キューバ鉱 cubanite CuFe2S3 斜方晶系  [戻る]

反射多色性により,クリーム褐色〜黄褐色で,よく共生する黄銅鉱よりも明らかに褐色がかり,反射多色性が認められる。一方,磁硫鉄鉱よりは褐色味にやや乏しい。異方性は強い。硬度が黄銅鉱に近く,その境は目立たず,平滑な研磨面が得られる(明らかに磁硫鉄鉱より硬度が低い)。時に錆びやすい。
Cuに対してFeに富む正マグマ鉱床・高温の熱水鉱床・スカルン鉱床などにしばしば見られ,特に黄銅鉱と共生し,それと離溶組織(温度低下と少量の硫黄の付加によるissの分解組織)をなすことも多い。磁硫鉄鉱,鉄に富む閃亜鉛鉱,ペントランド鉱,硫砒鉄鉱,砒鉄鉱,磁鉄鉱などとも共生する。なお,斑銅鉱,輝銅鉱,ジュルレアイト,方輝銅鉱,コベリンなどとは共生しない。
334℃以上では,一般によく見られる磁硫鉄鉱と黄銅鉱の共生体よりも,キューバ鉱と少量の黄鉄鉱の共生体が安定である。したがって,キューバ鉱と少量の黄鉄鉱の共生体は334℃以上で生成したことを示す。
組成変化に乏しく,光学的性質は一定している。

なお,現在,深海底で生成している海底熱水鉱床中のアイソキューバナイトは,キューバ鉱(CuFe2S3)に近い組成を持ち,類似の結晶構造中で,Cu原子とFe原子が無秩序に配列した等軸晶系のものである。すなわちCu-Fe-S系のissのCuFe2S3付近の組成のものである(なお,Cu:Feが1:2からかなり外れた組成のissは温度低下で分解しやすい)。アイソキューバナイトも長い地質時代では分解し,他のCu-Fe-S系鉱物に変化する。

反射色/クリーム褐色〜黄褐色
反射多色性/普通(クリーム褐色〜黄褐色)
異方性/強い
反射率(λ=590nm)/40-42%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/150−264
内部反射/なし



キューバ鉱 岡山県三原鉱山平行ニコル
視野全体がキューバ鉱で,注意するとクリーム褐色〜黄褐色の普通程度の反射多色性が認められる。
スカルン鉱床中。


左のキューバ鉱の異方性クロスニコル
異方性は強く,粒界がはっきり分かる。

 



キューバ鉱(Cb)岩手県釜石鉱山
平行ニコル
スカルン鉱床中。これは黄銅鉱(Cp)との離溶組織をなすもの。地下深部の銅鉱床の形成過程で,およそ300〜350℃以上では,黄銅鉱とキューバ鉱の中間のCu:Fe比で,かつ,硫黄がやや不足している中間固溶体(iss)が安定に存在する。この中間固溶体は鉱床形成末期の温度低下と少量の硫黄の付加により簡単に黄銅鉱とキューバ鉱に分解し,このような黄銅鉱とキューバ鉱の離溶組織に変化する。この組織は正マグマ鉱床やスカルン鉱床など,高温でできた銅鉱床の鉱石にしばしば見られる。
しかし,中間固溶体(iss)の分解過程では,このようなキューバ鉱ができるよりも一層,多くの硫黄分の供給を受け,黄銅鉱+磁硫鉄鉱の組み合わせになったものの方がさらに多い。
Cb:キューバ鉱,Cp:黄銅鉱
主なCu-Fe-S系鉱物の常温での共生図(磁硫鉄鉱付近の領域は実際の天然の共生関係を考慮して一部改変している)
上写真の黄銅鉱−キューバ鉱の共生体は,この図の黄色で示した領域にある。なお,黄銅鉱−キューバ鉱−磁硫鉄鉱の3相共存の場合は右図のような共生関係にあり,その磁硫鉄鉱は六方磁硫鉄鉱である。


キューバ鉱(Cb)岡山県三原鉱山/平行ニコル
このようなキューバ鉱(Cb)−黄銅鉱(Cp)−磁硫鉄鉱(Po)の共生体は,スカルン鉱床・高温鉱脈・正マグマ鉱床にしばしば見られる。このキューバ鉱と黄銅鉱は左のようにはっきりした離溶組織をなさず,不規則な粗いモザイク状共生体をなす。下図のように,このキューバ鉱−黄銅鉱−磁硫鉄鉱の共生体中の磁硫鉄鉱は六方磁硫鉄鉱である(キューバ鉱を欠く,黄銅鉱−磁硫鉄鉱共生体の場合は単斜磁硫鉄鉱のことも少なくない)。
なお,マッキナワイトはかなり温度が低下し,百数十℃程度で生成したもので,キューバ鉱中に細かい撚糸状をなす。
Cb:キューバ鉱,Cp:黄銅鉱,Po:磁硫鉄鉱,Mcw:マッキナワイト


主なCu-Fe-S系鉱物の常温での共生図(磁硫鉄鉱付近の領域は実際の天然の共生関係を考慮して一部改変している)
上写真のような黄銅鉱−キューバ鉱−磁硫鉄鉱の共生体はこの図の黄色で示した領域にある。その場合,共生する磁硫鉄鉱は六方磁硫鉄鉱である。


キューバ鉱(Cb) ロシア ノリリスク平行ニコル
正マグマ鉱床中。正マグマ鉱床中ではペントランド鉱や黄銅鉱などと共生する。
Cb:キューバ鉱,Cp:黄銅鉱,Pn:ペントランド鉱,Gn:方鉛鉱,Mt:磁鉄鉱,Spe:スペリーライト(PtAs2