灰重石 scheelite CaWO4 正方晶系  [戻る]

反射色は灰色で反射率が低く,珪酸塩鉱物と紛らわしく,見落としやすい。反射多色性は弱く,異方性は普通だが,内部反射(クリーム色)が著しいため認めにくい。
顕微鏡下で視野に収まりきらない粗粒なものも多い。1方向(C軸)にやや伸びた8面体の自形〜半自形のことが多く,比較的小粒のものはその断面が丸みを帯びた多角形に見える。あるい丸っこい粒状のこともある。Wの代わりに若干のMoを固溶することがある。なお,原子比でMo>Wのものはパウエル石(powellite)という。しかしパウエル石は初生鉱物としてよりも輝水鉛鉱の二次的な分解物として産することが多い。
チタン鉄鉱系花こう岩の活動に伴い形成されたスカルン鉱床によく見られ,黄銅鉱,硫砒鉄鉱,磁硫鉄鉱,自然ビスマス,灰鉄輝石,灰ばんざくろ石−灰鉄ざくろ石固溶体,珪灰石,石英などと共に見られる。また中〜高温の熱水鉱脈,気成鉱床にもしばしば産し,時に鉄マンガン重石と共生したり,それを交代してその短冊状の仮晶をなすこともある。
250nm程度の波長(短波長)の紫外線で青白く発光し,著量のMoを含むものは黄緑〜黄色に発光する。

反射色/灰色
反射多色性/弱い(ほとんど認められない)
異方性/普通(内部反射のため認めにくい)
反射率(λ=590nm)/約10%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/285〜464
内部反射/白〜クリーム色,灰白色で著しい



灰重石(Sch) 
山口県玖珂鉱山/平行ニコル
スカルン鉱床中。反射率は低く,脈石よりもやや明るい程度。反射多色性は弱く,ほとんど認められない。このように丸みを帯びた多角形〜粒状(自形〜半自形)を示す場合が多い。
Sch:灰重石,Po:磁硫鉄鉱,Hd:灰鉄輝石,Cal:方解石
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検鏡試料:少量の黄銅鉱・磁硫鉄鉱を伴う暗緑色の灰鉄輝石スカルン



左の灰重石(Sch)の内部反射/
クロスニコル
著しい白〜淡黄色の内部反射がある。普通程度の異方性があるが内部反射で認めにくい。内部反射により浮き上がって見える(屈折率が高い)。
Sch:灰重石,Po:磁硫鉄鉱,Hd:灰鉄輝石,Cal:方解石

 

 



灰重石(Sch) 
兵庫県明延鉱山
熱水鉱脈中。板状(左やや上方〜右やや下方に伸びる)の鉄重石を交代して仮晶をなすもの。Wfで示した部分は残存している鉄重石。鉄重石を交代した灰重石は平行ニコル下では石英(Qz)よりも明るく,錫石(Cas)よりもやや暗い。クロスニコル下では淡灰色の内部反射が著しく,その中に残存している鉄重石が黒く見えている。なお,錫石は褐色の内部反射を示している。
この場合とは逆に,灰重石を鉄重石が交代していることもある。
Sch:灰重石,Wf:鉄重石,Cas:錫石,Cp:黄銅鉱,Qz:石英
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検鏡試料:中温の熱水性銅−錫−タングステン石英脈