パボン鉱 pavonite AgBi3S5 単斜晶系  [戻る]

明るさ・反射色は方鉛鉱に似た白色で,反射多色性は弱いが異方性は明瞭〜強い。異方性でモザイク状構造が観察されることがある。やや錆びにくい。中温〜高温の熱水鉱脈に微量ながら広く産し,黄銅鉱・自然ビスマス・輝蒼鉛鉱・生野鉱・ベンジャミン鉱・硫砒鉄鉱・褐錫鉱・自然金・錫石などに伴う。他のAg-Bi-S系鉱物(ベンジャミン鉱 benjaminite Ag3Bi7S12,マチルダ鉱 matildite AgBiS2)とは光学的に区別困難だが,輝蒼鉛鉱に密接に伴うものはパボン鉱の可能性が高い(右図)。なお,マチルダ鉱は方鉛鉱に伴う傾向がある。
S⇔Seの置換が起こるが,光学的性質はあまり変化しない。

なお,ガレノビスムシナイトのようなPb-Bi-S系鉱物とも光学的には区別困難である。


主なAg-Pb-Bi-S系鉱物(左の辺がAg-Bi-S系鉱物)



反射色/白
反射多色性/弱い(ほとんど認められない)
異方性/明瞭〜強い
反射率(λ=590nm)/約40%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/70〜100程度
内部反射/なし



パボン鉱(Pv) 兵庫県生野鉱山金香瀬鉱床/平行ニコル
中温の熱水鉱脈中。白色。反射多色性は弱く,ほとんど認められない。マチルダ鉱・ベンジャミン鉱・パボン鉱の相互の区別は光学的には困難。それよりもパボン鉱はこのように自然ビスマス(Bi)や輝蒼鉛鉱(Bis)を密接に伴う傾向がある。
写真のものはSの代わりにややSeを含む。
Pv:パボン鉱,Bi:自然ビスマス,Ik:生野鉱,Cp:黄銅鉱,Sp:閃亜鉛鉱,Qz:石英

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検鏡試料:乳白色緻密な石英質の鉱石の黒色部。



左のパボン鉱(Pv)の異方性(強い)/クロスニコル
異方性は明瞭〜強い(輝蒼鉛鉱よりは弱い)。
Pv:パボン鉱,Bi:自然ビスマス,Ik:生野鉱,Cp:黄銅鉱,Sp:閃亜鉛鉱,Qz:石英