平成28年2月議会における所信表明
◆市長提案理由説明要旨(抜粋) 平成28年2月22日

議員の皆様、本日は、御多忙の中お集まりいただき、厚くお礼を申し上げます。
 
まず、平成28年度諸議案の提案理由説明に先立ち、最近の倉敷市を取り巻く状況について御説明し、そして、今議会は、私にとりまして今任期最後の市議会となりますので、一言御挨拶を申し上げさせていただきたいと存じます。
 
我が国は、現在、東京一極集中の是正や地方の活力創出を目指す「地方創生」、また、国民一人ひとりが、個性と多様性を尊重され、それぞれの能力を発揮でき、生きがいを感じることができる社会を目指す「一億総活躍社会」の実現に向けた取組を進めております。国では、1月20日に、「地方創生加速化交付金」の創設などを盛り込んだ平成27年度補正予算が成立し、また、1月22日には、地方創生の本格展開、幼児教育の無償化拡大や女性の活躍推進などの施策を含む平成28年度当初予算案が国会に提出されたところです。倉敷市では、こうした国の動きに歩調を合わせるとともに、少しでも早い効果の発現を目指して、昨年9月に策定した「倉敷みらい創生戦略」に掲げている施策に積極的に取り組む必要があると考えております。また、地方創生の柱のひとつである高梁川流域7市3町による連携中枢都市圏の取組につきましても、2年目となる平成28年度は、連携市町との協議や圏域の関係団体等の御意見を踏まえて、新たに15事業を追加して取り組んでまいりたいと考えております。
 
本年5月14日、15日に、倉敷美観地区を中心に開催されますG7倉敷教育大臣会合につきましては、昨年7月の開催決定以降、倉敷市が誇る教育・歴史・文化を世界に発信する絶好の機会として、会合開催に向けた準備とともに、参加各国の皆様への倉敷らしいおもてなしの取組などを進めております。また、公式サイドイベントとして、3月5日には前文部科学大臣の下村博文衆議院議員を講師としてお招きする、会合開催を記念した教育講演会を、翌6日には馳浩文部科学大臣をお招きし倉敷市の中学生代表とG7各国の子ども達が教育に関する意見交換を行う「G7倉敷こどもサミット」を開催し、本会合への気運を高めてまいりたいと考えております。会合の成功とともに、この開催が倉敷市の教育振興に弾みをつけ、また、参加される各国の方々や市民の皆様の心に残り、さらには、今後の海外からの来訪者拡大にもつながるものとなるように取り組んでまいりたいと考えております。
 
また、政府は、1月26日に、2020年東京オリンピック・パラリンピックに参加する海外の国や選手等と地域住民との交流促進に向けて、事前合宿の誘致や来日する応援団とともに選手を応援するホストタウンとして、31か国に対して、全国58の自治体を選定しました。そのなかで、倉敷市は、1973年にニュージーランドと我が国の間で初の姉妹都市となり、2011年のクライストチャーチ市での大地震の際には、独自の救援隊を派遣するなど、42年間の交流を通じ、お互いの絆を深めていることが評価され、ニュージーランドのホストタウンに採択されました。今後、参加選手や大会関係者をはじめとした方々との交流を通じ、両国の更なる友好を推進してまいりたいと考えております。
 
また、平成27年4月の「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」の施行に伴い、地方自治体の長と教育委員会で構成する「総合教育会議」の設置が規定され、地方自治体の長は、教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱を定めることとされました。昨年5月に第1回総合教育会議を開催し、大綱策定に向け、教育委員の皆様から「地方創生の観点」や「倉敷らしさ」を取り入れるべきとの御意見をいただきました。これらを踏まえ、今月の総合教育会議において、「“From Kurashiki”が誇りとなるひとづくり」として、国際感覚の醸成とともに、「倉敷のひとであること」「倉敷らしさ」を誇りに思い、「倉敷のよさ」を世界に発信できるひとになってほしいという思いを込めた、市独自の教育目標及び施策の指針となる「倉敷市教育大綱」を策定したところです。
 
倉敷市は、現在、地方創生への取組、G7倉敷教育大臣会合の開催、東京オリンピック・パラリンピックのホストタウンへの取組など、個性と魅力をさらに磨き高め、世界に向けた発信力を強化することで今後の成長と発展につなげていく大変重要な時期を迎えていると考えております。
 
さて、私は、2期目の市長就任にあたり、公約に掲げた6つの政策である「子育てするなら倉敷でと言われるまち」「高齢者が健康で、生涯現役で暮らせるまち」「災害に強く、安心して暮らせるまち」「地域経済が元気で、人が集まるまち」「都市機能が高く、環境にやさしいまち」「行財政改革を実行し、市民との協働のまちづくり」の実現に向けて、「現場主義」「対話重視」の姿勢のもと、全力で取り組んでまいりました。ここで、公約に掲げた政策の4年間の主な取組につきまして、御報告させていただきたいと存じます。
 
まず、第1に「子育てするなら倉敷でと言われるまち」の実現につきましては、安心して妊娠・出産・子育てができ、また、倉敷の将来を担う子ども達が、笑顔で健やかに育ち、個性や能力に応じた教育を受けることができる環境整備に努めてまいりました。
 
妊娠・出産・子育てへの支援では、平成25年4月から妊娠希望者等への風しん予防接種費用の一部助成を新たに開始し、また、子ども医療費の公費負担を平成27年4月から入院分について中学校3年生まで拡大しました。待機児童解消を目指して、平成25年度から26年度にかけて保育園5園を新設したほか、認定こども園の開設や小規模保育所、事業所内保育所の拡充により、保育所等の定員を平成23年4月の10,235人から平成27年4月には11,281人へと1,046人増員し、さらに、市立幼稚園の3歳児保育を平成23年度の17園から平成27年度までに26園に拡大しました。また、放課後児童クラブについては、平成23年4月の3,662人から平成27年4月には4,283人へと受入児童数の拡大を図るなど、仕事と育児の両立により安心して子育てできる環境整備に取り組んでまいりました。
 
教育・学習環境充実の面では、生活支援員及び学習支援員を平成23年度の186人から平成27年度には326人へと140人増員するとともに、老松小学校の校舎建替や茶屋町小学校の校舎増築などを実施しました。さらに、中学校3年生の普通教室へのエアコン設置についても、今年夏の稼働に向けて、現在、準備を進めております。
 
倉敷市の平成26年の合計特殊出生率は、国が1.42と前年比0.01下がり、岡山県が前年と同じ1.49となるなか、前年の1.61から1.63に上昇し、また、2期目の就任時となる平成24年の1.55と比較すると0.08上昇しました。合計特殊出生率は、子どもを生み育てやすい環境であるかどうかを示す指標でもあると考えており、これまでの取組にあらためて意を強くしたところであります。
 
第2に「高齢者が健康で、生涯現役で暮らせるまち」の実現につきましては、高齢化が進展するなか、高齢者の方々が生涯現役として地域や社会との関わりを持ちながら生活され、元気に活躍していただけるまちづくりを進めてまいりました。
 
まず、高齢者や障がいのある方が気軽に外出できるように、市役所や図書館、美術館、公民館など28の公共施設について合計149基のトイレ洋式化を実施しました。また、地域の絆の強化に向け、高齢者の豊富な知識と経験を子ども達に伝えていく地域連携による学校支援事業を平成23年度の5校から平成27年度までに37校へと拡大するとともに、介護・福祉の環境整備では、35か所の地域密着型特別養護老人ホームや障がい者支援施設等への整備助成のほか、障がいのある方からの相談や活動の場となる地域活動支援センターを真備地区と倉敷地区に新設しました。さらに、健康で元気に暮らしていただけるように、国の制度創設に3年半先駆けて平成23年度から開始した成人用肺炎球菌ワクチン接種費の助成では、これまでに4万人を超える方々に接種していただいております。また、市民や関係団体等のスポーツ情報をまとめた情報サイトを開設するなど、市民の皆様の健康増進につながる取組も進めてまいりました。
 
第3に「災害に強く、安心して暮らせるまち」の実現につきましては、防災・減災対策のための施設整備や支援体制を強化するとともに、地域医療を充実させ、市民の皆様が安全・安心に暮らせるための取組を進めてまいりました。
 
まず、市長就任以来、小・中学校校舎等の耐震化を積極的に進めてまいりました。1期目の就任時の耐震化率31.9パーセントから、2期目の就任時には69.3パーセントに上昇させ、さらに、この4年間、予算ベースで約227億円を投じ、平成27年度予算の執行によって耐震化率100パーセントが実現します。また、地域防災力向上につながる自主防災組織の組織率は、平成23年度末の38.2パーセントから平成28年1月末時点で57.2パーセントまで向上し、防災士も現在までに163人を養成しました。さらに、介護を必要とする高齢者や障がいのある方などの避難場所となる福祉避難所を現在までに30か所指定するとともに、身近な地域の集会所など119か所を届出避難所として認定しました。また、高齢者等の使用にも配慮した取組を進めるため、平成27年度までに避難所となる全ての小・中学校の屋内運動場に洋式トイレを設置し、さらに、台風や大雨による浸水対策として、各地区の排水機場、排水ポンプ、樋門等の新設や更新・改修などに取り組んでおります。
 
また、地域の中核病院としての医療体制整備に向け、児島市民病院の常勤医師を平成24年度の15人から平成27年度には19人へと増員を図るとともに、休止していた分娩(べん)受入についても平成28年4月から再開する予定としており、また、新病院建替にも着手しております。さらに、生活困窮者の方の相談に幅広く応じるための自立相談支援センターを平成26年10月に開設するとともに、今月には「倉敷市自殺対策基本計画」を策定し、総合的な自殺者対策等への取組の更なる推進を目指すなど、市民の皆様の「生きる支援」に向けて積極的に取り組んでいるところでございます。
 
第4に「地域経済が元気で、人が集まるまち」の実現につきましては、倉敷市は、町並みや伝統文化、自然環境などの優れた地域資源を有し、伝統産業から先端産業まで多彩な産業・技術が集積するまちであり、こうした恵まれた財産を生かし、地域経済の活性化や魅力の発信に向けた取組を積極的に進めてまいりました。
 
まず、新たな個性と魅力創出のため、町並み景観を保全し、美観地区の魅力向上を図る電線類地中化や路面の美装化を実施するとともに、「林源十郎商店」「奈良萬の小路」「くらしき宵待ちガーデン」など、地方創生に向けた先駆的な取組である官民連携による町家・古民家の再生利活用の推進により、新たな魅力と賑わいを創出しました。
 
地場産業の競争力強化の面では、100年以上にわたって伝統を守り、地域の経済発展に貢献されてきた96社を「倉敷の老舗」として顕彰したほか、事業承継や女性起業家を新たに対象とした中小企業支援の拡充、地場産業・特産品の国内外への発信や、地域の魅力向上などに取り組みました。企業誘致では、玉島ハーバーアイランドへの日本エアロフォージ本社工場をはじめ、全国トップクラスの食料コンビナートとなるJA西日本くみあい飼料・J-オイルミルズ・全農サイロの3社の誘致を、さらに、船穂町柳井原地区には、ヤンマー株式会社の生物系研究開発等の拠点となるバイオイノベーションセンター倉敷ラボを誘致しました。また、水島コンビナートの競争力強化に向け、水島地区と玉島地区の輸送効率の向上を目指す臨港道路の整備も平成28年度中の完成に向けて進んでおります。
 
文化・芸術活動の振興については、倉敷市が誇る将棋・囲碁の文化を全国に発信する大山名人杯倉敷藤花戦及び全国小学生「倉敷王将戦」、くらしき吉備真備杯こども棋聖戦に加え、平成27年11月には、第41回「将棋の日in倉敷」を開催しました。また、我が国文学界の発展に貢献した倉敷市出身の詩人、薄田泣菫の書簡集を平成25年度から3巻に分けて刊行するなど、郷土の偉人の業績を後世に伝えるべく取り組んでまいりました。
 
第5に「都市機能が高く、環境にやさしいまち」の実現につきましては、高梁川流域圏域の発展と連携をけん引する中核都市にふさわしい都市機能の充実を図るとともに、資源やエネルギーを有効に活用し、自然と人の暮らしが調和した、環境への負荷が少ない持続可能なまちづくりを目指してまいりました。
 
まず、市民生活の利便性向上と都市基盤整備では、本年度、船穂町・真備町との合併10周年を迎え、一体感の醸成や均衡ある発展に取り組む事業として整備しておりました「倉敷大橋」が1月24日開通したのをはじめ、交通ネットワークの整備を計画的に進めております。また、昨年までに全ての地権者の皆様から同意をいただき、平成28年度中の事業完了を目指す倉敷駅前東土地区画整理事業や、倉敷駅を利用される方、美観地区・駅周辺の商店街や商業施設に来訪される方の利便性向上につながる倉敷駅前東駐車場建設事業、さらに、事業の更なる進捗を図っている倉敷駅周辺第二土地区画整理事業など、高梁川流域圏の交通結節点となる倉敷駅周辺整備を積極的に推進するとともに、JR山陽本線等倉敷駅付近連続立体交差事業につきましても、事業の推進に向け、事業主体である岡山県や関係機関と協議・検討を行っております。
 
環境最先端都市を目指す取組では、地球温暖化対策として再生可能エネルギーの利用を促す太陽光発電システム設置に対する助成が、制度開始以来、平成27年度末で約8,300件を超え、電気自動車購入に対する助成も約350台に達する見込みです。また、花と緑あふれるフラワーガーデンシティの推進では、校園庭の芝生化を順次実施するとともに、平成22年に地域の皆様との協働により策定した「水島リフレッシュ構想」の大きな柱となる水島中央公園の噴水広場やセンター広場、プールなどの再整備を実施し、平成28年度中の事業完了を目指しております。
 
第6に「行財政改革を実行し、市民との協働のまちづくり」につきましては、まず、協働によるまちづくりの推進では、地域で自主的に取り組むコミュニティ活動の支援のほか、まちづくりサロンの開催や協働のまちづくり人材の養成事業に取り組むとともに、市民ふれあいトークを引き続き開催し、市民の皆様と様々な地域課題について意見交換を行ってまいりました。
 
また、平成27年10月には、男女共同参画社会のまちづくりを考える国内最大規模の大会である「日本女性会議2015倉敷」を開催し、全国各地から2,100人を超える方々に御参加いただき、社会のあらゆる分野への女性の進出を積極的に推進することなどを宣言するとともに、倉敷の魅力を全国に発信いたしました。
 
次に、行財政改革の面では、平成23年度から27年度までを計画期間とした「行財政改革プラン2011」の取組として、5年間で約53億円の効果目標額に対し、平成26年度までの4年間で約59.9億円の効果をあげ、そこで生み出した財源を子ども医療費の公費負担の拡大など市民サービスの拡充に活用してまいりました。また、4年間で200億円以上の負債の削減目標に対し、平成27年度末で約367億円の負債削減となる見込みであり、将来世代への負担軽減にも取り組んでまいりました。今年1月には「行財政改革プラン2016」を策定し、平成28年度以降も行財政改革の取組を不断に進めてまいることとしております。
 
以上、公約に掲げた6つの政策への主な取組について述べさせていただきました。一方、この4年間、扶助費など社会保障関係経費の増加に加え、時々の社会経済情勢にも対応するため、平成26年度は長引くデフレ脱却と経済再生に取り組む過去最大規模の当初予算とし、平成27年度は小・中学校校舎等耐震化事業を加速化させるため、平成26年度をさらに上回る規模の当初予算とするなど積極的な予算編成を行ってまいりました。また、こうしたなかでも、次の世代に対する責任をしっかりと果たす必要があると考え、財政調整基金の残高を、この4年間で約30億円増加させ約103億円とするなど、社会状況の変化に伴う新たな財政需要や災害など不測の事態に即応できる財政基盤の強化に努めてまいりました。
 
このように公約への取組を着実に進めることができておりますこと、また、まち・ひと・しごと創生会議での国への積極的な政策提案や自治体連携の先駆的な取組によって、倉敷市がこれまで以上に注目されるようになってきておりますことは、ひとえに市議会の皆様並びに市民の皆様の御理解と御協力があればこそのものであり、厚くお礼を申し上げる次第でございます。