チタン鉄鉱 ilmenite FeTiO3  六方晶系  [戻る]
赤鉄鉱の2Fe3+ → Fe2+・Ti4+置換体

反射色は褐灰色〜灰褐色,反射多色性は明瞭。異方性は強い。硬度が高く,平滑な研磨面を得るには時間がかかる。Fe⇔Mg・Mnの組成変化がある。なお,MgTiO3のものはゲーキアイト,MnTiO3のものはパイロファナイトという。ゲーキアイトはキンバレー岩やドロマイトスカルンに産し,褐色の内部反射が見られる。パイロファナイトは接触変成作用を受けたマンガン鉱床のバラ輝石などに伴い,深紅の内部反射が見られる。いずれもコランダムと同構造で,自形は6角板状で,その断面は短冊状。そのほか,他形粒状のこともある。
割れ目や周囲がルチルやアナターゼなどのTiO2組成の鉱物(平行ニコル下では反射率が低く,クロスニコル下では黄色〜淡褐色の内部反射が著しい)に変質していることもある。
火成岩や変成岩中にも副成分鉱物として磁鉄鉱などとともによく見られる。また,カナダなど大陸地域の苦鉄質深成岩体中の正マグマ鉱床からは層状で多産し,それは最も重要なチタン資源である。

反射色/褐灰色〜灰褐色
反射多色性/明瞭(褐灰色〜灰褐色)
異方性/強い
反射率(λ=590nm)/約20%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/500〜800程度(Mgの多いものは硬い)
内部反射/時に認められ,暗褐色(Mg富むもの),真紅(Mnに富むもの)。



チタン鉄鉱(Im)の反射多色性(明瞭) 愛媛県肉渕平行ニコル
エクロジャイト中のもの。結晶方位の異なる板状結晶が集合し,そのコントラストではっきりと反射多色性がわかる。
Im:チタン鉄鉱,Cpx:透輝石-灰鉄輝石系の単斜輝石


左のチタン鉄鉱の異方性(強い)/クロスニコル

結晶方位の異なる板状結晶が集合し,そのコントラストではっきり異方性がわかる。



閃緑岩中の磁鉄鉱(Mt) 鳥取県大倉山平行ニコル
磁鉄鉱とともに副成分鉱物として粒状で含まれるもの。磁鉄鉱と反射色は似るが,磁鉄鉱は等方体で,チタン鉄鉱は反射多色性は明瞭で,異方性も強く,区別は容易。
花こう岩・閃緑岩・はんれい岩中にはこのような0.1〜0.5mm程度の粒状の磁鉄鉱やチタン鉄鉱が含まれることが多い。
Im:チタン鉄鉱,Mt:磁鉄鉱


角閃石片岩に含まれる赤鉄鉱(Hm:明灰)中のチタン鉄鉱(暗灰)の離溶組織 愛媛県肉淵平行ニコル
約500℃でできた三波川変成帯の角閃石片岩中のもの。視野の中央〜右を占める赤鉄鉱中に,細かい紐状に見えるチタン鉄鉱のやや暗色の離溶ラメラが無数にある((0001)の1方向に並ぶ)。
一方,視野の左や上にある離溶ラメラではない大きなチタン鉄鉱(Im)には赤鉄鉱の離溶ラメラを含んでおらず,この生成温度ではチタン鉄鉱にはFe3+が固溶しなかったことがわかる。
このことから赤鉄鉱(Fe2O3)−チタン鉄鉱(FeTiO3)の固溶系列には非対称ソルバスが存在することが考えられる。
Hm:赤鉄鉱,Im:チタン鉄鉱