ルチル(金紅石) rutile TiO2 正方晶系  [戻る]

反射色は灰色や帯青灰色。褐色〜黄色の内部反射が著しい。反射多色性は普通で異方性は強いが,いずれも内部反射により認めにくいこともある。特に微粒子のものは灰黄色の内部反射が著しく,異方性はわかりにくい。Ti4+の代わりに多少のNb5+やTa5+を含むことで,過剰な電子が出て,それが酸素原子の空孔に入って黒色となっていることも多く,このようなものはペグマタイトなどに産する。なお,固溶成分がなくとも酸素原子が欠損し,その部分に電子が複数捕捉されて光の吸収が起こり,ほとんど黒色不透明になり内部反射が弱いこともある。他に少量のFeなどを含むこともあるがこれによる光学的性質の変化はあまりない。硬度が高く,平滑な研磨面を得るには時間がかかる。
通常の金属鉱床での産出は少ない。結晶片岩やエクロジャイトなどに副成分鉱物としてチタン鉄鉱,くさび石などと共に見られ,特に苦鉄質岩から変成してできた緑色片岩や青色片岩,角閃石片岩によく見られる。深成岩に見られる場合,チタン鉄鉱の周囲を二次的な微粒集合体の変質物として取り巻いていることが多い。また,ろう石や珪化岩中に高温の熱水変質鉱物として微粒状で見られることがあり,これは熱水に対して難溶性の岩石中のTiが,Al・Siなどとともに残留したものである。この場合,同じTiO2の多形鉱物である板チタン石(ブルッカイト)・鋭錐石(アナターゼ)などと一緒に見られることがあり,それらとは光学的には区別できないことが多いが,時に鋭錐石は青色のことがあり,この場合,鋭錐石とは区別できる。

反射色/灰色,帯青灰色
反射多色性/普通(内部反射で認めがたいことがある)
異方性/強い(内部反射で認めがたいこともある)
反射率(λ=590nm)/15〜20%(Nb・Taを含むものや,酸素原子が欠損したものは黒色不透明に近く,反射率はやや高い)
ビッカース硬度(kgf/mm2)/933〜1280程度
内部反射/黄〜褐色。Nb・Taを含むものや,酸素原子が欠損したものは黒色不透明に近く,内部反射は弱い



ルチル(Rt) 愛媛県肉渕平行ニコル
エクロジャイト中。反射多色性は普通で注意しないと分からない。内部反射でややわかりにくいこともある。
Rt:ルチル,Cpx:透輝石-灰鉄輝石系の単斜輝石


左のルチル(Rt)の異方性(強い)と内部反射 愛媛県肉渕
クロスニコル

異方性は強いが,内部反射でややわかりにくい。
Rt:ルチル,Cpx:透輝石-灰鉄輝石系の単斜輝石



ルチル(Rt) 愛媛県東赤石山
エクロジャイト中。褐色の内部反射を示すもの。内部反射を示さない粒状・板状のチタン鉄鉱(Im)を伴う。
Rt:ルチル,Im:チタン鉄鉱,Cpx:透輝石-灰鉄輝石系の単斜輝石




酸性の熱水による変質岩中の二酸化チタン鉱物(TiO2) 山口県阿川鉱山左:平行ニコル,右:クロスニコル
ろう石など,酸性でやや高温の熱水による変質岩中に変質鉱物として微粒状で見られる二酸化チタンの鉱物。これは熱水に対して難溶性の岩石中のTiがAl・Siなどとともに残留したもの。研磨硬度が高く,クロスニコルでは黄褐色〜褐色の内部反射が著しい。
この場合の二酸化チタン鉱物はルチル・板チタン石・鋭錐石のいずれかで,それら相互の区別は光学的には困難。
TiO2:ルチル・板チタン石・鋭錐石のいずれかの二酸化チタン鉱物,Qz+Clay:石英+粘土鉱物
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検鏡試料:白色のケイ化岩で,わずかに黄銅鉱と輝水鉛鉱が鉱染している