ナウマン鉱(セレン銀鉱) naumannite Ag2Se 斜方晶系  [戻る]
アグイラ鉱のS→Se置換体


灰色。軟らかいが荒れた研磨面になるほどではない。反射色に緑味がないこと,平滑な研磨面が得られること,普通程度の異方性があることで,輝銀鉱やSeのやや少ないアグイラ鉱と区別できる。むしろ,輝安銀鉱やピアース鉱との区別が難しい(輝安銀鉱は時に暗紅色の内部反射を示す)。輝銀鉱とは共生しない。やや錆びにくい。
浅熱水成金銀鉱脈中に自然金(エレクトラム),濃紅銀鉱,輝安銀鉱,銀四面銅鉱,黄鉄鉱,黄銅鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱などとともに見出される。しかし,Sをほとんど含まないAg2Seの端成分に近いものは,硫化鉱物(黄鉄鉱,黄銅鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱など/H2Sの高濃度条件下で沈殿する)をわずかしか伴わないことがある。これは地表にかなり近い浅熱水成金銀鉱脈を形成する,かなりO2の活動度の高い酸化的な熱水において,H2Sは少なくなるが(H2SがHSO4-やSO42-に変化する),H2SeはH2Sよりも酸化されにくいため,H2Sよりも相対的にH2Seが卓越するようになり,それにより銀がナウマン鉱として沈殿するためと考えられる。

反射色/灰色
反射多色性/非常に弱い(ほとんど認められない)
異方性/普通
反射率(λ=590nm)/35%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/27−56
内部反射/なし



ナウマン鉱(Nm)北海道歌登鉱山/
平行ニコル
灰色。反射多色性はほとんど認められない。浅熱水成金銀鉱脈中。
Nm:ナウマン鉱,Qz:石英


左のナウマン鉱の異方性(普通)
 クロスニコル

異方性は普通程度で,注意しないと分からない。
Nm:ナウマン鉱,Qz:石英



ナウマン鉱 鹿児島県菱刈鉱山平行ニコル
浅熱水成金銀鉱脈中。黄銅鉱など多量の硫化鉱物を伴うもの。ややSを多く含み,原子比でSe:S=3:1程度でアグイラ鉱との中間組成のもの。
----------------------
検鏡試料:緻密な氷長石・石英を主とする金銀鉱石中の幅2mm程度の銀黒部分





ナウマン鉱(灰白色斑点部) 北海道歌登鉱山
平行ニコル
浅熱水成金銀鉱脈中。あまり硫化鉱物を伴わないもの。Sをあまり含まない端成分に近いナウマン鉱ばかりが密集して銀黒をなす。他に微量の自然金を伴う。左のような多量の硫化鉱物を伴うものよりも酸化的な熱水からできたものと考えられる。
周囲は結晶度の低い石英。

----------------------------------
検鏡試料:緻密な縞状の石英中の斑点状の銀黒部分