アラバンダ鉱 alabandite MnS 等軸晶系  [戻る]
方鉛鉱のPb→Mn置換体

特徴のない灰色で閃亜鉛鉱とよく似ている。しかし,まれにわずかに暗緑色や褐緑色の内部反射を示すことがあり,閃亜鉛鉱の淡黄色〜赤みを帯びた褐色の内部反射とは異なる。また,かなり錆びやすく,放置すると虹色になり,さらに二酸化マンガンの黒褐色の粉・皮膜が生じる。方鉛鉱と同形で同じ方向に劈開があるが,劈開による3角形の剥落痕は時に少し見られる程度(下写真)。
マンガンの酸化鉱物であるハウスマン鉱・ブラウン鉱・ヤコブス鉱・緑マンガン鉱とは,ハウスマン鉱は異方性が強く,ブラウン鉱・ヤコブス鉱は研磨硬度が高く,緑マンガン鉱は反射率がより低くエメラルドグリーンの内部反射が著しいことで区別できる。
接触変成作用を受けてできた層状マンガン鉱床にバラ輝石・テフロ石・菱マンガン鉱・磁硫鉄鉱・黄鉄鉱などに伴うほか,浅熱水鉱脈鉱床中に黄鉄鉱や多量の菱マンガン鉱を伴って産し,産状も同定の一助となる。

反射色/やや暗い灰色
反射多色性/なし
異方性/なし
反射率(λ=590nm)/25%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/138−266
内部反射/まれにわずかに暗緑色・褐緑色



アラバンダ鉱(Abn)/
岩手県野田玉川鉱山 
平行ニコル
接触変成作用を受けた層状マンガン鉱床中。やや暗い灰色。炭酸塩鉱物の菱マンガン鉱(Rhc)ほど暗くないが,硫化鉱物としてはかなり暗い。中央上部(赤矢印先)には劈開による三角形の剥落痕が見られる。アラバンダ鉱は方鉛鉱と同形で,同じ劈開があるため,時にこのような方鉛鉱同様の劈開がわずかに見られる。
Abn:アラバンダ鉱,Po:磁硫鉄鉱,Rhc:菱マンガン鉱