生野鉱 ikunolite Bi4S3 六方晶系  [戻る]
ライタカリ鉱のSe→S置換体
ホセ鉱のTe→S置換体


平滑な研磨面が得られる。不定形のほか,時に板状結晶の断面の短冊状をなす。明るい白で,他の六方晶系の層状ビスマスカルコゲン化合物(ホセ鉱,ライタカリ鉱,ヘドレイ鉱,都茂鉱,硫テルル蒼鉛鉱,テルル蒼鉛鉱など)とは光学的には識別困難。自然ビスマスと密接に共生することが多く,その周りを取り巻く反応縁をなすことも多い。一方,硫テルル蒼鉛鉱,テルル蒼鉛鉱は自然ビスマスとは共生しないので,共生鉱物からはある程度,同定できる。時に褐色に錆びる。
Sの代わりに少量〜著量のSe,Teを含むことが多く,それによる光学的性質の変化はあまりない。
中温〜高温熱水鉱脈,スカルン鉱床などから自然ビスマス,輝蒼鉛鉱,パボン鉱,マチルダ鉱,黄銅鉱,褐錫鉱,硫砒鉄鉱,鉄マンガン重石などとともにしばしば見出される。

反射色/白
反射多色性/弱い(ほとんど認められない)
異方性/明瞭
反射率(λ=590nm)/約50%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/30〜90
内部反射/なし



生野鉱(Ik) 兵庫県生野鉱山/平行ニコル
反射多色性は弱く,あまり認められない(輝蒼鉛鉱は強い)。
本来,生野鉱の反射色は白いが,このように自然ビスマスと共生する場合,自然ビスマスの明るさによるコントラストでやや灰色がかって見える。
Ik:生野鉱,Bis:輝蒼鉛鉱,Bi:自然ビスマス,Cp:黄銅鉱


左の生野鉱(Ik)の異方性(明瞭)/クロスニコル
異方性は輝蒼鉛鉱(Bis)に比べてはるかに弱いが,明瞭に認められる。
Ik:生野鉱,Bis:輝蒼鉛鉱,Bi:自然ビスマス,Cp:黄銅鉱



生野鉱(Ik) 兵庫県生野鉱山平行ニコル
直径5mmに達する自然ビスマス粒子の周囲の部分写真。
自然ビスマス(Bi)の周りに厚さ0.05〜0.1mm程度の生野鉱(Ik)が見られ,さらにその外側(左上)を輝蒼鉛鉱(Bis)が取り巻いている。生野鉱のほかに,ライタカリ鉱やホセ鉱,ヘドレイ鉱もしばしばこのように自然ビスマスを取り巻く。これは熱水から溶融体として沈殿した液滴状の自然ビスマスが熱水のカルコゲン元素(S,Se,Te)と反応してできた反応縁である。
なお,生野鉱は輝蒼鉛鉱よりやや明るく,平滑な研磨面が得られる。研磨硬度は輝蒼鉛鉱と自然ビスマスの中間である(線状の傷の入り方に注意)。
Ik:生野鉱,Bis:輝蒼鉛鉱,Bi:自然ビスマス,Qz:石英
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検鏡試料:緻密な石英中の粒状の自然ビスマス(矢印先)の縁辺部。