ヘッス鉱 hessite Ag2Te 単斜晶系  [戻る]

褐灰白色。軟らかいが著しく荒れた研磨面になるほどではない。輝銀鉱やSeの少ないアグイラ鉱は反射色に緑味があり荒れた研磨面になること,ナウマン鉱は褐味がないことで区別できる。反射多色性は弱いが,異方性は普通で,高温相(等軸晶系)からの相転移によるモザイク状の双晶が生じているのが観察される(転移温度は1atmで155℃)。やや錆びにくい。 しばしば1〜2wt%程度のAuを含む(Agを置換)。それ以外の組成変化はほとんどない。
浅熱水成金銀鉱脈中に自然金,ペッツ鉱,黄鉄鉱,黄銅鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱などとともに見出され,特に,明るさが同じくらいの方鉛鉱と密接する場合,平行ニコルの観察だけでは見逃しやすい。なお,ヘッス鉱のTeは他の金銀テルル鉱物とは異なり,すべて−2価であり,多量の硫化鉱物が沈殿するようなかなり還元的な条件でできる。したがって浅熱水成金銀鉱脈以外にも,スカルン鉱床や銅鉱脈などにも数〜10μm程度の微粒子で,斑銅鉱,黄銅鉱,方鉛鉱などの硫化鉱物に付随して微量ながらしばしば見いだされる。

自然テルル,カラベラス鉱,クレンネル鉱とは共生しない(右図)。

反射色/褐灰白色
反射多色性/弱い(ほとんど認められない)
異方性/普通(高温相からの相転移でモザイク状の双晶が生じているのが観察される)
反射率(λ=590nm)/約40%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/28−44
内部反射/なし

        Au-Ag-Te系鉱物の共生関係




ヘッス鉱(Hs) 北海道手稲鉱山/
平行ニコル
浅熱水成金銀鉱脈中。褐灰白色。反射多色性はほとんど認められない。ヘッス鉱は自然テルルと共生しない。これは同じ研磨片で自然テルルからやや離れた所に見出されたもの。
Hs:ヘッス鉱,Tet:四面銅鉱,Qz:石英


左のヘッス鉱の異方性(普通:注意しないと分からない)/
クロスニコル

高温相(等軸晶系)からの相転移によるモザイク状の双晶が生じているのが観察される。
Hs:ヘッス鉱,Tet:四面銅鉱,Qz:石英



ヘッス鉱(Hs) 兵庫県竹野鉱山/平行ニコル
反射率は方鉛鉱と同程度で,細粒のものは見落としやすい。注意するとそれより少し褐色を帯び,少し軟らかくやや傷が多く,異方性が認められることで区別できる。
浅熱水成金銀鉱脈中。
Hs:ヘッス鉱,Gn:方鉛鉱,Qz:石英
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検鏡試料:石英・氷長石中の銀黒部分



    兵庫県竹野鉱山におけるAu-Ag-Te系鉱物の共生関係
左写真の鉱石にはヘッス鉱のほかに,ペッツ鉱と原子比でAu70Ag30程度の自然金が含まれ,その鉱石中のAu-Ag-Te系鉱物の共生関係は上図の赤い領域で表される。