Pb-Bi-S系鉱物  Pb-Bi-S system  [戻る]

右図のようにPb-Bi-S系鉱物には多くの種類があり,主なものとしてはPbの多い順からヘイロフスキー鉱 heyrovskyite(6PbS・Bi2S3/Pb6Bi2S9), リリアン鉱 llianite(3PbS・Bi2S3/Pb3Bi2S6),コサラ鉱 cosalite(2PbS・Bi2S3/Pb2Bi2S5), ガレノビスムシナイト galenobismuthinite(PbS・Bi2S3/PbBi2S4)などがある。これらは一般に反射色は灰白〜白色で,弱い〜明瞭な反射多色性,普通〜強い異方性がある。光学的性質だけでは互いに区別できないことが多い。時に柱状構造を示す場合もあるが,特定の構造を示さない場合も多い。一般に輝蒼鉛鉱よりも劈開は発達せず平滑な研磨面が得られ,異方性はそれよりやや弱い。
上記の内では右図のように化学量論的に見て,方鉛鉱と共生するものはヘイロフスキー鉱,輝蒼鉛鉱と共生するものはガレノビスムシナイトの傾向がある。

※一般的にこのようなPb-Bi-S系鉱物は,Pb-Sb-S系鉱物・Pb-As-S系鉱物よりもやや高温でできた熱水鉱床やスカルン鉱床に産する。
※コサラ鉱は少量のCuやAgを必須成分として含み,厳密にはCu-Ag-Pb-Bi-S系鉱物である((Cu,Ag)Pb7Bi8S20)。従来,Pb-Bi-S系鉱物として知られていたものの中には,このように少量の必須成分を含むため,組成式が改められたものがある。
※Cu・Agを加えた系(Cu-Ag-Pb-Bi-S系)では一層,類似の鉱物が多く,同定は光学的性質だけでは不可能。

反射色/灰白〜白色
反射多色性/弱い〜明瞭
異方性/普通〜強い
反射率(λ=590nm)/35〜50%程度
ビッカース硬度(kgf/mm2)/40−180程度
内部反射/なし



主なAg-Pb-Bi-S系鉱物(右の辺がPb-Bi-S系鉱物)



Pb-Bi-S系鉱物? 秋田県揚の沢鉱山平行ニコル
熱水鉱脈中。方鉛鉱と共生するので化学量論的にPb-Bi-S系鉱物の中ではPbの多い,ヘイロフスキー鉱と推定できる。しかし,CuやAgが加わった別の鉱物の可能性もある。
反射多色性は弱く,ほとんど認められない。
Pb-Bi-S:ヘイロフスキー鉱?,Gn:方鉛鉱,Cp:黄銅鉱,Py:黄鉄鉱


左のPb-Bi-S系鉱物?の異方性(明瞭)/クロスニコル
明瞭な異方性でモザイク状集合体をなしているのがはっきりする。
Pb-Bi-S:ヘイロフスキー鉱?,Gn:方鉛鉱,Cp:黄銅鉱,Py:黄鉄鉱


Pb-Bi-S系鉱物? 
秋田県揚の沢鉱山平行ニコル
熱水鉱脈中。輝蒼鉛鉱(Bis)と共生するので化学量論的にPb-Bi-S系鉱物の中ではBiの多い,ガレノビスムシナイトと推定できる。しかし,CuやAgが加わった別の鉱物の可能性もある。
輝蒼鉛鉱よりはるかに反射多色性は弱く,ほとんど認められない。
Pb-Bi-S:ガレノビスムシナイト?,Bis:輝蒼鉛鉱,Cp:黄銅鉱,Sp:閃亜鉛鉱,Qz:石英


左のPb-Bi-S系鉱物?の異方性(明瞭)/
クロスニコル
輝蒼鉛鉱よりも異方性は弱い。柱状構造が認められる。
Pb-Bi-S:ガレノビスムシナイト?,Bis:輝蒼鉛鉱,Cp:黄銅鉱,Sp:閃亜鉛鉱,Qz:石英