辰砂 cinnabar HgS 六方晶系  [戻る]

反射色は暗い青灰色で,深紅〜朱色の内部反射が著しい。その内部反射のため,反射多色性・異方性は分かりにくい。錆びにくいが,光に長く曝すと内部反射がやや暗色になる。脆いため平滑な研磨面が得にくい。組成変化は少ない。
内部反射が朱色の場合,褐鉄鉱に似るが,辰砂は硬度が低い。
浅熱水鉱床中に他の金属鉱物を伴わずに単独で産することが多く,脈石は石英・オパールのほか,著量の方解石や苦灰石などの炭酸塩鉱物を伴うことが少なくない。金属鉱物では時に少量の黄鉄鉱・輝安鉱,自然水銀などが伴われる程度。

反射色/青灰色
反射多色性/普通(内部反射が著しく認めにくい)
異方性/明瞭(内部反射が著しく認めにくい)
反射率(λ=590nm)/約25%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/51−98
内部反射/深紅〜オレンジ色で著しい



辰砂(Cn) 奈良県神生水銀鉱山平行ニコル
反射多色性は普通だが,平行ニコルでも内部反射が著しく認めにくい。浅熱水鉱床(鉱染鉱床)のもの。
Cn:辰砂,Qz:石英
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検鏡試料:淡褐色の変質岩の角レキ(中石)を伴う,方解石・石英・辰砂鉱脈中の朱紅色の辰砂濃集部。





左の辰砂の内部反射/
クロスニコル

粗大な粒子は真紅で,微粒子はオレンジ色に近い。明瞭な異方性があるが,内部反射で認めにくい。光に長期間さらされた古い研磨片ではやや暗紅色になる。
Cn:辰砂,Qz:石英