ルソン銅鉱 luzonite Cu3(As,Sb)S4 正方晶系  [戻る]

自形はほとんど無く不定形。反射多色性で橙桃色〜紅灰色。硫砒銅鉱とは異なり,Asの代わりに著量のSbを固溶することがあり,その量が増えると安ルソン銅鉱(stibioluzonite)になる。Sbの増加とともに橙色味は弱まる。それらのAsやSbは5+で存在し,硫塩鉱物の3+とは異なる。明瞭な異方性によりモザイク状構造や単純な双晶〜集片双晶がよく見られる。平滑な研磨面が得られる。やや錆びにくいが,時に褐色や青色に錆びる。
硫黄分の多い熱水から生成した金銅鉱床(南薩型金鉱床など)に硫砒銅鉱・黄鉄鉱・コベリン・自然金(Agに乏しい橙黄色のもの)・スコロド石などとともによく見られる。それ以外ではまれに黒鉱鉱床に見出される程度で硫砒銅鉱とともに産状は限られている。

反射色/橙桃色〜紅灰色。Asの代わりに著量のSbを固溶することがあり,その量が増えると橙色味は弱まる。
反射多色性/明瞭(橙桃〜紫灰色。Sbの多いものは桃〜紫灰色)。
異方性/明瞭
反射率(λ=590nm)/25〜30%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/205〜397
内部反射/なし



ルソン銅鉱の反射多色性(明瞭) 北海道手稲鉱山平行ニコル
視野全体。これは硫黄分の多い熱水から生成した鉱脈鉱床中のもので,AsとSbが相半ばするもので安ルソン銅鉱との中間体。下の鹿児島県赤石鉱山のAs>>Sbのものに比べ,橙色味が乏しい。反射多色性は明瞭(桃〜紫灰色)で,注意すると双晶境界でのコントラストにより認められる(→この視野は右の異方性の視野と同じ)。


左のルソン銅鉱の異方性(明瞭)/
クロスニコル

直線的な境界によるコントラストで,交差する反復双晶がはっきり認められる。


ルソン銅鉱(lz)の反射多色性(明瞭) 鹿児島県赤石鉱山平行ニコル
これは硫黄分の多い熱水から生成した金銅鉱床(南薩型金鉱床)中のもので,As>>Sbのもの。特徴的な橙桃色を示し,反射多色性は明瞭で,注意すると,部分により橙桃色(右側)や紅灰色(左上)に見える。
lz:ルソン銅鉱,Au:自然金(Agに乏しい),Py:黄鉄鉱,Cv:コベリン,Sco:スコロド石,Qz:石英
--------------------------
検鏡試料(暗色部)


左のルソン銅鉱(lz)の異方性(明瞭)/
クロスニコル

「lz」の文字付近にある直線的な境界でのコントラストで双晶をなしているのが分かる。
lz:ルソン銅鉱,Sco:スコロド石,Qz:石英