二酸化マンガンを主成分とする鉱物 manganese dioxide minerals  [戻る]

MnO2に近い組成の鉱物には数種あり,パイロリュース鉱,ラムスデル鉱,轟石,サイロメレーンなどがあり,ほかに非晶質のものもある。これらは低温の熱水あるいは地表水による各種マンガン鉱物の分解生成物で,肉眼的には褐黒色〜黒色で,かなり脆い場合や多孔質のこともある。
結晶質のものは反射色が灰白〜灰色で,反射率は20〜30%で,反射多色性が普通〜明瞭。異方性は明瞭〜非常に強い。時に繊維状の平行〜放射状集合体の構造が認められ,これは轟石の場合が多い。非晶質のものは反射色が灰白〜灰色で,反射率は15〜20%程度で等方体。脆いので,ダイヤモンドペーストでの研磨の際,その遊離した粉末で研磨布が汚染され,それにより研磨面自身が傷つきやすく,多孔質・線状の傷が多い観察困難な研磨面になることもある(下右画像)。
光学的に結晶質か非晶質であるかの区別はある程度可能だが,鉱物種の同定まで至らないことが多い。X線粉末回折で同定するのが普通である(マンガン鉱物はバックグラウンドが低いFeKα(λ=1.9373Å)で回折するのが望ましい)。

反射色/結晶質のもの:灰白〜灰色,非晶質のもの:灰色
反射多色性/結晶質のもの:普通〜明瞭,非晶質のもの:なし
異方性/結晶質のもの:明瞭〜非常に強い,非晶質のもの:なし
反射率(λ=590nm)/結晶質のもの:20〜30%程度,非晶質のもの:15〜20%程度
ビッカース硬度(kgf/mm2)/30〜900程度で鉱物種や結晶方位で幅が大きい。
内部反射/認められないことが多いが,時に深紅。



二酸化マンガンを主とする鉱物(MnO2)/愛媛
県福見川 
平行ニコル
接触変成作用を受けた層状マンガン鉱床のテフロ石(Tp)・ヤコブス鉱(Jc)などが風化作用で分解し,そのマンガン分が酸化され,4価の二酸化マンガンを主とする鉱物になったもの。テフロ石などのケイ酸塩鉱物ほど暗くないが,やや暗い。このような研磨良好なものは,結晶質で反射多色性・異方性が明瞭に見られるものもある。しかし光学的には鉱物種の同定は困難である。
MnO2:二酸化マンガンを主とする鉱物,Tp:テプロ石,Jc:ヤコブス鉱


非晶質の二酸化マンガンの鉱物(視野全体)/
静岡県池代鉱山 
平行ニコル
非晶質の二酸化マンガンの鉱物は,非常に脆く,ダイヤモンドペーストでの研磨の際,剥落し,このように多孔質の観察困難な研磨面になることも多い。等方体。




轟石(ほぼ視野全体)/
静岡県池代鉱山  (Na,K,Ca,Sr,Ba)2(Mn4+,Mn3+)6O12・3〜4.5H2O 単斜晶系

二酸化マンガンを主とする鉱物には,しばしば繊維状の射出〜放射状構造が認められるものがあり,それはこの轟石の場合が少なくない。反射多色性は弱いが,異方性は強い。

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検鏡試料:脆い黒色塊状で部分的に鈍い亜金属光沢がある。