クロムスピネル chromianspinel (Fe,Mg)(Cr,Al)2O4 等軸晶系  [戻る]

FeCr2O4組成のクロム鉄鉱(chromite)−MgCr2O4組成のクロム苦土鉱(magnesiochromite)の固溶体で,他に少量のAlなどを含む。反射色は褐灰〜灰色で磁鉄鉱よりやや暗く,褐味に乏しい。硬度が高く,平滑な研磨面を得るには時間がかかり,特にMg,Alに富むものは硬い。スピネル構造で,自形は8面体・12面体で,その断面は多角形の他,まとまりのある丸みを帯びた形。時に不定形のこともある。
Fe2+→Mg,Cr3+→Alの置換が進むと褐色の内部反射が顕著になり,反射率が下がる。
かんらん岩や蛇紋岩中に副成分鉱物として散点状でよく見られ,時に層状の沈積構造をなし濃集してクロム鉱床を形成している。大陸地域の層状貫入岩体では優白質の斜長岩中にも見られる。その他の岩石にはまれで,アルカリ玄武岩とその中のマントル包有物(かんらん岩)との境や,無人岩(特殊な安山岩)に見出される程度。

反射色/褐灰〜灰色
反射多色性/なし
異方性/なし
反射率(λ=590nm)/11〜13%(Mg,Alの多いものは低い)
ビッカース硬度(kgf/mm2)/1036〜2000(Mg, Alの多いものは硬い)
内部反射/時に暗褐色(Mg,Alの多いものは顕著に認められる)



マントル包有物のかんらん岩中のクロムスピネル(Cr) 秋田県一の目潟/
平行ニコル
これはMg,Alに富むもので反射率が低く,周囲の頑火輝石(En)やかんらん石(Fo)よりやや明るい程度のものである。クロスニコルでは暗褐色の内部反射が認められる。
Cr:クロムスピネル,En:頑火輝石,Fo:かんらん石


造山帯のかんらん岩中のクロムスピネル(Cr) 千葉県嶺岡山/平行ニコル
かなり蛇紋岩化が進んだかんらん岩中のクロムスピネル。かんらん石(Ol)や輝石類(頑火輝石 Opx)が蛇紋石(Ser)に変質してもクロムスピネルはあまり変質していない。右のものは8面体の自形の断面が現れているもの。
なお,左の写真には蛇紋岩化により生じたペントランド鉱が見られる。
Cr:クロムスピネル,Ol:かんらん石,Opx頑火輝石,Ser:蛇紋石,Pn:ペントランド鉱


蛇紋岩中のクロムスピネル(Cr) 山口県
平行ニコル

かんらん岩の蛇紋岩化の際に輝石類やかんらん石などから遊離したFeがクロムスピネルの周りに磁鉄鉱微粒子(Mt)として沈着したもの(クロムスピネルと磁鉄鉱は基本的に同じスピネル構造の原子配列なので平行連晶をなす)。クロムスピネルは磁鉄鉱よりも褐味に乏しくやや暗い。
Cr:クロムスピネル,Mt:磁鉄鉱,Ser:蛇紋石 写真左右,各 約1mm。