輝銀鉱(針銀鉱) argentite(acanthite) Ag2S 等軸晶系(単斜晶系)  [戻る]

輝銀鉱(高温相)⇔針銀鉱(低温相)の相転移は1atm では179℃で起こり,その温度を境にすぐに相転移し,常温常圧では原子配列がすべて針銀鉱(acanthite)になっているが,慣例的にAg2S鉱物は輝銀鉱(argentite)と呼ばれていることが少なくない。
緑灰色でやや暗い。非常に硬度が低く可塑性があり,研磨時の擦痕が多く,荒れた研磨面となりやすい。時に光腐食が見られる。
浅熱水成金銀鉱脈に産し,ほとんどが他形。よく共生するのは自然金・自然銀・輝安銀鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱・黄銅鉱・黄鉄鉱・石英などである。ミアルジル鉱・輝安鉱・石黄・ナウマン鉱・四面銅鉱系鉱物・各種テルル化鉱物などとは共生しない。また,濃紅銀鉱と共生することもあまりない。一方,アグイラ鉱〜ナウマン鉱は濃紅銀鉱・四面銅鉱系鉱物としばしば共生する。
なお,自然銀−輝銀鉱共生体は方解石に伴って見られることが多く,このようなものはメキシコ・ペルー・ヨーロッパなどの金をあまり伴わない大規模な銀鉱床に多産する。
Sの代わりに若干のSeを含むことがあるが,それによる光学的性質の変化はほとんどない。かなりSeが多くなると化学組成上はアグイラ鉱だが,それは輝銀鉱とは結晶構造が異なり,ナウマン鉱と同形。アグイラ鉱とは区別困難だが,ナウマン鉱は平滑な研磨面が得られ,反射色は緑味がなく普通程度の異方性があることで区別できる。

反射色/緑灰色
反射多色性/非常に弱い(ほとんど認められない)
異方性/非常に弱い(ほとんど認められない)
反射率(λ=590nm)/約30%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/22−26
内部反射/なし



輝銀鉱(Arg) 兵庫県大身谷鉱山/平行ニコル
浅熱水成金銀鉱脈の銀黒鉱石。緑灰色でやや暗い。非常に硬度が低く,可塑性があり,研磨面は擦痕が多く,荒れた状態のことが多い。
Arg:輝銀鉱,Cp:黄銅鉱,Qz:石英
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検鏡試料:石英に伴う黒い縞状の銀黒部分



輝銀鉱(Arg) 静岡県縄地鉱山平行ニコル
浅熱水成金銀鉱脈の銀黒鉱石。緑灰色でやや暗い。非常に硬度が低い。これは研磨が不十分のもので,可塑性により研磨面に細かい研磨剤がめり込んで荒れた状態のもの。
浅熱水成金銀鉱脈の銀黒鉱石ではこのように自然金(Au)を伴うことが多い。
Arg:輝銀鉱,Au:自然金,Qz:石英
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検鏡試料:緻密な石英・氷長石中の斑点状の銀黒部分