エンプレクト鉱 emplectite CuBiS2 斜方晶系  [戻る]
chalcostibniteのSb→Bi置換体

輝蒼鉛鉱よりもクリーム色がかり,クリーム白色。しかし,黄銅鉱などの黄色鉱物と接する時はコントラストで黄味が感じられず,灰色に見える。反射多色性は普通で注意しないとわからない。異方性は強いが,輝蒼鉛鉱よりも弱い。不規則な集合体のほか,針〜柱状のこともある。へき開は輝蒼鉛鉱よりも発達せず,へき開線はほとんど認められず,平滑な研磨面が得られる。
中〜高温の多金属の熱水鉱床・スカルン鉱床に,輝蒼鉛鉱,自然ビスマス,生野鉱,黄銅鉱,四面銅鉱系鉱物,黄鉄鉱,コサラ鉱,褐錫鉱,黄錫鉱,パボン鉱などを伴って産し,特に黄銅鉱や四面銅鉱系鉱物などの銅鉱物に伴う傾向がある。また,輝蒼鉛鉱のまわりに反応縁をなすこともある。
通常,組成変化はほとんどないが,中温の鉱床では時に著量のSbを含み,chalcostibnite(CuSbS2)との中間組成のものがある。それによる光学的性質の変化はあまり認められない。

反射色/クリーム白
反射多色性/普通
異方性/強い
反射率(λ=590nm)/36〜42%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/150−250程度
内部反射/なし



エンプレクト鉱(Em) 北海道手稲鉱山平行ニコル
中温の鉱脈鉱床中。柱状結晶の縦断面。輝蒼鉛鉱よりもクリーム色を帯びる。反射多色性はそれより弱く,普通で注意しないと分からない。これは著量のSbを含み,chalcostibnite(CuSbS2)との中間組成のもの。
Emp:エンプレクト鉱,Tet:四面銅鉱,Qz:石英


左のエンプレクト鉱(Em)の異方性(強い)/クロスニコル
異方性は強いが,輝蒼鉛鉱よりも弱い。
Emp:エンプレクト鉱,Tet:四面銅鉱,Qz:石英




エンプレクト鉱(Em) 山口県薬王寺鉱山平行ニコル
エンプレクト鉱はクリーム白色だが,このように黄銅鉱のような黄色鉱物と接する場合,コントラストにより黄味のない灰色に見える。
高温鉱脈鉱床中。
Em:エンプレクト鉱,Cp:黄銅鉱,Co:輝コバルト鉱,Chl:緑泥石,Qz:石英


エンプレクト鉱(Em) 北海道手稲鉱山平行ニコル
熱水鉱脈鉱床中。これは輝蒼鉛鉱(Bis)の柱状結晶が,熱水中の銅と反応し,エンプレクト鉱(Em:クリーム色)ができている組織。交代作用を免れてエンプレクト鉱の中心に未反応の輝蒼鉛鉱(Bis:白)が残存している。その後,右側に四面銅鉱(Tet:灰)ができている。
なお,この輝蒼鉛鉱,エンプレクト鉱は共にBiのかわりにかなりのSbを含み,四面銅鉱中にはAsやSbのかわりに数%のBiが含まれている。
Em:エンプレクト鉱,Bis:輝蒼鉛鉱,Tet:四面銅鉱,Qz:石英