輝安銀鉱 polybasite (Ag,Cu)16(Sb,As)2S11 単斜晶系  [戻る]

わずかに緑色を帯びた灰色。細粒のものは時に深紅の内部反射が認められる。やや錆びにくいが,時に光腐食が著しく,観察直後に1μm程度の細かい暗灰色の斑点が散点状にできはじめ,数分程度でその斑点の数は数倍に増える。1時間も経つと全体がざらざらに荒れたような面となることもある。しかし個々の斑点の大きさは数μm以下であまり大きくはならない。
浅熱水性金銀鉱脈に産し,黄鉄鉱,方鉛鉱,閃亜鉛鉱,輝銀鉱,自然金などに伴い,時に濃紅銀鉱,アグイラ鉱,黄銅鉱にも伴うが,多量の黄銅鉱や四面銅鉱系鉱物などの銅鉱物を伴う場合はピアース鉱のことが多い。輝安鉱・石黄・鶏冠石とは共生しない。
色は輝銀鉱と似るが,わずかに緑味が弱く,研磨硬度がやや高く,良好な研磨面が得られ,かつ,普通程度の異方性があること,時に暗赤色の内部反射があることで区別できる。Sb⇔Asの置換は広く起こりうる。また,硫塩基を構成していないS原子はSeで置換され,アグイラ鉱〜ナウマン鉱と共生する場合,Se含有率は約10wt%に達する。これらの置換による光学的性質の変化はほとんど無い。一方,Ag⇔Cuの置換も起こり,不連続的にCuが多くなった六方晶系のものはピアース鉱系列の鉱物である。ピアース鉱系列の鉱物は内部反射はほとんど認められず,異方性は明瞭で,銅に富む浅熱水成金銀鉱脈のほか,黒鉱鉱床に広く産し,黄銅鉱や四面銅鉱系鉱物などの銅鉱物とよく共生する。

反射色/わずかに緑色を帯びた灰色
反射多色性/非常に弱い(ほとんど認められない)
異方性/普通
反射率(λ=590nm)/30〜35%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/131〜139
内部反射/暗赤色。粗粒なものは認められないことも多いが,石英中の数μm程度の細粒のものは認められることが多い。



輝安銀鉱 兵庫県生野鉱山平行ニコル
浅熱水鉱脈鉱床中の0.2mmに達する大粒のもの。わずかに緑色を帯びた灰色。反射多色性は非常に弱く,ほとんど認められない。
暗灰色部は石英。


左の輝安銀鉱の異方性(普通)/クロスニコル
結晶方位が異なる粒子とのコントラストで異方性がわかる。これははっきりと異方性がわかるもので通常はこれほどはっきりしない。


輝安銀鉱(Ply)の内部反射(右) 鹿児島県菱刈鉱山 山田鉱床
クロスニコル

石英中の数μm程度の小粒のものはこのように暗赤色の内部反射が見られる。よく似たピアース鉱(多量の銅鉱物と共生する)は内部反射がない。浅熱水鉱脈鉱床中。
Ply:輝安銀鉱,Qz:石英