐状に見える)をなすことが多い。
固溶成分としては,Au・Sb・Hgがある。Sb・Hgを多く固溶する自然銀は国内ではまれで,カナダ・チェコ・モロッコなどではしばしば産する。Sbを数%含むと反射色は黄味がかり,特に錆びやすい。Sbを約1割以上含むものは自然銀とは異なる別の相(allargentumやdyscrasite)で,反射色は明らかに褐色を帯びる(下右写真)。

反射色/クリーム白(金を含むにつれ,黄色を帯びる)
反射多色性/なし
異方性/なし
反射率(λ=590nm)/97%(純銀。すべての物質中で最高)
ビッカース硬度(kgf/mm2)/46−118
内部反射/なし



自然銀(Ag) 兵庫県旭日鉱山平行ニコル
これは金を含まない自然銀。自然銀は本来,純白色だが,光源の色でクリーム色に見える。すべての物質中で可視光領域の光に対し最高の反射率を持ち,非常に明るい。コントラストのため,近くの硫化鉱物(アグイラ鉱 Ai)は暗く沈んで見える。
これは浅熱水成金銀鉱脈中の初生鉱物としての自然銀。
Ag:自然銀,Ai:アグイラ鉱,Qz:石英


自然銀(Ag) 兵庫県多田鉱山/平行ニコル
熱水鉱脈鉱床中のストロメイヤ鉱(CuAgS)の分解で二次的に生成した自然銀。方解石中に小さな板状をなし,その断面が紐状に見えている。
Ag:自然銀,Gn:方鉛鉱,Cu-S:輝銅鉱類似のCu-S系鉱物,Cal:方解石


自然銀(Ag) 兵庫県旭日鉱山/
平行ニコル
浅熱水成金銀鉱脈中の初成鉱物としての自然銀。これはSbを約3%含み,やや黄味を帯びる。allargentumの淡褐色の離溶ラメラ(Ar)を伴う。このようなSbを含む自然銀やallargentumは主にカナダやチェコなどで産し,日本では希。通常の浅熱水成金銀鉱脈よりも硫黄に乏しい条件下でできる。
Ag:自然銀,Ar:allargentum,Po:磁硫鉄鉱(単斜磁硫鉄鉱),Py:黄鉄鉱,Cp:黄銅鉱,Cal+Qz:方解石+石英
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検鏡試料:クリーム色〜白色緻密な方解石・苦灰石・石英を主とし,黄鉄鉱・磁硫鉄鉱集合部が散点状に見られる銀鉱石