平成28年6月議会における所信表明
議員の皆様、本日は、御多忙の中お集まりいただき、厚くお礼を申し上げます。
 
今議会は、私にとりまして市長3期目の最初の議会であります。提案理由説明に先立ちまして、まず、市政を取り巻く最近の状況につきまして御説明申し上げ、次に、今後の市政に対する私の所信を申し述べさせていただきまして、議員の皆様並びに市民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。
 
まず、最近の市政を取り巻く状況として、三菱自動車工業株式会社(以下「三菱自動車工業」という。)関連企業等への対応、熊本地震被災地への支援及び「G7倉敷教育大臣会合」につきまして御説明申し上げます。
 
4月20日に三菱自動車工業より、燃費測定に際し不適切な方法を用いていたこと、そして、該当4車種の生産・販売を停止するとの発表がありました。倉敷市としましては、三菱自動車工業の今回の問題につきまして遺憾に思っており、今後、このようなことのないように原因究明、再発防止に取り組んでいただくことを申し入れておりますとともに、一方で、関連企業及び従業員の方々への影響につきまして、大変憂慮しております。三菱自動車工業関連の岡山県内の事業所は、一次、二次取引先で約500社、そこで働く従業員数は、約23,600人にのぼり、その多くは、水島製作所及び関連企業が集積する倉敷市、取引先工業団地がある総社市周辺をはじめとする県内地域に集中しており、問題公表以降、水島製作所で生産する軽自動車4車種の生産停止は、現在も続いており、既に6月末までの停止が決まっています。岡山県が5月24日に公表した県内企業アンケート調査では、三菱自動車工業と取引があると回答した企業166社のうち、約7割にあたる119社が生産停止からの1か月で売り上げが減少し、なかでも20社は売り上げが50パーセント以上減少し、また、自宅待機や出向などの雇用調整を行っている企業数は28社で、雇用調整人数は1,018人となっており、今後、これが、33社、1,816人にまで拡大し、さらに、解雇・雇い止めを行う企業数は10社、104人になると見込まれています。
 
倉敷市としましては、4月25日から主要取引先企業へのヒアリング調査を実施し、5月2日には、緊急対策会議を開催し、取引先企業への支援策を発表しました。そして、直ちに総合相談窓口を開設するとともに、影響を受ける市内の中小企業を支援するための最大5,000万円の低利融資制度を5月16日に新設し、これまでに9件の相談、1件の融資申し込みに対応しております。この間、4月28日には、地元ものづくり産業の維持、従業員の雇用確保のための取組を進めていただけるよう地元選出国会議員などへ要望し、併せて、国土交通省や経済産業省など関係省庁に要望を行い、早速5月27日には、国の中小企業支援措置としてセーフティネット保証2号を発動していただくことができました。さらに、5月28日には、倉敷市を訪れた石井啓一国土交通大臣に、生産再開に向けた手続の早期決定や、関連企業が生産再開に備えて体制が整えられるよう、今後の見通しについて早期に示していただくよう要望しています。三菱自動車工業の今後の経営体制については、5月12日に日産自動車株式会社との資本業務提携の発表があり、5月25日には両社の提携契約が締結されるなど、新たな進展がありました。しかしながら、未だ生産再開の見通しは立っておらず、取引先企業や従業員の方々の不安定な状況は現在も続いています。水島製作所をはじめ、関連企業は、県内で製造品出荷額が7,000億円を超え、生産・販売停止が地域経済に及ぼす影響は極めて大きなものであります。倉敷市としましては、従業員の方々の雇用が確保され、一日も早く生産・販売が再開されますよう、引き続き関係省庁等へ強く要望してまいりますとともに、地元の相談体制など、しっかりとした対応を行っていきたいと考えております。
 
次に、熊本地震被災地への支援につきまして、御説明申し上げます。倉敷市では、本震のあった4月16日に、緊急消防援助隊として、救助工作車、救急車をはじめ9台の車両と、消防職員28人を熊本県益城町へ派遣し、その後、南阿蘇村にも派遣し、4月20日までに延べ73人を派遣しました。また、水道局から、給水車1台と職員延べ10人を応急給水隊として南阿蘇村及び大津町へ、さらに、延べ4人を漏水調査員として熊本市上下水道局へ派遣しました。また、被災建物の危険度判定のため、被災建築物応急危険度判定士として建築技師延べ7人を益城町等へ、避難所での健康管理や健康相談などを行うため、保健師及び事務職員延べ31人を西原村へ、さらに、災害廃棄物の収集を行うため、5月13日から6月10日までの予定で、ごみ収集車等5台と職員延べ40人を熊本市へ派遣しています。また、救援物資として、4月19日に非常食や飲料水、紙おむつやタオルなど市の備蓄品を、また、市民の皆様から御提供いただきましたマスク約87、500枚、軍手約6,000双、歯ブラシ約6,600本、ウェットティッシュ約1,800箱を4月30日に西原村へお届けしました。また、5月13日に市議会議員の皆様からの義援金50万円が九州市議会議長会に寄託され、さらに、5月31日に市民や企業、団体の皆様及び市職員などからの801万円余りを熊本県へお送りしました。地震発生から間もなく2か月が経過しますが、依然として避難を余儀なくされ、不自由な生活を送られている方が多くおられます。今後におきましても、倉敷市としては必要な支援を行ってまいります。
 
次に、「G7倉敷教育大臣会合」についてでございます。まずは、多くの皆様の御支援・御協力によりまして、大臣会合が成功裏に終了し、また、倉敷市での開催が、各国代表団から大変高い評価をいただいたことに対し、心より感謝申し上げます。昨年7月の大臣会合開催決定以来、サミット教育大臣会合推進室を設置し、G7倉敷教育大臣会合実行委員会の開催をはじめ、多くの皆様方の御協力をいただきながら準備を進めてきました。そして開催前日の5月13日には、各国代表団の皆様をはじめアメリカのケネディ駐日大使にも、倉敷市の学校現場を視察していただきました。老松小学校では、児童と一緒に学校給食を体験していただいたほか、子どもたちの清掃活動や、地域の方々による昔遊び授業の見学を、また、市内で最も歴史ある木造校舎を有する西中学校では、書道・英語の授業や剣道部・吹奏楽部の活動を見学していただきました。また、夕方からの地元主催公式歓迎レセプションでは、高梁川流域の特産品など地元食材を使った料理を楽しんでいただくとともに、子どもたちを中心とした地元伝統芸能の披露を行うなど、倉敷市、高梁川流域圏域及び岡山県の魅力を伝えることができました。14日には、美観地区の町並みや大原美術館の視察などを通じて、倉敷市の歴史文化に触れていただきました。また、植花イベントやクリーンアップ大作戦、倉敷物語館や倉敷館などにおけるおもてなしなど、市民の皆様によるボランティア活動により、心を込めたおもてなしを実施してまいりました。代表団の皆様からは、温かいおもてなしによって、まちの雰囲気を身近に感じることができ、胸襟を開く会合につながったとの高い評価をいただきました。そして、15日に、この大臣会合の成果として「倉敷宣言」が採択されました。この中には、3月6日に倉敷市が開催した「G7倉敷こどもサミット」の宣言内容も盛り込まれており、大変うれしく思っております。国においては、今後、「倉敷宣言」実行のため、来年度の政府予算で「倉敷宣言プログラム」に取り組む方針を明らかにしております。倉敷市といたしましても、「G7倉敷宣言推進会議」を開催し、宣言の実行に向けた具体的な施策を検討してまいりたいと考えております。最後に、これまで大きな国際会議を開催したことのない倉敷市が主体となって大臣会合を誘致できたことが、今後、地方都市において国際会議を開催していく気運の高まりや、外国人観光客が多く訪れる東京や京阪神など以外の各地域の素晴らしさを世界各国に発信する契機となり、地方創生推進の弾みにつながっていくことを期待しております。
 
さて、私は、3期目の市政運営に向けて、これまでの2期8年間に積み重ねてきた成果を礎として、笑顔と元気にあふれ、これまで以上に暮らしやすい、また、暮らしてみたいと思っていただけるまちの実現を目指してまいりたいと考えております。
そのためには、今後とも、皆様の暮らしの安心を確かなものにするとともに、倉敷市の将来の成長と発展を支え、より良い未来を築くための施策に、積極的に取り組んでいくことが必要と考えております。倉敷市は、現在、人口が微増となっているものの、今後の推計では、平成31年をピークに減少に転じる見込みとなっております。このため、昨年9月に策定した「倉敷みらい創生戦略」に掲げている、子育て支援をはじめとして、健康長寿、まちの魅力向上、産業力強化、安全安心、地域連携などへの取組を今後、さらに強化していく必要があると考えております。また、他の自治体に先駆けて取り組んでいる高梁川流域連携中枢都市圏につきましては、その取組が全国から注目されており、今後とも7市3町での連携を深めていくことで圏域全体の総合力向上を図ってまいりたいと考えております。さらに、この度のG7倉敷教育大臣会合開催で得られた貴重な経験や成果を生かした取組や、東京オリンピック・パラリンピックのホストタウンへの取組も進めていくことで、倉敷市が持つ多彩な魅力を国内外へ発信していくとともに、本年2月に策定した「倉敷市教育大綱」に掲げている「倉敷のひと」であること、「倉敷らしさ」を誇りに思い、「倉敷のよさ」を世界に発信できるひとの育成にもつなげてまいりたいと考えております。
このように、倉敷市は、今後の人口減少社会に立ち向かい、活力ある社会の実現に向けて将来を見据えたまちづくりを進めていく大変重要な時期を迎えています。今まさに、将来の成長と発展につながる確かな道筋を切り拓いていくことが、私たちの世代が果たすべき役割と考えております。
こうした考えのもと、「子育てするなら倉敷でと言われるまち」「温(ぬく)もりあふれる健康長寿のまち」「安心と活力あふれる元気なまち」「世界に向けて発信するまち」「みらいに責任を果たすまち」という5つの政策を推進してまいりたいと考えております。それでは、順次、御説明申し上げます。
 
まず、「子育てするなら倉敷でと言われるまち」をつくります。
市長就任以来、「子育てするなら倉敷でと言われるまち」を一貫して掲げてまいりました。安心して結婚・出産ができ、子どもを持つ世代が仕事と子育てを両立することができる環境の充実を図ってまいります。また、子どもたちが確かな学力を身に付け、それぞれの個性と能力に応じ、健やかに成長できる環境づくりを進めてまいります。
主な取組としまして、保育所の新設や認定こども園の拡大など待機児童ゼロを目指した施策を推進し、また、育休退園の見直しも進めてまいります。放課後児童クラブの受入児童数の拡大、学力向上への取組、校舎・施設整備など教育環境の充実を図ってまいります。
本年度は、保育士の負担軽減を目的とした保育士確保対策事業や、定員増加につながる民間保育所の老朽化した園舎の建替に対して助成します。また、平成28年4月1日現在の待機児童が111人となっている状況や、育休退園の見直しとして、来年4月から、退園対象となる子の年齢を「4歳未満」から「3歳未満」に引き下げるため、5月26日から保育需要の高い老松小学校区などの4地区を整備予定地区として、210人程度の定員増となる保育所・認定こども園の創設及び増築整備にかかる募集を開始しました。また、地域の子育て親子の交流の場となり、子育てに関する相談や援助等を行う地域子育て支援拠点を南中学校区に新たに1か所開設し、市内全体で20か所に拡大します。さらに、放課後児童クラブの受け入れ児童数の増加につながるクラブ室の設置や余裕教室の改修により定員増加を図るとともに、エアコン設置に対する助成を行うなど、子どもたちが快適に過ごすことができる環境整備に取り組みます。また、小学校4年生を対象とした市独自の学力調査の実施や生活支援員の増員、さらに、倉敷支援学校の大規模改修や東陽中学校校舎の増築など教育・学習環境の整備に取り組みます。
 
次に、「温(ぬく)もりあふれる健康長寿のまち」をつくります。
少子高齢・人口減少社会を迎え、倉敷市の高齢化率は平成28年3月末現在で約26パーセントとなっており、昨年10月1日現在の県平均の28.6パーセントや全国平均の26.7パーセントを下回っているものの、倉敷市においても高齢化が進んできている状況にあります。高齢者の皆様は、様々な知識や経験をお持ちであり、これらを生かし健康でお元気に活躍していただくことで、地域の活力向上につなげてまいりたいと考えております。このため、健康長寿のまちを目指して、高齢者や障がいのある方々をはじめ皆様の健康づくり、生きがいづくり、社会参加など生涯現役のまちづくりを推進し、誰もが活躍できる社会の実現を目指します。また、医療や介護が安心して受けられる福祉のまちづくりを進めます。
主な取組としまして、グラウンドゴルフ場整備などスポーツ・健康増進への取組や、ふれあいサロン・認知症カフェの推進など地域での交流や支えあいを進めてまいります。また、市民病院の建替や特別養護老人ホームの整備など、医療・介護体制を強化するとともに、老朽化している総合福祉会館の建替を行ってまいります。
本年度は、水島緑地福田公園の改修に向けた設計等を行います。また、市民病院建替への着実な対応を図るとともに、特別養護老人ホーム、小規模多機能型居宅介護事業所、介護老人保健施設などの整備に対する助成を実施します。
 
3点目といたしまして、「安心と活力あふれる元気なまち」をつくります。
安心して暮らせるまちを目指して、耐震化の推進など自然災害への備えを強化し、まちの強靭化に取り組みます。また、地域の産業力強化を図るとともに、人や企業を大都市圏から呼び込み、まちの賑わい創出と地域経済の活性化に取り組みます。
主な取組としまして、幼稚園・保育所などの耐震化や、浸水対策の実施、倉敷市国土強靭化計画の策定などを進めてまいります。また、地場産業、水島港・水島コンビナートの競争力強化を支援するとともに、大都市圏からの企業誘致や、UIJターン希望者を呼び込む移住定住施策を強力に推進してまいります。
本年度は、幼稚園・保育所等の耐震化として、実施設計、耐震補強・建替工事を予定しており、このほか、市役所本庁舎低層棟の耐震診断、消防署出張所の実施設計及び耐震補強工事、老人福祉施設の耐震診断及び実施設計、公民館の実施設計及び耐震補強工事などを実施します。また、浸水対策事業として、排水機場の改修工事、護岸嵩上げや水門設置工事などを実施するほか、一定規模以上のため池についてハザードマップを作成します。また、保安面や衛生面などで問題がある空家等の除却工事に対する助成を新たに実施するほか、大規模盛土造成地の位置及び規模の調査、さらに地域の防災力強化となる消防団機庫の建替を行います。
また、転出が転入を大きく上回っている東京圏からのUIJターン希望者を呼び込むことを目的に、東京事務所への移住相談窓口設置や東京圏からの移住希望者を対象とした移住ツアーの開催、移住者への就労支援やお試し住宅の拡充など移住定住促進に向けた取組の充実を図ります。
 
4点目といたしまして、「世界に向けて発信するまち」をつくります。
G7倉敷教育大臣会合の経験を生かして、倉敷市の文化や歴史、町並み、特産品などの地域資源を世界に発信し、また、海外からのお客様の受け入れ環境の整備を進め、国内に加え世界から人々が訪れるまちを目指します。
主な取組としまして、倉敷市が誇る伝統・文化・芸術を振興するとともに、町家・古民家の再生利活用、電線類の地中化、倉敷館の改修など、町並みの魅力を向上し、倉敷らしさを国内外に発信してまいります。また、多言語対応、Wi-Fi環境の整備などを進めることによるインバウンドの強化、さらに、2020年東京オリンピック・パラリンピックのホストタウンとして、海外との交流を進めてまいります。
本年度は、倉敷物語館周辺に新たな回遊拠点を整備するための準備を進めるとともに、倉敷市はもとより高梁川流域の魅力発信拠点としての活用を検討してまいります。また、大都市圏において、特産品や観光のPRを行い、倉敷市の個性と魅力の発信力を強化します。さらに、高梁川流域ICT利活用推進事業として、高梁川流域圏域を訪れる観光客の利便性向上に向けてビッグデータ等を活用した情報発信を推進してまいります。
 
最後に5点目といたしまして、「みらいに責任を果たすまち」をつくります。
豊かな自然環境を守るとともに、暮らしの向上につながる都市機能の充実・強化を図ります。
また、市民の皆様と共に考え行動する協働によるまちづくりや、行財政改革を引き続き推進し、さらに高梁川流域自治体との絆の強化を図ることで、地域の未来に責任を果たします。
主な取組としまして、水素ステーション設置や地球温暖化対策を推進するとともに、倉敷駅周辺整備など中心市街地の活性化や幹線道路整備などを進めてまいります。また、市民の皆様と協働のまちづくりを進めるとともに、200億円を上回る負債削減や公共施設の多機能化複合化を推進してまいります。さらに、連携中枢都市圏発展のための取組を進めてまいります。
本年度は、環境学習の拠点施設である環境交流スクエア敷地内に岡山県下初の水素ステーションを設置するとともに、新たに家庭用燃料電池(エネファーム)の設置経費に対して助成します。また、電気自動車等購入補助金の補助台数を60台から40台追加し100台とします。また、都市機能の充実・強化として、児島駅前地区の誘導案内サインの設置やバリアフリーに対応した歩道整備、倉敷駅前東土地区画整理事業などの中心市街地活性化、倉敷地区南部を東西に結び交通の円滑化を図る矢柄西田線などの幹線道路整備を推進します。JR山陽本線等倉敷駅付近連続立体交差事業につきましては、現在策定中の倉敷駅周辺総合整備計画を踏まえ、事業主体である岡山県や関係機関との協議を進めてまいります。また、「市民ふれあいトーク」を引き続き実施するほか、さらに、高梁川流域市町との連携を深めていく観点から、昨年度の笠岡市、早島町に引き続き、本年度は、矢掛町の公共建物の現況調査等を行います。
 
倉敷市の将来に向けた基盤づくりは、まさにこれからが重要と考えます。倉敷市の個性と魅力を発信し、強みを生かしながら、成長と発展につながる取組を進めていくことで、皆様とともに笑顔と元気あふれるまちの実現を目指してまいりたいと考えております。今後とも、倉敷市のより良い未来を築くため、引き続き全力で取り組んでまいりますので、議員の皆様並びに市民の皆様の御理解・御協力を賜りますようお願い申し上げます。