アグイラ鉱 aguilarite Ag2(Se,S) 斜方晶系  [戻る]
ナウマン鉱のSe→S置換体(部分置換体)


緑灰〜灰色でSeの含有率が高まると緑味が無くなり,かつ異方性が認められるようになり,ナウマン鉱に移り変わる。Seのやや少ないものは軟らかく荒れた研磨面になりやすいが,Seが多くなるにつれ硬度が高まる。Seのやや少ない緑灰色のものは輝銀鉱と区別困難。時に光腐食が見られる。
浅熱水性金銀石英脈中に自然金(エレクトラム),輝安銀鉱,ピアース鉱,濃紅銀鉱,四面銅鉱系鉱物,黄鉄鉱,黄銅鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱などとともに見出される。なお,濃紅銀鉱・四面銅鉱系鉱物と密接に共生する輝銀鉱様の鉱物があれば,アグイラ鉱を疑うべきである(輝銀鉱は濃紅銀鉱・四面銅鉱系鉱物とほとんど共生しない)。

反射色/Seの少ないものは緑灰,Seの多いものは緑味が弱く灰色
反射多色性/非常に弱い(ほとんど認められない)
異方性/Seの少ないものは弱い(ほとんど認められない)〜Seの多いものは普通
反射率(λ=590nm)/33%
ビッカース硬度(kgf/mm2)/25−35
内部反射/なし



浅熱水成金銀石英脈中の“アグイラ鉱”(Ai) 北海道光竜鉱山3号ヒ平行ニコル
これはSe含有率が少なく,原子比でSe:S=1:4程度。明らかに緑味があり,非常に軟らかく研磨不良,異方性も認められない。輝銀鉱(針銀鉱)と同じ光学的性質で,それと区別できない。
Seの含有率が高くなると緑味に乏しくなり,硬度が上がり研磨良好となり,異方性が認められるようになる。
Ai:アグイラ鉱,Pc:ピアース鉱,Cp:黄銅鉱,Sp:閃亜鉛鉱,Qz:石英

※注)この北海道光竜鉱山3号ヒのものは原子比でSe:S=1:5〜1:4程度でSeがかなり少なく,かつ,X線粉末回折データはアグイラ鉱に一致せず,針銀鉱に一致しており,アグイラ鉱ではなく,針銀鉱(Seを含む針銀鉱)の可能性が高い。


浅熱水成金銀石英脈中のアグイラ鉱(Ai) 兵庫県旭日鉱山平行ニコル
これは原子比でSe:S=2:3〜3:2程度のアグイラ鉱で,輝銀鉱(針銀鉱)よりも明らかに緑味がなく,灰色。なお,これは自然銀に近接するため,それとのコントラストで実際よりもかなり暗く見えている。
研磨硬度もそれほど低くなく,平滑な研磨面が得られる。
なお,異方性はナウマン鉱ほど容易に認められない。
Ai:アグイラ鉱,Ag:自然銀,Qz:石英