自然砒素 arsenic As 六方晶系  [戻る]
自然ビスマス・自然アンチモンと同構造

反射色は白だが,空気中で早くに錆びて暗色になり,さらに黒い粉状になる。反射多色性は弱くほとんど認められないが,異方性は普通で,注意するとモザイク状の集合体をなしているのがわかることが多い。通常は組成変化に乏しく,光学的性質は一定している。アンチモンとの化合物はスティブアルセン(SbAs)で,それとの区別は,自然砒素がやや反射率が低く,わずかに暗い。
低温の熱水鉱床中に局部的にまとまって産するが,広く見られる鉱物ではない。チェコやドイツの銀鉱床群からはスティブアルセン,自然銀,淡紅銀鉱,黄粉銀鉱などを伴ってしばしば多産し,その鉱床群は非常に硫黄分に乏しい条件でできたものである。他には低温生成の金銀鉱床に輝安鉱と共生してまれに産する。

反射色/白
反射多色性/弱い
異方性/普通
反射率(λ=590nm)/約45%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/70〜130
内部反射/なし



自然砒素(As) チェコ Pribram平行ニコル
低温の熱水鉱脈中。白色で累層状をなす。反射多色性は弱く,ほとんど認められない。この自然砒素上部の淡紅銀鉱は,銀の熱水溶液が自然砒素に作用して生成した一種の反応縁。
As:自然砒素,Pro:淡紅銀鉱


左の自然砒素(As)の異方性(普通)/
クロスニコル

異方性は普通で,集合粒子の結晶方位の違いによるコントラストで注意すると認めらる(写真では下寄り部分がかすかに赤紫・青紫の粗いモザイク状になっている)。
淡紅銀鉱(Pro)は紅い内部反射が著しい。
As:自然砒素,Pro:淡紅銀鉱