インジウム銅鉱 roquesite CuInS2 正方晶系  [戻る]
黄銅鉱のFe→In置換体

特徴のない灰色。正方晶系でありながら光学的には等方体。閃亜鉛鉱よりやや明るく研磨硬度はやや低い。四面銅鉱よりもやや暗く研磨硬度は同程度。平滑な研磨面が得られる。錆びにくい。不定形粒状で自形のことはほとんどない。組成変化はあまりない。
基本的な原子配列が同じ閃亜鉛鉱と平行連晶することがあり,その場合,閃亜鉛鉱中に多数の粒状で点在する(病変状黄銅鉱の,黄銅鉱のかわりにインジウム銅鉱が入ったもの)。なお,1μm以下のオーダーでの非常にきめ細かい平行連晶もあり,それは閃亜鉛鉱よりわずかに明るく黄みを帯び,閃亜鉛鉱中にもやもやとした縞状で見られる(その縞はあたかも均一相のように見える)。
錫を伴う熱水鉱脈中に,黄銅鉱,斑銅鉱,閃亜鉛鉱,磁鉄鉱,錫石,亜鉛黄錫鉱,硫砒鉄鉱,黄鉄鉱,石英などとともにしばしば見出され,共生する閃亜鉛鉱は0.数%のインジウム・銅を含む(インジウム銅鉱成分のごくわずかな固溶がある)。

反射色/灰色(閃亜鉛鉱よりわずかに明るく,四面銅鉱より暗い)。
反射多色性/なし
異方性/なし
反射率(λ=590nm)/22〜23%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/241
内部反射/なし



インジウム銅鉱(Rq) 兵庫県明延鉱山
平行ニコル
中温の熱水鉱脈鉱床中。明るさは閃亜鉛鉱(Sp)よりも少し明るい。特徴のない灰色で四面銅鉱に似るがそれより少し暗い。錫を伴う熱水鉱床にしばしば見いだされ,右の様に錫石(Cas)を伴うこともある。
この閃亜鉛鉱のインジウム銅鉱成分の固溶量は0.数%程度で,インジウム銅鉱にもZnはほとんど含まれていない。
Rq:インジウム銅鉱,Bn:斑銅鉱,Cp:黄銅鉱,Sp:閃亜鉛鉱,Cas:錫石,Qz:石英
左写真の青いものは二次的にできたコベリン
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検鏡試料:石英質で斑銅鉱・錫石・磁鉄鉱などが散点する鉱石。


インジウム銅鉱(Rq) 兵庫県明延鉱山平行ニコル
インジウム銅鉱は黄銅鉱同様,基本的な原子配列が閃亜鉛鉱と同じであるため,閃亜鉛鉱と平行連晶組織をなすことがある。上写真では閃亜鉛鉱(Sp)中に,それより少し明るいインジウム銅鉱が平行連晶により微小な粒で多数包有されている。
Rq:インジウム銅鉱,Sp:閃亜鉛鉱,Bn:斑銅鉱


インジウム銅鉱(Rq)/北海道豊羽鉱山
 
平行ニコル
中温の錫を伴う熱水鉱脈鉱床。これは閃亜鉛鉱(Sp)中に累層状(縞状)組織をなすもの。視野の大部分が閃亜鉛鉱(一部はウルツ鉱)からなるが,その中にわずかに明るく黄みを帯びた超顕微鏡的なインジウム銅鉱と閃亜鉛鉱の平行連晶からなる複雑な曲線状の縞が見られる。インジウム銅鉱は閃亜鉛鉱と基本的な原子配列が同じであるため,時にサブミクロンオーダー(0.001mmよりも細かいオーダー)で閃亜鉛鉱と平行連晶をなし,「機械的混合物」となる。その縞はインジウム銅鉱と閃亜鉛鉱の量の割合で漸移的に明色〜暗色に変化し,上のように微妙に明るさが異なるモヤモヤとした累層状になる(上写真の縞の中でやや明るめの部分はインジウム銅鉱の存在割合が多く,やや暗めの部分は閃亜鉛鉱の存在割合が多い)。
※これは上右写真の兵庫県明延鉱山のものよりもさらに細かい平行連晶組織で,熱水から急激に沈殿してできたものものである。なお,縞の部分以外の閃亜鉛鉱には0.2%程度のCuとInが含まれる。
Rq:インジウム銅鉱,Sp:閃亜鉛鉱,Py:黄鉄鉱